産経新聞の「中国、経済会議延期か コロナ急拡大報道」という記事を見て、目を疑った。元ネタは13日のBloombergだというが、こちらは今日「予定どおり15日開催されるらしい」という訂正記事を載せた。
「目を疑った」と書いたのは、中国経済が深刻な落ち込み状態にある中で、政府が来年度打ち出す景気下支え策への期待が高まっているからだ。
それを決めるのが、翌年の経済運営方針を定める「中央経済工作会議」であり、既に12月6日には政治局で草案を討議、その骨格が「成長、雇用、物価の安定を重視して、財政・金融面での下支えを強化する」といった言い方で報道されている。
ところが、ここに来て、ゼロ・コロナ撤廃後の感染急拡大が現実のものになりつつある。実態はよく分からないのだが、北京では「身辺でも感染者が急増している」と訴える邦人のSNSなどが発信されている。また、病院の発熱外来に長蛇の列、薬局の解熱剤は完全に売り切れ、封鎖は解かれたが、人々は感染を恐れて外出を控えているため、街は閑散としたまま、といった情報が飛び交っている。
せっかく怨嗟の的だったゼロ・コロナが解除されると聞いて喜んだのも束の間、今度は感染爆発で経済社会が再び混乱・低迷するのではないかという不安が鎌首をもたげてきた。
そんな折も折、恒例の中央経済工作会議が感染拡大を理由として延期されれば、人心と市場心理が大きな打撃を被ることは必定だ。オンライン併用でも何でもよいから、予定どおり開かれることを期待したい。
それにしても、今回のゼロ・コロナ政策撤廃って、いったい何が起きてこうなったんだろう?
元FT北京支局、今は豪州のシンクタンクにいる Richard McGregor氏は「コロナ政策急旋回の理由は抗議デモという以上に、経済が落ち込んでいるからだろう」とコメントしている。
同感だ。私の勘繰りでは、10月に党大会が終わるまでは、大会準備一色で経済状況に目を向ける余裕がなかった、終わって経済状況の棚卸しをしたら、想像を上回って経済が落ち込んでいるので、慌てて緩和する方針に転換した(11月11日発表した「新20条」緩和策はそのつもりだったことの表れ)。
しかし、今度は党政組織の基層(現場)が新20条に従わずに「臨時封鎖」といった名目で封鎖の手を緩めなかった。「緩和で感染が拡大すれば、自分達が詰め腹を切らされる」と恐れたせい、あるいは、この3年で権力を行使する旨味や快感を覚えたせい?
それで「話が違う」と国民からの大抗議デモは来るわ、経済はいよいよ待ったなしだと言うから、慌てて緩和のアクセルを踏んだら、今度は感染急拡大…3期目習近平政権は何だか浮き足立っている印象だ。自分の子飼いだけで固めた政権は、こういう局面では逆に四面楚歌になって、脆さをさらけ出す気がする。
編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2022年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。