黒坂岳央です。
最初にお伝えしておく。筆者はプレイステーション本体の大ファンである。初代PS1からずっと買い続けてきたし、新しいコンソールが出るたびに胸高鳴らせる体験をした。だが、世間的な反応や出荷台数、ソフトの販売本数を見る限り「PS5は失敗した」という声が世間的に優勢になっている状況に失望の念を禁じ得ない。
勘違いしないでほしい。プレイステーションに限らず、ソニーとソニーの商品は大好きでよく買うし、ぜひうまくいってほしい。だが様々な状況を鑑みて、「PS5本体はここからの逆転が難しいかもしれない」と最近思うようになった。
その理由を考察し、取り上げてみたい。
誤った値付け
PS5は発売当初、あまりにも安すぎると大きな話題になった。中には「性能を考慮するとこれは安すぎる。分解して部品を売った方がいいのでは?」という声も見られるほどだった。安い方のデジタルエディションはなんと税別3万円台!もはや「異常」といえるほど安い。
だが安すぎた。そのため、欲しい人が殺到した。最近は国内転売ヤーだけでなく、国外転売ヤーまでプレーヤーとして参加するようになってしまい、転売ヤー間でぐるぐる回る状況も起きているようである。そして直近の値上げ発表がトドメとなった。いくらコロナ禍で寸断されたサプライチェーンに端を発するインフレの影響を受けたとはいえ、欲しければ転売ヤーから買うしかないこの状況での「値上げ」はユーザーにネガティブに映ってしまったようだ。
これは個人的な感想で、稚拙な後出し意見でしかないが、最初からもっと高い価格で出しておけばよかったのではと思う。コアなファンはそれでも喜んで買うし、市場の適正価格で出しておけば転売もされにくかったはずだ。生産能力アップと、半導体不足解消とともに少しずつ値下げをしていく。この方がユーザーも納得感があったのではないだろうか。
Steam(PC)の存在
一部のソフトウェアメーカー側は、ソフトの共有先をプレイステーションからSteamに切り替えているように思える。その代表がカプコンである。バイオハザードシリーズ、モンハンシリーズ、ストリートファイターシリーズなど超人気タイトルは、PS5だけでなくSteamでも販売している。PCで遊ぶと言っても、ちゃんとプレイステーションのコントローラーも使える。そしてカプコンは「Steam向けに出したことで売上が激増した」と嬉しい声をあげている。
筆者自身、最近のゲームはほとんどSteamで買うようになった。PS5版で買わない理由は、本体が発売終了やサポートが切れて遊べなくなることを懸念してのことだ。また、ファイナルファンタジータイトルを有するスクエニもSteamに積極的な姿勢を見せている。長らくプレイステーションへタイトル供給をしてきたソフトウェアメーカーも、徐々にSteamへその身を向けるようになっている。
またPS5はゲームしかできないが、Steamを遊ぶことを前提としたゲーミングPCならパソコンとしても活用できる。高性能パソコンは動画編集などにも転用が可能だ。汎用性が高いので、万が一ゲームに飽きても他に活用ができる。この状況がSteamという選択肢をさらに魅力的にした。
ソフトウェアの開発コスト
ゲームソフトの開発コストは、ハードウェアの性能アップとともに肥大化している。PS5クラスでは3億ドル規模になると主張する専門家もいる。また、コスト高というだけでなく開発期間は5年もかかり、遊ぶ時間は80時間程度という状況になっている。
ニンテンドースイッチでは、グラフィックはそこまででなくてもとりあえずゲームとしての面白さがあればユーザーは満足する。その一方でPS5というプラットフォームでは、その本体性能を考慮し、自分を含め多くのユーザーが超美麗で没入感の高いグラフィックを期待してしまう。この期待値を上回る開発コストや期間がメーカー側に重くのしかかってしまうのだ。
これはPS5が悪いわけではないが、ユーザーの期待値が高いためにおいそれと数多くのタイトルを出せない事情もあるのではないかと思う。実際、PS5の発表から現在までに出たタイトルはそれほど多いとは言えない。PS5本体の普及率の事情もあるだろうが、同時に開発コストが厳しいという理由もあるのではないだろうか。
◇
発売からもうすぐ2年、未だに店頭では抽選販売がほとんどで入手は簡単ではない状況が続いている。Steamとニンテンドースイッチに挟まれたソニーが、ここから起死回生の一手を得るにはどうしたらよいだろうか?今のところ、筆者に妙案を出すことは難しい。PS4本体は大ヒットしただけに悔しい。熱いファンの一人として、なんとかここから売れてほしいと、個人的な願いを込めて筆を置きたい。
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