11月1~2日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が11月23日、公表された。11月FOMCでは 市場予想通りFF誘導金利目標を4回連続で75bp引き上げ3.75~4.0%に設定した。
パウエルFRB議長による記者会見がタカ派的だった半面、FOMC議事要旨はむしろ以下の6つのポイントを踏まえると会見ほどタカ派で一枚岩のようには見えない。インフレ高止まりに警戒しつつも利上げによる影響、しかも労働市場やインフレだけでなく、金融システムや輸出の観点でも懸念を寄せていた点は特筆に値する。また、スタッフの経済見通しでは向こう1年先の景気後退入りが「概ね基本シナリオになる公算が大きい」と見込まれた。
①参加者の大半(a substantial majority)が利上げペースの鈍化が近いうちに適切になる可能性が高いと判断
②金融政策が実体経済にもたら影響はラグを伴う(利上げ幅縮小の根拠のひとつ)
③数人の参加者は、金融システムの不安定性を軽減するために金融政策のペースをゆるめることが重要と指摘
④複数の参加者は、累積的な制約的な政策姿勢が、インフレ率を2%に戻すために必要分を上回るリスクが高まっていることを指摘
⑤参加者は海外経済の鈍化とドル高を受け、米国の輸出が押し下げられると見込み、一部の参加者は米経済へ広範にわたって米経済に影響が及びかねないとコメントを寄せた。
チャート:ドル・インデックス(左軸、ローソク足)は米10年債利回り(右軸、緑ラインチャート)上回るペースで下落
(作成:My Big Apple NY)
詳細は、以下の通り。なお、FTX破綻前だったため、暗号資産に関するリスクへの言及は極めて限定的だった。
金融政策について
<利上げについて>
・参加者は、過去の経験や経済研究で提供された様々なタイミング関係の推定を考慮に入れ、金融政策措置に対する経済の反応のラグの長さと、ラグに関する証拠を現在の状況に適用することに伴う高度な不確実性について議論した。金融引き締めは通常、金融情勢に急速な効果をもたらすが、金融情勢の変化が総支出や労働市場、さらにインフレに及ぼす完全な効果は、実現するまでに時間がかかる可能性が高いことを指摘した。
・足元の状況について、多くの参加者は、金融引き締めが明らかに金融情勢に影響を与え、一部の金利敏感セクターで顕著な効果があったとしても、経済活動全体、労働市場、インフレに対する効果のタイミングは極めて不確実であり、効果の全容が明らかになるには至っていない、と指摘した。
・金融政策、経済構造の変化、金融政策決定に関する時間の経過に伴う透明性の向上などの影響を切り分けることが難しいため、過去の記録はこれらのラグの長さについて決定的な証拠を提供しない、と数人の参加者が指摘した。
・さらに、パンデミック後の経済の動きは、パンデミック前の動きとは異なる可能性があることを指摘する参加者もいた。
・今回の会合で適切な金融政策措置を検討するにあたり、参加者は、インフレ率が委員会の長期目標である2%を大幅に上回って推移しており、インフレに関する足元の指標からはインフレ圧力が弱まる兆しがほとんど見られないとの考えで一致した。
・景気拡大は昨年の急速なペースから大幅に減速し、最近の指標では今四半期の支出と生産は小幅な伸びにとどまることが示唆された。成長率鈍化にもかかわらず、労働市場は極めてひっ迫し、名目賃金の伸びは依然として高い水準にある。
・このような背景から、全ての参加者は、今回の会合で連邦資金金利の目標レンジを75bp引き上げ、5月に同委員会が公表した「連邦準備制度のバランスシート縮小計画」で説明したように、連邦準備制度の保有証券の削減プロセスを継続することが適切であるとの見解で一致した。
・参加者は、今回の政策金利の引き上げは、需給の不均衡を緩和し、インフレ率を長期的に2%に戻すために、委員会の金融政策スタンスを十分に制約的にするためのステップであるとの見解を示した。
・金融環境は委員会の政策措置に応じて著しく引き締まり、その効果は、住宅投資や企業投資の一部を含む、金利の影響を最も受けやすい経済分野に明確に表れた。
