投資の世界でも一見客より常連客が大切にされる

有名観光地の路面店やターミナル駅の駅前にあるような、主に一見客を相手にするお店は、価格も高くサービスにがっかりすることが珍しくありません。

不特定多数を相手にするこの手のお店は、来店客がリピートする可能性は低く一度きりの客なので、それなりのサービスになってしまうのが原因です。一見客は大切にされないことが多いのです。

逆に、常連客を相手にしている高級レストランのようなお店には、ふらっとやってくる客はいません。だから既存客のリピート率を高めることが重要です。

また、クオリティーの低下は、すぐに富裕層コミュニティーで広がってしまいます。「あの店最近味が落ちたね」と言われるのが、最大のダメージなのです。

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このことからわかるように、長期的な関係を構築した方が、より良いサービスを受けられる可能性が高くなるということです。

これは飲食店に限りません。

資産運用においても、一度しか取引しない顧客と、リピートして何度も付き合う可能性のある顧客のどちらを大事にするかは明らかです。

もちろん、どのような顧客に対しても分け隔てなく対応する誠実な人たちも存在します。しかし、一見客と常連客では、重要度が異なることは事実です。

私が主催しているインナーサークル資産設計実践会は、8年前から続いており、現在第15期を開講中ですが、様々な資産運用の専門家とのお付き合いが継続しています。

コミュニティーの参加メンバーは入れ替わっても、グループ自体は今までのこれからもずっと続きます。だから、今後もリピートして何度もお付き合いする可能性が高くなる長期の取引となります。

その結果、個人が一度きりの取引をするのとは、先方の対応が明らかに変わってきます。取引後のアフターフォローも一見客とは異なり、特別は対応をしてもらえることも多いのです。

このようなメリットをコミュニティーメンバーに還元し、個人投資家同士の共存共栄を実現する。これが資産設計実践会の大きなメリットです。

長い付き合いが続くと思えば思うほど、良好な関係を維持しようとするインセンティブが働きます。そのような行動パターンを上手に活用することで、物事を思い通りに進められやすくなっていく。これは、どの世界でも同じです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年8月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。