2030年に必要なスキル、オワコンになるスキル

黒坂岳央です。

オックスフォード大学は「2030年に必要とされるスキル、不要なスキル」についてThe Future of Skills: Employment in 2030というタイトルの論文を発表した。論文の内容は英語だが、下記ツイート投稿で日本語訳が付けられているので紹介したい。

未来は誰にもわからない。数十年前に一部の人は、2022年ではとっくにロボットが町を闊歩して人々の生活を支え、車が空を飛んでいると考えていた時期もあった。だが、今の時点ではそうなってはいない。

今回はあくまでコンピューターサイエンスの門外漢である筆者の視点で、この結果が正しいという前提に立って感じたことを論考したい。

Korakrich Suntornnites/iStock

真面目で正確な作業者は不要になる

必要とされないスキルの筆頭に、「操作の正確さ」「手作業の素早さ」が取り上げられている。そう言われてすぐさま連想するのは、PCのキーパンチャーや工場の流れ作業だ。もちろん、機械化できない複雑な作業や、機械より低コストで賄える作業は今でも人間がこなしている。だが、ロボットやAIが更に進化すれば、こうした人間の仕事を代替するのは、もはや時間の問題である。

身近な例で言えば、回転寿司のスシローだ。スシローは省人力化を果たしており、寿司ロボットの導入や食べたお皿のプレートをAIが自動計算するなどに成功している。また、昨今大きく騒がれていることに、フェルメールによる絵画「牛乳を注ぐ女」の続きをAIに描かせるなど、もはやクリエイティブな分野にすらAIの自動化が進んでいる。

海外と比較して、個人的に日本人は真面目で正確な作業が得意な国民性だという認識がある。論文の予測が正しければ、このような日本人の特性を活かすことができない未来が到来するのだろうか?そうなると、学校教育や価値観、仕事のやり方などで大きなパラダイムシフトが起きる可能性は否定できない。

残るのは複雑な人間心理

その逆に必要とされるスキルの多くはどうだろうか?見てみると、人を相手にする心理的なものが並んでいるように思える。同じ繰り返しのパターンはAIが代替できても、属人性の高い要素はできないということだろう。どれだけコンピューターが卓越した技術を持っているとしても、やはり人の心を動かせるのは人である。

たとえば勉強は、機械から教わるより人間から教わりたいという人はずっと残りそうに思える。一部の独学力に優れた人は、そうでないかもしれない。だが、やはり勉強はロジックだけでなく教師の人間性や共感力などにも強く影響を受ける。筆者も同じ内容を教わるのでも、人的魅力のある教師から教わった方が深く、早く学べた経験があることからわかるつもりだ。

これは人間の本質的特性に近いため、コンピューターが入り込みにくい分野と言えるかもしれない。逆に言えば講義中にテキストを棒読みしているだけの、パッションのない教師は不要になる可能性は高い。

2030年に生き残るなら、人の心を理解しビジネスや教育の現場でオペレーションができる人物かもしれない。

AI前提の社会へ

すでにAIはかなりの程度、社会に入り込んでいると感じる。

YouTube動画を見る時、知らず知らずの内にAIが選出した動画を次々と見て可処分時間を使うようにさせられているし、リアルタイムに翻訳字幕で海外の作品を楽しめるようになってきている。ITツールの多くはAIで処理が自動化されることで、かなりの程度技術や作業をスキップできるようになった。

かつて、人物画像の切り抜きはPhotoshopを使ってこまめに切り抜くしかなかったが、iOS16のアップデートによりiPhoneでは指先一つで簡単に切り抜けるようになった(切り抜き精度はまだ甘いが…)。動画編集の字幕入れ作業も、AIの力でかなりの程度正確に自動で入る。DeepLのPro版を導入すると、海外サイトをかなり自然な日本語で閲覧できてしまう。

こうなると、今後身につけるべきスキル、不要なスキルの棲み分けはドンドン進む。不要なスキルを時間をかけて学ぶことに意味はない。そういう意味で、今後のスキル選定眼が求められる時が来ているだろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。