自分が考える「価値のある人脈・ない人脈」の違い

黒坂岳央です。

「自分はあの有名人と知り合いだ」

「一度、情報交換しませんか?」

忖度なしでハッキリ言うが、筆者はこうした文脈において「人脈」という言葉を振りかざしてくるタイプが苦手である。彼らからはお金に関する下心以外、何も感じない。

昔は「経営者やフリーの世界は人脈が大事なのだ」とよくある話を真に受け、一時期は恥ずかしながら自分自身が人脈を求めてたくさん人と会っていた時期があった。だが、それは間違っていた。真の人脈とは何らかの見返りを期待して、能動的に作りに行くものではなく、自然にできるものと考える。

今回は筆者が考える「真の人脈」について取り上げたい。

NicoElNino/iStock

下心のある人脈=搾取リスト

忌憚なく意見を言うなら、何らかの下心を持って作られた連絡先は双方、どちらかにとっての搾取リストといって差し支えない。これはうんざりするほど自らの身で体験してきた。

「よかったら一度、情報交換のため会ってお話をしませんか?」、世間知らずのピュアだった時期はこういうオファーを真面目に受け取り、必死に相手の役に立つ情報を準備し「お互いにgiveし合うことで人脈はできるはず」と考えて会っていた。情報”交換”というのだから、当然自分はgiveし、相手からもgiveがあるものと期待してしまっていた。だが筆者の行動は今考えると間違っていた。

しかし、情報交換という名目で行われる会合はその実、一方的な情報の抜き取りという搾取に過ぎない。相手はこちらを気持ちよくするために、上手に傾聴の姿勢を見せてくれるが、その下心は今なら透けて見える。また当方の持参した情報を抜くだけで終わらず、勝手に先方の「公式メルマガ」とやらに登録され、迷惑メールが届くようになったり、一度参加するとしつこく返してくれない飲み会という名のハードセールスを受けることになる。これでは騙された気分になるのも無理はないだろう。

同じような経験を何度かして、それ以降は「お互いのメリットがあるよう、今度会いましょう」という類の連絡は一切受けないことにした。相手に下心がある以上は、搾取リストに載せられてしまうだけである。それに直接会わないとできないほど、有益で秘匿性の高い話など世の中にはほとんどない。

サラリーマンの社外人脈の9割はムダ

それからこれは批判を受けてしまいそうな発言だが、あえてハッキリいうとサラリーマンにとっての社外の人脈の9割はムダで終わると思っている。留意点としてはムダである人脈は「あくまで9割」であって、中にはムダにはならないものがあることはわかっている。だが、意識の高いビジネス書で言われている、「中年期のサラリーマンは社内ではなく、社外で人脈を持ちなさい」みたいな提案は本質的にズレていると感じるのだ。その理由を取り上げたい。

まず、サラリーマンが持てる社外での人脈は、相手がサラリーマンであることが多くなるはずだ。理由は、同じレイヤーでないと話は通じないし、利害関係もズレてしまうためだ。

部長と平社員がお互いに価値を感じる人脈になり得ないことは誰でも想像がつく。そして役員や本部長クラスでなければ、決裁権がないので「仕事に困ったからあの人にお願いしよう」みたいに人事で融通してもらうことや、「今月売上が厳しいのでキャンペーンを受けてもらおう」といったオファーは通ることがない。

結局、異業種のノウハウや経験談のナレッジシェアリング程度にとどまることが予想されるが、そうした情報は今やYouTubeでもSNSでも整理され、分かりやすい情報がオンデマンドで提供されている。そのため、時間や労力を割いて会って話を聞く価値はほぼないと言わざるをえないだろう。

かといってサラリーマンと経営者やフリーランスは明らかにレイヤーが違うので、上記で述べた通り接点がない。あるとすれば、売上に困った経営者やフリーランスがサラリーマンの勤務先に営業をかけたいケースくらいだろうが、それもサラリーマン側に決裁権がなければ望むべくもない。やはり有効な人脈にはなり得ない。

真に価値のある人脈

その一方で、本当に価値のある人脈も存在する。個人的には自分のビジネスの「古参のファン」こそが真に価値のある人脈だと思う。

自分はこれまで数え切れないくらいに、彼ら/彼女らに助けてもらってきた。絶対に足を向けて眠ることができない存在である。新商品を販売すると告知したら、真っ先に買ってレビューしてくれ、セミナーをするといえば遠方にも関わらず会いに来てくれる。また、日頃から記事や動画を出すと真剣に読んで感想を送ってくれる。途中で発信に心折れそうな瞬間が訪れたくらいのタイミングで、「応援しています」「頑張って」と声援をくれたことで何度も立ち上がることができる活力を得られた。

もちろん、お金を払ってくれるお客様に上下はない。だが、古参のファンはどうしても思い入れが強まる。人によっては年単位で長い期間、交流をしているので、お互いの苦労や人生もよくわかっている。そうなると必然的に感情移入の度合いも深まる。自分は得体の知れない他人から批判されたり、嫌われたりしても何も感じないしむしろ自分と合わない人は積極的にブロックしてほしいのだが、古参のファンにだけは嫌われたくないのでできる限り誠実に、まごころで接することを意識している。

結論的に人脈とは作るものではなく、必死に仕事をしていたら自然にできるものだと思っている。間違っても下心がある人に真に価値ある人脈などできないだろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。