・一部の参加者は、金融政策措置とコミュニケーションは長期的なインフレ期待を良好に固定するのに役立っているとし、これはインフレ率が委員会の長期目標である2%に戻るのを促進するのに役立つ状況とコメントした。
・しかしながら、足元のインフレ率がその目標を大幅に上回り、労働市場が依然として非常に逼迫しているため、参加者は継続的な利上げが適切であり、長期的なインフレ期待を十分に安定させることに資するとの見解で一致した。
・参加者は、実質経済活動とインフレの双方について、金融抑制の効果が完全に現れるには時間がかかり、こうしたラグが金融政策の効果に対する評価を複雑にしていると指摘した。
・多くの参加者は、委員会の目標達成に必要なFF金利の最終地点には大きな不確実性があり、その評価はデータ次第と述べた。
・それでも、多くの参加者はインフレが今のところ収束する兆しがほとんどなく、経済における需給の不均衡が続いていることから、委員会の目標を達成するために必要な連邦資金金利の最終地点についての評価は、これまでの予想よりもやや高くなると指摘した。
・参加者は、将来のFF金利誘導目標レンジの引き上げペースに影響を与えそうな多くの検討事項について言及した。これらの事項には、これまでの金融政策の累積的な引き締め、金融政策措置と経済活動やインフレの動きとの間のラグ、経済・金融情勢などが含まれる。
・多くの参加者(number of participants)は、金融政策が委員会の目標を達成するために十分に引き締まった状態に近づくと、FF金利誘導目標レンジの引き上げペースをゆるめることが適切になるとの見方を示した。
・さらに、参加者の大半(a substantial majority)が、利上げペースの鈍化が近いうちに適切になる可能性が高いと判断した。こうした状況下でペースをゆるめることは、最大限の雇用と物価安定という委員会の目標に向けた進捗をより良く評価することを可能にするという。
・金融政策措置が経済活動やインフレに及ぼす影響に伴う不確かな遅れや大きさは、こうした評価が重要である理由の一つとして挙げられた。
・数人の参加者は、金融システムの不安定性を軽減するために、金融政策のペースをゆるめることが重要であるとコメントした。
・そのほか数人は、政策金利の引き上げペースをゆるめる前に、政策スタンスがより明確に制約的な領域に入り、インフレ圧力が大幅に後退する具体的な兆候が現れるまで待つことが有利となる可能性がある指摘した。
・金融政策が十分に制約的なスタンスに近づくなか、参加者は委員会が最終的にFF金利誘導目標レンジを引き上げる水準と、その後の政策スタンスの展開が、目標レンジの更なる引き上げペースよりも委員会の目標達成にとって重要な考慮事項になったことを強調した。
・参加者は、金融政策の実施に関連する多くのリスク管理上のポイントについて議論した。
・広範かつ許容できないほど高いインフレ率とインフレ見通しの上方リスクを考慮し、参加者はより制約的な政策スタンスに意図的に移行することは、リスク管理上の認識と整合的であるとした。
・複数の参加者は、累積的な制約的な政策姿勢が、インフレ率を2%に戻すために必要分を上回るリスクが高まっていることを指摘した。
・数人の参加者は、急速な政策引き締めの継続は、金融システムの不安定性や混乱が生じるリスクを高めるとコメントした。
・インフレと実体経済双方の見通しに関する不確実性の高まりは、金融政策の累積的な引き締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与えるラグ、経済・金融情勢を考慮することの重要性を強調していることで広く合意された。
チャート:9月FOMCでのSEP
(作成:My Big Apple NY)
経済について
<経済全般>
・参加者は足元の指標では消費と生産の伸びがゆるやかであることを指摘した。しかし、ここ数カ月は雇用の増加が著しく、失業率も低水準にとどまった。
