拙著「すぐに結果を出せるすごい集中力」を読み返していて、読者に誤解を招く部分があったので、以下のように補充したい。
まず、(持久を含む)集中は、できるだけ中断しない方がいい。
平易な例だと、受験生が勉強している最中に電話が鳴って応対するのが集中を妨げることは明らかだ。
集中は、重い石を転がしているような状態だ。重い石は、最初に動かす時に一番力が必要だが、一度転がり始めれば後は比較的弱い力でも転がってくれる。
集中が途切れるのは、転がっている重い石を止めるようなものだ。再び集中状態に入るためには、強い力で止まっている石を動かさなければならない。
だから、一定時間集中する場合は、できる限り中断されない環境で行うことが望ましい。しかし、一般的なタスクの場合は中断が有効な場合がある。
「影響力の武器」の著者であるロバートチャルディーニの書籍(どれだったか忘れたが)に、「執筆を飛躍的にはかどらせるコツは意図的に中途半端なところで中断することだ」という趣旨のことが書かれていた。
明確な理由は書かれていなかったと記憶しているが、おそらく次のような理由だろう。中途半端なところで中断すると再開するのが容易だ。
例えば、第1章を書き終えて翌日第2章を書くとなると、翌日は新しいスタートになり重い石を動かさなければならなくなる。
また、中途半端で中断しておくと、潜在意識が次に書くことを考えてくれる。無意識的に次の文章を作成しているのだ。
私自身、民事事件の相手方の書面を読んだ後、すぐに反論を書くのではなく一定期間「寝かせる」ことを頻繁にやっていた。入浴中や散歩中に、「あ、この手があった!」と思いつくことがよくあるからだ。
「あれこれ考えて一度棚上げしたら、ふとした拍子にいいアイディアが浮かんだ」という経験をした人はたくさんいると思う。
高校時代、難解な数学の問題が解けないまま就寝すると、翌朝解答が思い浮かぶということがよくあった。数学や算数の大問を一通り数分間ずつ考えて、解けそうな問題に着手するよう塾や予備校の先生が指導しているのも同じだ。
一つの問題に取り組んでいる間に、潜在能力が働いて他の問題にも取り組んでくれるからだ。
以上のように、集中の中断は好ましくないがタスク全体の中断は好ましい結果につながることが多い。
あなたがビジネスパーソンで企画書を作成しているのであれば、一度中途半歩なところで止めてみよう。きっと再開がとても楽になるはずだ。
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編集部より:この記事は弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2022年9月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。