時間がないからやりたいことができないと感じる人は多い。しかしそう感じる時、本当に時間がないことが問題なのだろうか。どうすれば「時間がない」と感じる中、やりたいことにきちんと時間を使っていけるようになるのか。
この問題の解決の鍵となるのは「常に自分自身が24時間の使い方を決めている」という意識と、あらかじめ自分のやりたいことをやる時間を予定しておくことだ。
現在も大手企業で働きながら、2016年より残業ゼロを達成し続けているタスク管理の専門家として、「時間がない」に対するシンプルで本質的な解決法を、世界のベストセラー作家やライフコーチなどの言葉をたどりながら考えてみたい。
Facebookを見ながら「時間がない」と回答する人達
まず、私たちはいかに自分の時間を無意識に使っているか。このことを考えさせられる話がある。
2010年に映画にもなった『食べて、祈って、恋をして』で知られる世界的人気作家エリザベス・ギルバートがある時、Facebookで何千もの人を対象にアンケートをとった。『もっとクリエイティブな毎日をすごすための一番の障害となるものは何か?』との質問に、95%が「時間がないこと」と回答したという。
このことがどれだけバカげているかお気づきだろうか。回答した当の本人達はその時Facebookを眺めていた。それにもかかわらず、彼・彼女らは「時間がない」と回答したのだ。
エリザベスはこのことを指摘し、Facebook・Instagram・テレビ等に人々がどれくらい時間を使っているのか『みんな自分の時間が実際にどう使われてるのか、冷静になるべきよ』と語った。
私達の日々の活動のおよそ40%が習慣=無意識で行動していることを証明する研究もある。エリザベスが指摘するように、我々は自分達の時間の使い方を正確に把握できていない可能性が高い。そうなると、やりたいことができない真因は時間がないことではなく、我々が時間をどう使うか、その選択の問題と言えそうだ。
3児の母が1冊の本を書きあげるまで
先程のFacebookのアンケートの話には続きがある。エリザベスは友人でもありニューヨークタイムズのベストセラー作家であるグレノン・ドイルが最初の本を書きはじめた時のエピソードを続けて語った。
グレノンは当時三人の子の母で自分が本を書くためにはテレビをやめなければいけないことを自覚していた。しかしそう簡単にはやめられなかったという。なぜなら当時彼女にとって1日の終わりにテレビを見ることが何よりの楽しみだったからだ。
しかしある時から彼女はテレビを見るのをやめて子供達が寝る時間に一緒に寝るようにした。その分早起きし、子供達が起きる1時間半前の時間を執筆にあてた。そうして彼女は作家としての道を歩みはじめたのだという。
エリザベスはこの話の最後に『そうやって自分の時間の使い方にシビアに冷静に、そして正直になった人達がいる。今日はぜひみんなにこのことを伝えたかったの』と語った。
忙しくてできない=そこまで重要じゃない
世界的に有名なライフコーチで知られるマリー・フォーレオは著書『あなたの才能を引き出すレッスン「何事もなんとかなる!」マインドで夢を叶える(KADOKAWA 2020)』で『時間の言い訳を撲滅する鍵は、「与えられた24時間を使ってやっていることはすべて選択されたものだ」という事実を認めることです』と語っている。
仕事に行く。洗濯をする。子供を風呂に入れる。税金を払う。メールに返事をする。生きていくのに必要不可欠と思えるこうした行動でさえ、マリーの表現を借りれば『頭に銃を突きつけられて』行っているわけではない。あくまで自分にとって重要なことだから我々は自らの意思でそれらを選択して行動しているにすぎない。
このことについて「世界で最も影響力のあるデザイナーの一人」とも言われるデビー・ミルマンも『忙しいとは選択である』とアメリカのベストセラー作家ティム・フェリスとのインタビューで語りその理由を次のように説明した。
私達は常に自分達がやりたいことをやっている。以上よ!「忙しすぎてできない」と言う時は、要は「そこまで重要じゃない」ってこと。自分にとってもっと重要だと感じることにただ時間を使いたいって意味にすぎないのよ
デビーもまた、やりたいことができないのは時間がないことが問題ではなく、時間の使い方=選択の問題だと言いたかったのだ。時間がないことを理由に何かをやらない時、人は自分にとってもっと重要だと感じることに時間を費やすことを選択しているにすぎない。
たとえば資格試験の勉強をするつもりだったのに好きなテレビ番組をつい見てしまう場合。それは本心では勉強するより、テレビを見てリラックスするほうが自分の中の優先順位が高いということなのだ。
予定しなければ実行されない
ではどうすればテレビよりも資格試験への優先順位をあげて勉強に取り組めるようになるのだろうか。
先程登場したティム・フェリスの言葉を借りればそれは『カレンダーに前もって予定すること(PUT IT IN THE CALENDER)』となる。
ティムは2020年に配信したYouTube動画で「どうすればティムのようにたくさんの仕事をこなしながら創作活動や自分自身をふりかえる内省の時間まで、バランスよくこなせるようになるか」という趣旨の質問に対し『バランスは見つからない。なぜなら自らスケジュールしなければならないからだ』と語った。
ティムは仕事を効率的にこなすために1週間のうち月曜日の予定をブロック=あらかじめ確保して動画を録画する・電話で従業員と通話する・事務作業をまとめてこなす時間にあてているという。またブログを書く日は午前中あるいは昼食前にあらかじめ執筆する時間を予定・確保する。
創作活動についてはアメリカ・オースティンの自宅にいる時1週間に1回程度、90分の絵画レッスンを予定する。メールをはじめ、自分の気をそらすものが目に入る前の、朝一番の時間帯に予定するのだそうだ。
内省の時間についても少なくとも4半期に一度、1〜2週間は電波が届かないような自然の多い場所にこもる時間をあらかじめカレンダーに予定する。移動や宿泊等に伴う費用は全て前もって支払っておく。キャンセルすると費用が発生するようにしておくことで、人間の損したくない性質を利用するのだという。
ティムは『カレンダーに予定しなければ実行されない。物事もうまく進まなくなるし重要なことに手をつけられなくなる。そして僕はそのツケを払わされることになる』と語り、カレンダーに予定すること(PUT IT IN THE CALENDER)が、バランスよくやりたいことを行うための(自身にとっての)『唯一の手段』とまで語った。
やりたいことを実行に移したいなら、いつ・どれくらいの時間をかけてそれを行うのか。カレンダーに具体的に予定することだ。
グレノンが子供達が起きてくる前に執筆したり、ティムが絵画レッスンを朝一番の時間帯に予定したように。最も先送り・先延ばししたくない行動は朝一の時間帯に予定しよう。
朝一の時間帯・予定は1日の中で最も先送り・先延ばしがされにくい。集中力が最も発揮される時間帯であり、他人から連絡が入ることで中断されることも少ないからだ。
やりたいことはカレンダーに予定する。シンプルすぎるかもしれないが、それが最も効果的な解決策なのだ。
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滝川徹 時短コンサルタント
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2022年12月11日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。