日本はもっと自主的な防衛努力が必要だ:田村重信『平成防衛史』

「脱皮できない蛇は滅びる」~ニーチェ~

PKO協力法から平和安全法制の成立まで、本書は平成を通して与党の防衛政策の変遷を見続けてきた著者の自分史である。

平成30年間で防衛政策や自衛隊を取り巻く環境は大きく変化した。しかし、それでも今もなお我が国の防衛政策を縛り続ける日本国憲法には、「平時の規定はあるが有事の規定がない」ことを著者は嘆く。日本国憲法を蛇の皮に例え、その皮を脱ぎ捨てる必要性をニーチェの引用で読者に訴えるのだ。

防衛省の役人も国会議員も担当が代わりましたが、自民党の国防責任者としての事務は全て私がやりました。

誤解を恐れずに言えば、著者は「政治家」である。約30年間、一貫して自民党本部で防衛畑を歩んできた自負が本書のあらゆるところで確認出来る。

私が知っている党本部職員は、ほぼ例外なく「私」を消して、徹底的に黒子を演じる。ある意味で、国会議員に仕える秘書と同じだ。個人的な思想信条やイデオロギーとは無縁で、実務に徹する。

一方で著者は、たびたび部会に出席する国会議員から意見を求められ、講師役を務めることもあった。防衛省の官僚が著者の横で根回ししている姿を見たことも、一度や二度ではない。

私が仕えた佐藤正久参議院議員も本書の中に登場するが、参議院選挙出馬前にイラク派遣の話を書籍化するに当たり、著者とのやり取りがあったようだ。職務外では日本論語研究会や歌手活動も展開しており、「私」を前面に出す著者は異色の党本部職員であった。

私が佐藤正久参議院議員の秘書になった2016年、自民党本部の国防部会に行くと常に末席には著者が座っていた。担当職員の指定席なので当然だが、入室してくるベテラン議員が足を止めて著者に挨拶する姿をたびたび目にして、普通の職員でないことはすぐに察知した。

著者の指定席だった国防部会の末席は、その後の異動で座る人間が変わった。平成から令和へと時代は移り、もう二度と著者のような職員は出てこないだろう。

防衛省・自衛隊HPより02