宗教と政治:組織票に頼るという発想そのものを変える必要性

政治家が選挙戦などに於いて旧統一教会との絡みがあったことが報じられています。自民は閣僚クラスだけでもその関係が次々報じられ、立民、国民、更には維新は13名も何らかのかかわりがあったと発表し、個別の名前も近く公表するとしています。

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政治活動において宗教団体と関係を持ってはいけないということはありません。憲法20条にある「政教分離」とは政治と宗教の分離という意味ではなく、国の判断に宗教の影響を受けないという意味です。そうでなくては公明党が存在できなくなります。

よって続々と名前が挙がるであろう政治家個人と旧統一教会との関係がどうであろうが、議員が信者であっても別にそれ以上のことはありません。しかし、政治家は宗教団体になぜ、簡単に飛びつくのでしょうか?

理由は組織票が欲しい、これに尽きると思います。自民党はかつて地方の農家の票を押さえていました。JAを通じて自民党を推すわけです。旧社会党は企業の労働組合とその大組織、連合とタッグマッチを組み、サラリーマン票を取り込む努力をしました。共産党は「赤旗」を、公明党は「聖教新聞」を発行し、読者という準組織作りと思想に対する賛同の輪を広げていきました。結局どれも「囲い込み運動」です。

報道では旧統一教会は反共産主義団体でそのために岸信介氏が支持したのがきっかけともされます。確かにその当時は共産主義の拡大阻止は西側諸国にとって絶対防衛線であり、旧統一教会との共闘戦線はそれなりの意味があったのかもしれません。しかし、私も覚えていますが、90年代以降の旧統一教会は北朝鮮とのパイプが太いとされたのです。つまり同団体は反共から祖国統一への方向を変えているわけです。また、ご承知の通り、日本人からは金を巻き上げろという仕組みも存在していました。とすれば近年においては同団体と政治家の関係は政治思想ではなく、単なる組織票期待や選挙のお手伝い要員でしょう。それゆえ自民から立民、維新、国民など幅広い政党の議員の名前が取りざたされるわけで、政党の主義主張は関係ないように感じます。

ところで旧統一教会の日本での信者数は公称56万人とされます。宗教団体における信者数ほどあてにならない数字はなく、新聞の発行部数も真っ青なぐらいの膨らませ方であります。事実、同教会の実際の信者数も10万人程度ともされます。膨らませるためには一度でもお布施をすれば敬虔なる信者の扱いになるのかもしれません。明治神宮にお賽銭を入れた人は全員、神道というレベルの話です。

それを考えると日本でもっと大きい宗教団体が存在します。大川隆法氏の「幸福の科学」です。ここの信者は1000-1200万人とされます。どれだけ膨らませればこれほど大げさな数字になるのでしょうか?これでは創価学会の公称827万人(2020年)をはるかに凌駕してしまいます。ならば幸福の科学の政治団体である「幸福実現党」が公明党に並ぶほど政界に頭角を現してきてもいいはずです。しかし、実際には党が擁立する地方議員は日本全国で50名弱いるものの、国政は遠い道のりで今回の参議院選でも12名が立候補するも当選者はいませんでした。

大川氏の本も出版されるたびに書籍売り上げランキング1位を記録するのは壷や印鑑入れの代わりに書籍を購入してもらっているのでしょうか?大川氏にとっては印税も入るしウハウハでしょう。この幸福の科学も比較的保守的な考えとされます。かつてバンクーバーで慰安婦像建立問題が持ち上がった際、その最前線にいた私にあるところから「幸福の科学」のバンクーバー事務所があるからそこに支援を求めたらどうか、と提案がありました。事務所の場所まで調べて何度かノックしてみようかと思ったのですが、踏みとどまりました。宗教団体に支援を求めた場合の見返りが出来ないことに躊躇したからです。

政治家は集票マシーンと化す組織をいかに抱き込むかに躍起になります。しかし、それなりに協力してもらった以上、何かのお返しが必要なのが政治の世界です。では宗教家から見る政治家への期待と何でしょうか?宗教法人の支援、ネームバリューの宣伝効果は当然あるでしょう。講演などを通じて「へぇ、偉い先生が来て下さるのね」という信者の純粋な喜びとの引き換えもあります。

結局、ギブアントテイクの関係なのです。わかりやすい例えで言うなら事業家が資金調達をするように政治家は集票をするのです。いざ、事業が立ち上がれば赤字で配当が出来なくても資金を提供してくれた人には「その節にはお世話になったにも関わらず…」で済み、それなら「祝い電報の一つ二つぐらいならいつでも」ついでに「講演も致しますよ」という具合なのだろうと察しています。

政治には組織票による集票という発想そのものを変える必要があるのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年8月3日の記事より転載させていただきました。