・インフレ率は、パンデミックに関連した需給の不均衡、食料・エネルギー価格の上昇、およびより広範な物価上昇圧力を反映して、高止まりしている。
・参加者は、ロシアの対ウクライナ戦争が甚大な人的・経済的苦難を引き起こしていることを認識した。戦争とそれに関連する事象は、インフレにさらなる上昇圧力をもたらし、世界的な経済活動の重荷となっていた。こうした背景から、参加者は引き続きインフレのリスクに強く注視していく。
・現在の経済活動と短期的な見通しについて、参加者は、第3四半期の実質GDPは回復したものの、最近のデータから、短期的な経済活動はトレンド成長率を下回るペースで拡大する可能性が高いことを確認した。
・参加者は、個人消費と企業消費の伸びが軟化していることを指摘し、複数(some)の参加者は、委員会の政策措置に伴う金融引き締めに対応して、金利に敏感なセクター、特に住宅で顕著な減速が見られたと述べた。
・一部の(several)参加者は、中低所得者層の間で裁量的支出が狭まったとし、彼らの支出は低価格帯にシフトしつつあると指摘した。ただし、参加者は家計のバランスシートが引き続き力強く、個人消費を押し上げると予想した。
・数人(a few)の参加者から、パンデミック時に積み立てた貯蓄を切り崩し、経済的な負担を感じる家計が増加しているとの指摘もあった。
・参加者からは、住宅ローン金利の上昇により、住宅活動が著しく抑制されているとのコメントも聞かれた。
・参加者は企業の設備投資の伸びがゆるやかであることを指摘した。数人の参加者は、金融引き締めが企業投資の重荷になっていると見ていたが、別の参加者は一部の企業関係者は設備投資は回復していると指摘した。
・複数の参加者は、輸送コストや納期の短縮など、供給のボトルネックが緩和されているとの報告を受けたと述べたが、その程度は企業によって異なる。
・また供給制約の緩和を受け、取引先が生産計画を立てやすくなった、あるいは予防的な在庫を持つ必要性が低下したとする参加者も数人いた。
また、中西部の干ばつにより、ミシシッピ川をはじめとする一部の水路の航行が難しくなっていることを指摘する参加者もいた。こうした状況は、新たな供給制約を生み、農産物の輸送コストや価格に上昇圧力を掛ける見通しだ。
・物価が世界的に高止まりし、中央銀行は同時に金利を引き上げ、全体的な世界金融動向の引き締めを招いた。参加者はさらなる世界的な金融引き締め動向がエネルギー価格やその他の逆風と合わせ、世界の実質GDPの鈍化につながると見込んだ。
・参加者は海外経済の鈍化とドル高を受け、米国の輸出が押し下げられると見込み、一部の参加者は米経済へ広範にわたって米経済に波及しかねないとコメントを寄せた。
チャート:足元で米国の輸出は過去最大レベルながら、一部のFOMC参加者はドル高を受け現時点で懸念を表明
(作成:My Big Apple NY)
・参加者は、労働市場がひっ迫し続け、失業率は過去最低水準にあり、求人数は高水準にあり、レイオフ件数は低く、雇用増加は活発で、平均賃金の伸びは高止まりしているとみなした。
・多くの参加者は、労働市場がより良い需要と供給のバランスに近づいてきた暫定的な兆しがあると指摘、その兆候として離職率の低下や平均時給の伸び鈍化を挙げた。
・参加者は、物価が目標の2%を大幅に上回り、許容できないほど高水準にあるとの見解で一致した。
・複数の参加者は、高いインフレの負担が、食料、エネルギー、住居などの必需品が支出に占める割合が高い低所得世帯に不均衡に及んでいることを指摘した。
・多くの参加者は、サービス部門の価格圧力が高まっていること、そして歴史的に、この部門の価格圧力は財部門のそれよりも持続的であったことを確認した。
・参加者は、短期的なインフレ圧力が高いことに同意したが、商品価格の下落や供給制約の緩和による商品価格への圧力低下が中期的なインフレ抑制に寄与するとの指摘もあった。
・数人の参加者は、新規賃貸物件の賃料上昇ペースがここ数カ月で減速していると指摘したが、この動きがPCEインフレに現れるには時間がかかるとも指摘した。
