中間選挙で何が変わるのか:ねじれによって安定感が増すアメリカ?

投票が始まったアメリカ中間選挙ですが、株式市場は期待半分、様子見半分といった感じでしょうか?想定通り、先週のFOMC終了後はあく抜け感とFRBがキーワードから外れたことで中間選挙を囃した株価上昇となっています。この勢いは果たして続くのか、アメリカの内政、外交はどう変わるのか、予想は非常に難しいのですが、皆さんと一緒に考えていきましょう。

アメリカ合衆国議会議事堂 Sagittarius Pro/iStock

まず、選挙情勢ですが、一般的な分析は下院は共和党優勢、上院はコイントス状態で変わっていません。上院も一部では共和党が優位ではないかとする見方が出ていますが、既に選挙当日なのでここから先は結果を見守るしかないでしょう。一点重要なのは接戦であればあるほど選挙結果はすぐに出ないことです。特に激戦が見込まれるジョージア州とペンシルベニア州は本稿を書いているNY時間午後でも1%ポイント以内の差となっています。ただ、上院の他の接戦州では共和党候補が民主党候補を突き放す展開も見られるのが最新の情勢です。

選挙後の動きとしてはバイデン大統領が来週、インドネシアのG20サミットに出席します。既に習近平氏の出席が確定しているため、米中首脳会談が実現する可能性があります。プーチン氏は当初、出席するとしていましたが、ペスコフ報道官が決まった事実はないとし、代理を立てることを検討しているとの情報もあります。あくまでも勘ですが、プーチン氏は出席しない気がします。

バイデン氏が習氏と会談しても双方の主張が全く折り合わず、平行線を辿る形だろうと予想しています。つまりどんな話をしても全く相いれることはないはずです。理由は習氏がバイデン氏の足元を見るからです。バイデン氏からすれば地球の反対側までやってくる割には果実は少ないことになるかもしれません。

一方、トランプ氏はそのG20が開催されバイデン氏がアメリカから遠く離れている11月15日に「重大発表」を行うとし、24年大統領選への出馬表明を行うものと思われます。これはとりもなおさず、この中間選挙で共和党が多数派となり、議会のコントロール権を持つことが前提であり、かつ、開票確定に1週間ぐらいかかったとしても安全な15日を選んだのだろうと思われ、極めて戦略的なポジションにあります。

ではアメリカは今後、共和党を中心とした一枚岩になるのか、と言えば私はバラバラになるとみています。トランプ氏の声は大きいのですが、トランプ氏の支持層はずっと以前からマジョリティを取れるところにはありません。相変わらず嫌いな人は嫌いなのです。とすれば共和党内部での分裂は必至で例えばトランプ氏と距離を置くペンス元副大統領などの展開次第では内部分裂の危機があるとみています。

となれば今回の選挙で共和党が主導権を握ったとしても一時的には祝賀ムードが起きるものの短命な盛り上がりになるとみています。

実は専門家やメディアは不思議なロジックを展開しているのです。それは「ねじれると議会では何も決められないし、大統領も拒否権を連発するだろう。とすればこれから2年間のアメリカは税制やバラマキ法案はまず通らない。結果として安定感を担保するのでインフレを抑制し、株式市場には有利な形である」と。私はこのロジックにアメリカも堕ちたものだと嘆きしかありません。何も進歩しないアメリカは株式の買いだというのです。そんな阿呆な話はどれだけ勝った論理だとしても考えること自体おぞましいです。

ところで下院の議長ですが、ペロシ議長が自宅への襲撃事は自分に責任があることも踏まえ、今回で議員を引退するのではないかと見られています。下院が共和党主導になればマッカーシー院内総務が議長に就くとみられますが、下院議長は緊急時の大統領の権限継承順位が上院議長兼副大統領に次ぐポジションで極めて大きな力を持ちます。高齢のバイデン、実務能力に欠けるハリス両名を考えると今回の下院議長のポジションは見方によっては一定の意味があります。そのマッカーシー氏はこのブログでもお伝えしたようにウクライナ問題について淡泊なのです。つまり支出制限などウクライナ問題と距離を置く公算があります。多分、トランプ氏もその件についてはあまり興味がないように思え、外交より内政中心の政策になりそうです。

もう一つ、NY市場で最近顕著な動きなのが「東高西低」現象です。東部アメリカに拠点がある伝統企業の株価が上昇し、西部の新興企業の株価が下がっているのです。IBMやGEが安定しているのに対してGAFAMが冴えません。テスラの株価の下げはこれからだとみています。保守と民主のバトルは株式市場でも見られるということです。エネルギー関連などが再度復活の芽が出てくるでしょう。

ではそのような保守的なアメリカが国家を成長させるのかについては不安が残ります。今回の中間選挙は2024年大統領選の前哨戦であり、国民世論の不満が表現されるものであります。但し、現代社会はあまりにも速いスピードで動いており、2年後の社会情勢を予想するのは全く不可能です。よって今回の共和党優位が24年の大統領選の行方を占うものとも言い切れないでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月9日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。