10月末にTwitterを買収、役員全員を首にして”独裁者”になったイーロン・マスク(Elon Musk)氏。強烈な人減らしを進めた一方で、永久停止だったはずのトランプ前大統領のアカウントを復活させるなど、傍目にはやりたい放題のワンマンぶり。
そして今度はシリコンバレーのハイテク企業などでは付き物のような無料の朝食やランチの廃止をチラつかせるツィートで物議を醸しています。
私は外国からシェフを社員向けの無料食事のために招いたと話題になったGoogleなどの現場は知りませんが、カナダの中堅IT企業を訪問した際、無料ランチのほか、いつでも食べられるハンバーガーやスナック菓子を準備し、清涼飲料なども無料で自由に摂れるのを見て、ちょっとばかり羨ましかったものです。
そうしたハイテク企業の従業員のささやかな役得にマスク氏は10日ほど前にこう切り込みました。
いくらなんでも一食あたり400ドル以上もかかってるなんて!早速、ツィートで反論されます。このプログラムを1週間前まで担当していたがマスク氏の元で働くのが嫌でやめたという女性の元従業員。
これは嘘です。朝食とランチに私たちは一食あたり20~25ドルを使った。これで従業員はランチタイムとミーティングを通しで働けた。
リツィートは今現在6500を超え、いいねも5300台。そこででしょうBusiness Insaiderがまとめます。それによると、マスク氏の主張は、サンフランシスコ本社への出勤率はIDカードの記録では、オフィス稼働率は過去12ヶ月間のピークで25% 、平均で10%以下なのにfood serviceに年間1300万ドルもかかっている、とのことで、食べる人が激減してるから、とんでもなく高くついてる、ということのよう。
そして、こうも言ってます。「俺は週7日、オフィスで朝から晩まで働いている」。これが、これまでリモートワークを認めていたTwitterの方針を覆す、「週40時間はオフィスに出勤」というマスク氏のお達しにつながったんでしょう。
なお、マスク氏に反論したのは「不動産と仕事の変化」担当のVPだった人だそう。
さて、Twitterのcafeteriaはどうなっているか。23日付のBusiness Insiderの記事では、ニューヨークオフィスのある従業員が「2種類のハンバーガーとサラダバーがあった。前にあったエビのグリルなどはなかった」と語ったそうで、まだ閉鎖されたり、有料化されてはいないよう。
6兆円もの買い物をした世界一の富豪にしては、と言う気もしますがNew York Timesによると、Twitter買収の際の130億ドルの返済を抱え、広告主の撤退が相次ぐ中、まずは人件費に大鉈を振るい、あらゆる支出に目を光らせ、細かいことでは、従業員の補助金付きのスポーツジムのパス、携帯電話の請求書、育児手当などの福利厚生まで手をつけている、とのことです。そうでなければ倒産しかけない、という警告も発しています。
そんなに苦労するなら買収しなければよかったのに。何度もマスクを取材したという著名なtechジャーナリストKara Swisherさんは、政治評論家のChris Hayes氏が主宰するpodcastでそう問いかけた時、こう答えました。
彼はおそらく後悔してると思います。彼はこのプラットフォームがビジネスとして適切に活用されたことがないために、お買い得だと考えたのです。その後、市場が狂ったので過大な支払いをした。
馬鹿げたことだと抜け出そうとしたが、契約があってできなかった。買わなければならなかった。それでやりたいことはなんでもするつもりなのだ。
編集部より:この記事は島田範正氏のブログ「島田範正のIT徒然ーデジタル社会の落ち穂拾い」2022年11月24日の記事より転載させていただきました。