裕福な大国が自国の防衛に手を抜き、そのために米国が死ぬことを期待されていると見なされていると、最近の米国民は拒否するでしょう。
日米同盟は強固で不変だと日米両国の関係者が繰り返し述べてきたことに、元米海兵隊大佐のニューシャム氏は疑義を呈する。
本書「中国の脅威に向けた新日米同盟」は元海兵隊政治顧問のエルドリッヂ氏が、中国の脅威と日米関係をテーマに監修。そしてニューシャム氏に加え、日本に縁のある元海兵隊中佐ガーシャネック氏、元米海軍大佐ファネル氏、そして米ワシントン・タイムズ特派員ガーツ氏がそれぞれの専門分野についての論考を寄せる。
本書では、日本の核保有についても意見が交わされる。例えばファネル氏は、対中防衛について通常兵器で中国を抑えきれなくなった今、日本は核保有すべきだと言う。そうでなければ、日本は核保有国のロシアに侵略されたウクライナと同じ道を辿る、と言うのである。
ニューシャム氏も日本の核保有について理解を示すものの、こう釘を指すことも忘れない。
動機がアメリカの『支配』に対する憤りであり、その理由で核兵器を保有するのであれば、私は日米同盟全体を終わらせることを提案します。私は、『恩知らずで恨み深い』日本人のために、アメリカ人が死ぬことに何の興味をありません。
日本では岸前防衛大臣や島田前次官の交代と、来年度予算の概算要求が関連付けて語られる。約5.5兆円が計上されるとの報道に、予算額が十分ではないとの批判は絶えない。ガーシャネック氏は「今絶対に必要なのは、日本の国家レベルでの確固とした政治的意志」と主張する。
その意味するところを予算要求と関連付けて考えれば、日本国の政治的意志と危機感を明確に示すための手段として、これまでにない大胆な予算額をぶち上げるということではないか。それがGDP2%を追求する意味であり、必要なものを積み上げるべきだと主張する論者に決定的に欠けている視点である。
日本の政策があるとすれば、『無策』だと思う。
かつて佐藤まさひさ議員と対談したエルドリッヂ氏は、日本の尖閣防衛についてこう辛辣に批判した。
本書でも述べているように、日本自身に自国を守る意思がなければ国際社会は血を流してまで助けてはくれない。同盟関係は重要だが、本質的な解決策は日本国自身が主体的に国を守る意思と能力を示すことだ。ウクライナ戦争の最大の教訓を、日本は学ばなければならない。