日本人の「キャピタルフライト」はいつ始まるのか?

円安による日常生活への影響が徐々に日本人全体に広がってきています。コロナ禍で自粛されていた海外旅行に日本人が出かけるようになると、円安の痛みがダイレクトに実感できるようになります。

昨日はお昼の時間に30分間の「緊急ライブ」をZOOMで開催しました。直前の告知にも関わらず250名のお申込みがあり、円安とインフレに対する関心の高さを実感しました。

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そして昨晩のアメリカの消費者物価指数(CPI)の発表を受けて、再びドル高円安が進んでおり、いよいよ1ドル=150円も見えてきました。

図表は日銀が定期的に発表している日米欧の個人金融資産の比率の比較です。日本の個人金融資産は2,000兆円を超え、その54%は現金・預金に偏っています。現金・預金に滞留している金額は1,000兆円を超えているということです。

そして個人金融資産全体の9割以上は日本円に偏ってると推定されます。円安とインフレに対して、まったく対応できない円の現預金が圧倒的というポジションです。この状況が変わることはあるのでしょうか?

日本人の行動特性には、他人に流されやすいところがあります。「みんながやるから自分もやる」という横並び意識が強いのです。

円安がさらに進み、円を外貨に交換する動きが広がり始めると、どこかで臨界点に到達し、一気に日本円から外貨へのシフトが始まる。

これが「キャピタルフライト」です。

20年以上前によく聞かれた言葉ですが、最近では死語になっていました。

しかし、今年に入ってからの金融マーケットの大きな変化を見ていると、日本人のお金との付き合い方がこれから大きく変わっていく予感がしています。

世の中の変化は連続的なものではなく、ときには非連続に起こるものです。多くの人は過去の延長に未来があると思い込んでいますが、非連続な変化によってマーケット環境が一変する可能性があることを忘れてはいけません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年9月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。