2000万円問題ではなく「老後5000万円問題」

将来に備え、介護付きホームの見学を行っています。といっても、入居するのは私ではありません(そこまで心配性ではありません)。

比較検討のために渋谷区にある施設を複数見学していますが、その金額の高さに驚きました。

写真はとある介護付ホームの料金表ですが、ワンルームマンションと同じくらいの広さの20平米程度の部屋にトイレと洗面が付いたお部屋で、入居時一括支払いだと2000万円から3000万円。更に毎月の管理費や食費などの費用が30万円程度かかります。

入居時の支払いをゼロにすると、毎月70万円前後の莫大な費用がかかります。

数年前に「老後2000万円問題」が話題になりました。これは、年金だけでは老後の生活費が2000万円不足するという厚生労働省のレポートです。その計算根拠とされていたのは、毎月の年金不足額が約5.5万円で、その30年分というものです。

現実を見ると、もしこのような施設を利用しようとすれば2000万円では到底足りないことがわかります。

安心できる老後には、5000万円くらいは用意しておきたいところです。

もちろんもっと安価に利用できる施設もありますし、自宅で最期まで生活するという選択肢もあるでしょう。生活レベルによっても異なります。老後のライフスタイルには多様な選択肢が存在します。

しかし、東京の生活に慣れていて、地元を離れたいと思わない人が、自宅での自立した生活が精神的・肉体的に困難になったら、都心のこのような施設を利用するしかありません。

心身共に「健康」で、毎日を楽しく過ごせる家族や友達のような「仲間」と共に、老後に必須なものはやはり「お金」です。

私は健康や人間関係のプロではありませんが、お金に関しては自分自身の経験をシェアすることができます。若い世代の資産形成は多くのお金のプロが手法を語っていますが、シニアのお金との付き合い方については、日本では満足できる情報提供がされているとは思えません。

主宰している資産設計実践会というコミュニティは、、共通の悩みを持つ仲間が集まって解決方法を実践しています。このような老後のお金の問題解決ニーズは、これから益々高まっていくと予想しています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年9月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。