左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか

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われわれ日本人は、ドイツといえば、合理的な国民性だと勝手に思っている向きがある。そして、その生真面目さからか、どこか日本と似通っていると思っている。『左傾化するSDGS先進国ドイツで今、何が起こって いるか』(ビジネス社)の著者、川口マーン 惠美氏はドイツに永く住んでおり、そういうことはないと思っていた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻以降、その考えかたが変わってきたという。

ドイツと日本は、製造業が盛んだったり、キャッシュレス決済があまり好きでなかった り、原発をいきなり止めてしまったり、政治が少しずつ左傾化していったりと、確かに似 ているところはあります。しかし、皆が言うほど似ているわけではないと、個人的にはずっと思っていました。

しかも、平和ボケという点ではまさに一致するという。

何が似ているかと言って、とにかく完璧な平和ボケなのです。両国とも、危機感などと いうものは、ずっと昔にどこかに置き忘れてきてしまったよう。だからこそドイツも日本 も、米国から国防費を上げるとせっつかれても、のらりくらりとかわしてきたし、しかも、国民もそれが正しいという認識でした。 国防費など無駄な出費なのです。

また、ドイツ軍は日本の自衛隊が置かれてしま っている状況と似ているという。そして、ドイツは「理想」を装った言葉が一人歩きしてしまっている状況になってしまったのである。

「民主主義」の一人歩きです。 ドイツの政治家が二言目には「民主主義、民主主義」と、不自然なほど強調するように なってから、すでに7、8年が経ちます。そして当時、私が感じた違和感は、やはり正しかったと、今になって思います。実際にあの頃から、ドイツではかえって民主主義が衰退し、次第に自由に物が言えなくなりました。

そして、道徳によって言論が侵食されていくのはまさに日本と共通するものがある。

道徳が前面にかざされ、誰もが絶対に逆らえないような理屈で、自由な言論が少しずつ侵食されていきます。この、いわばソフトな全体主義化と前述のSDGsは、私の目にはまさに同根のように映ります。

そして、コロナに限らず、気候温暖化への疑義をネットで発信しようものなら、動画もSNSもアカウントが停止されるのである。

たとえば、今ではドイツでも日本でも、気候温暖化の信憑性について疑問を呈しただけ で、フェイクを垂れ流した廉で、YouTubeのチャンネルや、ツイッターのアカウントを停止されてしまう。これが民主主義の進化した形だとは到底思えませんが、では、いったいどう説明すればいいのか? 私の疑問は膨れるばかりです。

日本人のわれわれも疑問が膨らむばかりである。ドイツで何が起きているのか。ワールドカップの予選敗退はその予兆か知らないが、とにかくドイツの変貌はここにきてあからさまなものとなっている。それは原因なのか、予兆なのか。

本書『左傾化するSDGS先進国ドイツで今、何が起こって いるか』を読んで、「ドイツの空気」にぜひ触れてほしい。

第1章 3党連立政権でさらに左傾化するドイツ
第2章 メルケル政権からドイツの左傾化が始まった
第3章 脱原発と再エネで破綻するドイツのエネルギー政策
第4章 電気自動車へのシフトに見るドイツの社会主義国ぶり
第5章 コロナ禍で浮き彫りになった言論の不自由
第6章 左派勢力による行き過ぎた平等志向
第7章 LGBTが揺るがすドイツの価値観
第8章 過剰な人道主義がドイツの難民政策を誤らせた
第9章 軍隊嫌いなドイツ人は本当に転換するか
第10章 ポピュリズム政治で失われる経済合理性