世代間不平等を考える:現役世代の負担がどんどん増加している日本

少子高齢社会になった日本では、世代間不平等が問題となっている。

将来的には、莫大な人口を擁する中国も少子高齢化が急速に進むと予想されている。

世代間不平等を考えるひとつの道具として、コトリコフらが開発した「世代会計」という考え方がある。

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「世代会計」というのは、10歳単位で国民を区分し、政府に対して支払う金額と政府から受け取る金額の差し引き金額を比較するというものだ。

例えば、年金保険料を合計で500万円支払って年金給付を600万円受け取れば、プラス100万円になる。

日本では、2015年時点でこの収支がトントンになるのが60歳だった。

つまり、60歳以上の国民は「受け取り超過」で、60歳未満の国民は「支払い超過」になる。

その最大の原因は、年金が「賦課方式」になっていることだ。

少子高齢化が進むことにより、現役世代の負担がどんどん増加している。

もともと年金の制度設計時は「積立方式」だったものが、田中内閣時代に「賦課方式」に変更された。

また、日本の個人金融資産の7割を60歳以上の国民が持っているという事実も見過ごすことはできない。

ただ、高齢者が個人金融資産を多く持つこと自体は決して不自然なことではない。

年齢が若ければ「人的資産」がある。

22歳の若者は、向こう40年以上働くポテンシャル(人的資産)を持っており、30代、40代と歳を重ねるごとに人的資産が減少する代わりに金融資産が増えるからだ。

70代になると、多くの人々が人的資産を失うので、その分金融資産が多くなるのは当然のことだ。

とはいえ、金融資産の7割を60歳以上の国民が持っているというのは、いささか偏っているように思われる。

以上のような事実に鑑みると、若年世代や現役世代が不当な扱いを受けているようにも考えられる。

しかし、技術進歩という点を斟酌すれば、高齢世代より若年世代や現役世代の方がはるかに恩恵を受けている。

現在の高齢世代は、交通戦争や公害に悩まされた世代だ。

交通事故死亡者や高度障害を受けた人数は現在に比べて遥かに多く、四大公害病の被害に遭った人たちもたくさんいる。

車の性能や公害排出関連の技術進歩により、現役世代や若年世代はかつてより遥かに安全な生活ができる。

将来的に人工筋肉などの技術が開発されれば、寝たきりになることなく常時自力歩行ができるようになるかもしれない。

急速な技術進歩は、後の世代に多くのメリットをもたらす。

ただ、現在の政治はあまりにも高齢者優遇なのが問題だ。

投票者数の多い世代にメリットを与えて多くの得票を狙おうというインセンティブが働くからだ。

政治的な高齢者優遇を是正するには以下のような解決策が考えられる。

まず、何よりも若年世代が投票所に足を運んで「若年世代の投票率」を上げることだ。

誰に投票してもかまわない。

ともかく投票率を上げることが肝心だ。

20代の投票率が80%になれば、政治家諸氏も20代に配慮しなければならなくなるだろう。

次に、一定年齢以下の国民に議席を割り当てるクオーター制の導入が考えられる。

一定年齢の議席を女性に割り当てるクオーター制を、女性ではなく若年層に当てはめるのだ。

私自身がSNSで意見を問うたところ、若年層に議席を割り当てるクオーターにはほとんどの人が賛成してくれた。

更に、未成年者にも参政権を与えるという制度変更が考えられる。

そもそも、参政権は主権者たる国民が主権を行使するという最も重大な権利だ。

一定年齢未満というだけで一方的に剥奪するのは明らかに不当だ。

判断能力のない幼い子供の場合は、親が代理行使すればいいだけのことだ。

未成年者票を斟酌しなければならなくなれば、政治家諸氏は未成年者の利益や子育て世代の利益を無視することができなくなる。

他にもいろいろな手法が考えられるだろうが、政治的な世代間不平等は是非とも解消すべきだと私は考える。


編集部より:この記事は弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2022年11月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。