北朝鮮はどこまで本気なのだろうか:馬耳東風のバイデン大統領と日本

北朝鮮の蛮行が目に余る状態になってきました。10月6日付のブログで「北朝鮮は何故ミサイルを飛ばすのか?」というタイトルで私見を述べました。かいつまんで言えば目先の米韓合同演習を含む北朝鮮への刺激的な外交案件はミサイル発射のトリガー(引き金)であるものの本質的に「権威主義」の土壌が世界で広まる中、北朝鮮が世界の孤児ではなくなったことが主因ではないか、と申し上げました。

祖国解放戦争参戦烈士の墓地を訪れた金正恩総書記 北朝鮮公式HPより

今般のロシア問題ではイランがドローンを大量にロシアに供給しているとされ、北朝鮮についてもNHKが「アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は2日、『北朝鮮が大量の砲弾を中東や北アフリカの国々に送ると見せかけて、ロシアにひそかに供与しているという情報がある。ロシアが実際に受け取ったかどうかについては今も監視を続けている』」と報じるなどその連携の可能性が示唆されています。

2010年代はグローバル社会全盛期とパクス アメリカーナの最終局面でありました。パクス アメリカーナとはアメリカ一極体制とも称し、ソ連が崩壊した1991年以降、冷戦が終わり、アメリカの指導力のもと、世界がより一体化したとともにどちらかといえば、政治より経済が重視された20年強でありました。

この時はまだ中国は発展途上でしたが、2001年のWTO加盟、2008年の北京五輪、2010年の上海万博にかけて極めて大きな成長を遂げました。日本で言うなら池田内閣が打ち出した1960年の所得倍増論の10年と同じような経済効果だとみてよいでしょう。

では日本はその後どうなったかといえば石油ショックで苦しんだ後、バブル経済という絶頂期を迎えます。これが中国に当てはまるなら現在がゼロコロナ政策や国内経済問題で一番苦しい時だけど、これを抜けるともう一段高みに上るというシナリオがないとは言えません。それはお前の作文だろう、と言われればその通りですが、それを明白に否定できるものでもないのです。

つまり、パクスアメリカーナが終焉し、米中二大大国の枠組みとされる中で地球全体で体制依存が起きつつあるのでしょう。そして需要なことはアメリカの力が思ったほど誇示できていないことが今の地球全体の不和の一因であることはほぼ間違いないと考えています。言い換えれば中国批判者は「中国なんて…」と言いますが、アメリカもポスト パクス アメリカーナという点では弱体化しているのです。もっと言えば二大大国の体制というのがそもそも間違っているのかもしれません。体制という名こそあれど、実態はバラバラの社会になっているのです。

アメリカがいつから変わったかといえばオバマ体制の時と断言します。彼は人が良すぎたのです。性善説過ぎたとも言えます。トランプ氏はその対極だったかといえば全然そんなことはなく、彼は戦争が嫌いだし、むしろ思想的にオバマ体制を引き継いだ点もあります。そしてバイデン氏は言うまでもありません。

特に気になるのはバイデン大統領の存在感がこのところ、薄くなっている点です。いくら民主党のエースで将来の大統領候補ともされるブリンケン国務長官が頑張っても一人では無理があるのです。機能しない大統領と副大統領のアメリカは隙だらけとも言えます。これは北朝鮮にとってはやりやすいとも言えます。

一方、私からすれば北朝鮮は無駄な経費を使っているとも思っています。それはバイデン大統領が馬耳東風だからです。一応は薄く反応するのですが、それまでです。実は日本も意図的に「薄く」反応しているのではないか、と勘繰り始めました。「遺憾」と10回述べても遺憾以上のものは何もないのです。つまりけんかしているつもりの相手から「君がそんな蛮行をするとは実に残念なことだ」と言われるだけでは戦意は上がってこないですよね。「ふざけんな、お前がその気ならこちらにも手段がある!」と敵意をむき出しにすれば「かかってこい!」となります。そうさせないためにわざとスルーしているのではないか、という気すらするのです。

北朝鮮のミサイル発射実験はいつか間違えを起こすかもしれません。その時の国際社会と世論の反応は極めて鋭いものとなるでしょうが、それに金正恩氏が対抗できるかリスクマネージメントがなされていない気がします。北朝鮮を東アジアのパルチザンにする気でしょうか?北朝鮮が核を持っているとしてもそれが北朝鮮の体制の維持とは別の話だという点に彼は気が付いていないようにも感じられます。感情が支配する、そして今なら自分が動きやすい周辺環境がある、と考えたわけです。

ところが西側社会も中国も忙しくてしょうがないのです。「僕もかまって!」と言われても「今、忙しんだ、黙っていろ」と言わんばかりのスルーの状態だともいえるでしょう。

北朝鮮はどこまで本気なのだろうか、というお題に対し、私の意見は「今のやり方では効果がないことに気が付き、どこかで戦略を変えるだろう」と考えています。つまり火遊びはより危険度を増すなかで日米韓がどういう態度を示すか次第だと思います。日米韓の心情としては「お前なんかを相手にしている場合じゃない」はずで、ことを荒立たせないようにするのが得策ではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月4日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。