スペインからドイツに天然ガスを供給するパイプライン

白石 和幸

イベリア半島と欧州を結ぶガスパイプラインが実現するかもしれない
ESPAÑA, MIDCAT A ALEMANIA

ドイツはスペインとポルトガルから天然ガスを輸入したい意向

ロシアからの天然ガスの供給が期待できなくなったドイツはスペインとポルトガルからの供給に仰ぐ方針を明らかにした。

今年3月までのドイツ政府ではスペインとポルトガルからの天然ガスの供給は優先事項とはなっていなかった。ロシアからの供給に期待していたからだ。ところが、今秋にはロシアはドイツへの天然ガスの供給をシャットアウトする見込みが濃厚。そこでドイツは急遽スペインとポルトガルからの供給に方向転換する方針を明らかにした。

というのも、スペインにはMidcatと呼ばれているガスパイプラインがフランスの手前まで完成しているからだ。元々、スペインは中央ヨーロッパへの天然ガス供給のプランをもっていた。ところが、それにフランスが邪魔していた。

Midcatガスパイプラインはアルジェリアから地中海海底パイプラインでスペインのアルメリアまで輸送し、そこからカルタヘナ、モンテサ、パテルナ、ティビサ、バルセロナ、オスタルリックまで繋ぐもので、既に完成している。

ところが、フランスは自国の領土を通過することに反対している。フランスの天然ガスの需要は低く、一般の消費レベルで全体の16%で、発電においても6%の需要しか占めていない。このようなフランスの国内事情からガスパイプラインを設置する必要性がない。しかも、その建設費用は高く、逆にそれが危険性を及ぼすことになるというのが理由だ。

ところが、ウクライナ紛争における情勢からドイツがスペインからの供給を必要としているということで、フランスはパイプラインの建設を再考せざるをえなくなっている。

スペインのLNGの貯蔵能力はEUでトップ

スペインには6か所の液化天然ガスLNGのターミナルがある。LNGの輸入相手国は米国、ナイジェリア、カタール、オーマンと言った国だ。一方、LNGの輸入はアルジェリアからで、昨年7月の段階で輸入全体の48%を占めていた。ところが、今年7月の時点だと25%まで減少している(8月10日付スペインデジタル紙「ザ・オブジェクティブ」から引用)。

その理由はスペインが西サハラの問題で外交方針をアルジェリアのライバルであるモロッコに味方する姿勢に方向転換したからだ。それが影響して、アルジェリアはスペインへの輸出を減らしている。

因みに、ポルトガルはLNGのターミナルは1か所ある。

スペインが中央ヨーロッパからの需要に応えることができるのは貯蔵能力がEUの中では35%と高い率をもっているからだ。

このガスパイプラインをドイツまで繋ぐには8か月から9か月で完成できるとスペイン政府は発表している。今年3月のまだ必要性が問われていなかった時点では3年かかると表明されていた。もうひとつ明確化が必要なのは、この建設費用を誰が負担するのかという問題である。その費用は4億5000万ユーロ(540億円)と見込まれている。