・数人の参加者は、企業が投入コスト上昇を顧客に転嫁する能力について企業から報告を得た上で、一部の企業は引き続き強力な価格決定力を持っているが、別の例ではコスト転嫁がより困難になっていることが示唆されたとコメントした。
・参加者は、家計や企業に対するアンケート調査や金融市場の相場から得られる中長期的なインフレ期待をめぐり、全体としてよく固定されているように見えると指摘した。
<経済見通し>
・参加者は概して、経済見通しに関する不確実性が高く、インフレ見通しに対するリスクは依然として上方向へ傾いていると指摘した。
・参加者は、足元のインフレが予想より高く、より持続的であることを認識した。
・複数の参加者は、地政学的緊張のなかでエネルギー価格が再び急伸するリスクを指摘した。
・数人の参加者は、労働市場の逼迫が続いているため、賃金価格スパイラルが発生していないとはいえ今後発生する可能性があるとコメントした。
・経済活動の見通しに関するリスクは下方向に偏っていると判断する参加者が多く、様々な世界的な逆風が顕著に挙げられ、中国経済の減速や、ロシアの対ウクライナ戦争が国際経済に与える影響などが含まれる。
・また、世界的にインフレ圧力が高いため、他の多くの国で金融引き締めが行われており、これが海外の経済活動に影響を与え、米国経済への波及の可能性があるとの指摘もあった。
―スタッフ見通し
・今回の経済活動見通しは、9月予想より弱まった。成長率は2024年の早い時期にスタッフの推定する潜在成長力を下回り、2025年も下回ると予想された。同様に、失業率は2024年と2025年にスタッフの推定する自然失業率を上回る見込み。
・スタッフは今後数四半期のコアPCE価格インフレ率の予測を引き上げたが、これは昨年半ば以降インフレを押し上げた要因、とりわけ堅調な賃金上昇と供給制約による物価への影響が、従来予想より長く続くとの評価を反映したものである。財の需給不均衡の影響が解消され、労働市場や製品市場の逼迫度が低下すると予想されることから、スタッフは引き続き今後2年間でインフレ率が著しく低下すると見込む。2025年のインフレ率はPCE価格指数とコアPCEもに2%となる見通しだ。
・インフレが執拗に高止まりしているため、スタッフは引き続きインフレ見通しへのリスクが上方向に偏っていると見ている。米国内消費の伸び悩みや世界情勢の悪化、金融引き締めが、実体経済への顕著な下振れリスクとなる。加えて、インフレ率の持続的に鈍化する上で想定を上回る金融引き締めが必要となる可能性も、下振れリスクだ。このため、スタッフは実体経済予測に対する基本シナリオに対するリスクは下方向に偏っていると判断し、今後1年先の景気後退入りは概ね基本シナリオとなる公算が大きい。
チャート:9月時点での1年先の景気後退確率は23%
(作成:My Big Apple NY)
〇金融市場、金融環境について
―FOMC参加者
・金融安定に関する議論において、参加者は、金融政策の伝達、連邦政府の資金需要への対応、および国際金融システムの運用のために、米債市場が秩序よく機能することの重要性に指摘した。
・米国債市場の重要性は、英国債市場の足元の混乱によって強調されたことに留意しつつ、多くの参加者は、資本・流動性規制と市場活動との潜在的な相互作用、主要市場参加者の監督、清算・決済慣行、連邦準備制度の常備施設の役割・構造など、市場の回復力に関して関係当局が検討すべき様々な問題について議論した。
・数人の参加者は、特に金融引き締めの局面において、金融政策のスタンスに影響を与えない形で米国の中核的な市場機能の混乱に対処する準備が重要であると指摘した。
・数人の参加者は、世界的な金融引き締めが急速に進むなか、ノンバンク系がもたらすリスクや、こうした金融機関の隠れたレバレッジがショックを増幅させる可能性に言及した。
―公開市場操作デスク
・SEPを受け、制約的な金融政策を維持する見通しが強まり、11月FOMCでの75bp利上げ観測が高まったが、将来の利上げ幅縮小ペースにも関心が集まった。
・一部の参加者は金融の安定に関連する問題について言及、引き締め寄りの金融政策が米国債市場の流動性や民間の融資での脆弱性をもたらす可能性があると指摘した。
