モンゴルで考える「国家の盛衰」と「個人の幸せ」の関係

モンゴルのウランバートルから60キロほど離れた郊外にある遊牧民の人たちが暮らすエリアを訪問しました(写真)。ゲルに子供4人と6人で住んでいるご家族の家にお邪魔して、手づくりのヨーグルトやバター、馬乳酒をご馳走になりました。

モンゴルはチンギス・ハーンの時代にはアジア大陸を制覇し、元寇では日本に攻めてきたこともありますが、今やロシアと中国に挟まれ、かつての繁栄からは随分変わってしまいました。

世界を見渡せば、国家と地域の盛衰が絶え間なく繰り返されてきたことがわかります。

四大文明の頃はエジプトに文明の中心があり、その後はギリシャが繁栄し、ローマ帝国、フィレンツエと覇権は移り、大航海時代になるとスペインやポルトガルが繁栄しました。そして、産業革命でイギリスが世界の経済の中心となりましたが、第2次世界大戦を経てアメリカに覇権が移ります。

第2次世界大戦後の冷戦時代に対立していたソビエトは共産主義政権が崩壊し、ソビエト連邦の国々は独立し、ロシアは単体国家として衰退しました。それに代わって台頭してきたのが中国です。

このような移り変わりはこれからも続くことになるでしょう。アメリカや中国が、100年後も現在の地位を保っているかどうかはわかりません。

人間とは過去の栄光にひたりたくなる存在です。

真偽は不明ですが、エジプト人は酒を飲むと「3000年前は世界の中心は自分たちだった」と過去の栄光を語り合うと聞いたことがあります。私の両親は山梨県の出身ですが、子供の頃に親戚が集まるといつも武田信玄の話をして、武田節という唄を歌っていた記憶があります。

ウランバートルにある空港はチンギス・ハーン空港と名付けられています。モンゴルの人たちも、やはり過去のモンゴルの栄華を懐かしく思い出すことがあるのでしょうか?

でも、ゲルの家族はそんな世界の動きとはまったく無関係に、大自然の中で日々の放牧の生活を幸せに過ごしているように見えました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年7月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。