北朝鮮はなぜミサイルを飛ばすのか?:周到な準備が進んでいる可能性

今朝、北朝鮮がミサイル2発を発射したとされ、今年に入り24回目となりました。特に9月下旬になってから5回となっており、先日は日本の上空を通り超える弾道ミサイルを発射しています。テレビニュースでは岸田首相の「遺憾」、「断固たる申し入れ」が繰り返されます。一方、市民の反応は「またか?」でありいわゆる危機感は回を重ねることに薄くなっているのが実情です。

金正恩氏 朝鮮民主主義人民共和国HPより

もう一つは「怖いけれどアラートが鳴っても何をしてよいかわからない」という声が圧倒している点です。例えば地震の後に津波が来るというのは日本人は直接間接問わず、体得しているのですが、ミサイルが飛んでくるのは未経験値。戦時中は爆撃機はありましたがミサイルの経験は世界でもウクライナや中東などごく一部の地域を除き、どんなものか全く想像がつきません。それにスピード感が違います。津波なら逃げろと車で高台に向かうことも可能ですが、ミサイルはそもそもどこに落ちるかわからない、シェルターがあるわけでもない中で完全に無防備であるといってよいでしょう。

よって政府としては北朝鮮がこれだけ頻繁にミサイル発射し、今後核実験の可能性も指摘される中、外交的な対応と同時に国民をどう守るのか、その算段と対策を提供しなければ片手落ちもよいところです。

さて、北朝鮮がここにきて急にミサイルを発し始めたことに対して専門家は日米韓軍事演習や韓国にハリス副大統領が訪問したことなどを掲げています。確かにそれらはミサイルを発射する直接的理由にはなると思いますが、根本的になぜ、金正恩氏がここまで世界を相手に戦う姿勢を見せているのか分析が十分ではないような気がします。

私は金正恩氏がウクライナ問題に関して並々ならぬ関心を見せ、プーチン大統領と自分を重ね合わせて見ているのではないかと仮定してみました。金氏は今年2月の侵攻開始以降、思わぬ長期戦となり、ロシア側に疲弊感が漂っていること、プーチン氏がそれでも強気を崩さない理由は何なのかを相当分析しているとみています。それも戦略的分析と共に心理的分析にも重点を置いているとみています。

その場合、プーチン氏が現時点でまだ強気でいられる最大の拠り所は核のボタンである、ということを痛切に理解したはずです。

西側諸国は北朝鮮の度重なるミサイル発射や核実験に対して強い警告を出していますが、地球儀ベースで見れば北朝鮮はかつての異端児ではなく、大きな体制の一角をなすとの考えに変換しています。つまり、昔は極東の経済的にも貧しい金家の支配する小国という見方だったのに権威主義が世界で大手を振るようになり、南米のように左派が政権を取る国が主体となり始めた今、G7を中心とする先進国はごく一部の金持ち国家、上から目線、エリート主義、との位置づけに後退している事実が背景に潜んでいます。

その中で北朝鮮が今、その力を誇示するのは「北朝鮮に逆らえば勝敗以上に手を出した国が傷つく」という強烈なメッセージを放つことで心理的パリティ(均衡)の状態を作ることを目的としていることは明白です。

もう一つ、うがった見方ですが、ロシアに於いて今次の侵攻の結果、国内が荒れ、政局が不安定になり、更に万が一にも国を割るような事態が起きた場合にロシアとの協力体制を結ぶことで漁夫の利を考えていないとは言えない気がします。特に北朝鮮国民を食べさせるために大量の労働力をシベリアなどに送り込み、その稼ぎを本国に送らせ、国家体制の立て直しを図るという計算はおおいにあり得るとみています。

我々は毎度のミサイル発射、EEZの外側だったという繰り返しの報道にマンネリ化していますが、北朝鮮は着々とプランが進行しています。ご承知の通り、韓民族は粘り強く、底力があります。我々は食糧すらまともに供給されない格下の国家と判断しがちですが、近代兵器の発達と同国のユニークさを考えればあまり軽く見ない方がよいと考えています。周到な準備が進んでいる、そんな気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年10月6日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。