・数人の参加者は、ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー、農産物、金属など幅広い商品の価格が上昇し変動が大きくなるなど、商品関連金融市場のリスクが高まっていると指摘。
・このような参加者は、商品市場における一部の主要な参加者の取引およびリスク管理慣行が規制当局から十分に見えていない点を指摘。中央清算機関(CCP)がボラティリティの上昇に伴うリスクを管理する能力を維持する必要があること、あるいはCCPにおける証拠金規制によって、大手銀行やブローカーディーラー、及びその顧客に大きな流動性需要が発生する可能性を指摘した。
金融市場動向と公開市場オペについて
・世界的に金融市場でボラティリティが上昇、9月は英国の減税策発表を受け英債利回りが急伸し、米国債の利回りも押し上げ。米国債でのインプライドボラティリティはコロナ禍の水準まで上昇。
・為替市場ではドル高が加速し、市場関係者は一部のアジア諸国で自国通貨買い介入を観測。利上げを進める先進国において、市場関係者は利上げ幅鈍化の兆候を確認することに注力した。
・金融市場の動向と連邦準備制度の運用についていえば、オーバーナイト・リバース・レポ・ファシリティ(ON RRP)の利用は、四半期末前後の期間を除き、安定的に推移した。今後、ON RRPの残高と準備金の相対的な減少ペースは、金融市場の情勢に大きく左右される見通し。
・ON RRP施設残高と金融市場金利の関係を含む足元の動向は、時間の経過とともにON RRP施設の利用を減少させるような状況の変化を示唆した。
・しかし、12月に米財務省の納税があり米財務省の一般会計の残高が増えることや、年末のポジション調整など通常の要因により、年末に向けて金融市場の状況が多少早く変化する可能性がある。
・このため、金融市場参加者は流動性の変化により敏感に反応し、来るべき時期に備えた計画を立てることが必要になる可能性あり。
・足元のの市場相場は、年末の金利上昇圧力が限定的であることを示唆。
・オフショアのドル資金調達市場では、ドル借り入れに伴うプレミアムは、例年の同様の時点よりも小幅に上昇した。
・連邦準備銀行の純利益については、11の準備銀行が最新の統計リリースで総額63億ドルの繰延資産を計上し、支払利息の増加に起因する純利益のマイナスを反映している。他の多くの中央銀行も純利益のマイナスに直面した。
―スタッフ分析
・非金融企業の信用の質は複数の業種で悪化の兆しがみられるが、概して堅調だった。社債をめぐる格上げは格下げとほぼ同じペースだったが、投資適格級に集中した。投機的各級では格下げが格上げを上回り、市場での2023年におけるデフォルト見通しは急速に高まった。
・家計の信用の質は堅調で、住宅ローンの支払い延滞率は低下傾向にあり、住宅差し押さえの割合はパンデミック前の水準に近い。自動車ローンやクレジットカードの支払い延滞率は上昇段階にあるが、前者はパンデミック以前の水準近く、後者はパンデミック以前よりずっと低い水準にある。
・非金融セクターのレバレッジは引き続き低下し、インタレスト・カバレッジ・レシオは引き続き上昇した。しかし、借入コストのさらなる上昇は、一部の借り手の債務返済能力に対してリスクをもたらす可能性がある。
・金融セクターでは、今年のストレステストの結果、大手銀行は大幅な景気後退に対する回復力を維持していることが示されたが、ヘッジファンドやその他の非銀行金融機関ではレバレッジの上昇を示す指標も見られた。
・短期資金調達市場は、引き続き構造的な脆弱性を抱えていた。国内銀行の資金調達リスクは依然として低いが、プライム・マネー・マーケット・ファンド、その他の現金投資ビークル、オープンエンド型投資信託、ステーブルコインはすべて、大規模な償還の影響を受けやすい状態が続いた。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2022年11月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。