メキシコ最大の麻薬組織シナロアの創業者の1人、カロ・キンテロ氏が遂に逮捕された。
カロ・キンテロ氏が逮捕されたのは米国とメキシコの大統領が会談を持った2日後であった。9年間逃亡を続けていた人物が、この両者のトップ会談の後すぐに逮捕されたというのは奇妙である。
メキシコは麻薬密売組織で溢れている。それをカルテル(Cartel)と呼んでいる。2007年頃には主要カルテルは4つしかなかった。2012年には7つのカルテルが中心的勢力になり、現在は50以上のカルテルが存在している。それに加えて彼らの下請け的な犯罪組織が全国各地にちらばっている。
嘗てメキシコはコロンビアから麻薬を密輸入して米国市場に密売する仲介組織であった。しかし、今ではメキシコはコロンビア以上に麻薬を生産し米国市場にそれを捌いている。と同時にメキシコのカルテルがコロンビアで麻薬を生産させているケースもある。
メキシコのカルテルの中で最も名が知れているのはシナロアである。その親分であった「麻薬王」と呼ばれていたホアキン・グスマン氏(通称 : エル・チャポ)は2019年7月、ニューヨークの連邦地裁で終身刑の判決が言い渡され、現在服役中である。
彼と同じくシナロアの設立当初から活動していたラファエル・カロ・キンテロ氏は今月17日、2度目の逮捕となった。カロ・キンテロ氏は1985年に米国麻薬取締局(DEA)のカマレナ氏を拷問にかけ、去勢し、生きたまま葬ったという罪で無期懲役40年の刑が言い渡され28年間メキシコの刑務所で服役中であった。この時、カマレナ氏の運転手を務めていたサバラ氏も殺害された。
ところが、2013年に判決に異議申し立てがあり、彼を裁くのは自治州の裁判所であって、連邦裁で判決が下されたのは誤審であると判断されて釈放となった。しかし、その後の再審で殺害されたのは米国政府の役人であったとうことで連邦裁での判決は正当だとされた。しかし、もうその時点ではカロ・キンテロ氏は姿をくらましていた。それが今月、逮捕されるまで続いたのである。(7月15日付「エル・パイス」から引用)。
この逮捕に偶然の一致か或いは背後に何か隠されたものがあるのか、2点疑問がうまれている。一つは、彼が逮捕されたのはバイデン大統領とロペス・オブラドール大統領がワシントンで会談した二日後のことであったということ。もう一つは、彼を逮捕する作戦に加わっていた15人の海兵隊員を乗せたヘリコプターが墜落。14人が死亡するという出来事があったことだ。
彼は逃亡中にカルテル「カボルカ」を創設し、エル・チャポの息子たちと縄張り争いを展開していた。エル・チャポが逮捕されてからはシナロアはエル・チャポの息子たち(通称チャピトス)と番頭のイスマエル・サンバダ氏(通称マーヨ)の間で抗争が繰り返されている。カロ・キンテロ氏はマーヨと強い絆をもっていることから、この抗争に加わって勢力争いを展開していたということである。
現在、シナロアで創業時から逮捕されず隠れて勢力を維持しているのはこのマーヨだけである。