値上げしたらそっぽを向かれるビジネス:ココイチとサイゼリアの違い

「岸田さん、よくやった」といって高笑いしたのはアメリカ。防衛について今までアメリカに全部お願いしてきたけれど自分で少し立ち上がる気配が出てきたし、アメリカ製の装備品をアメリカ国内価格よりはるかに高い金額でお買い上げいただけるこんなにおいしい話はありません。バイデン氏もオースティン国防長官ももろ手を挙げて喜んでいることでしょう。最高のクリスマスプレゼントですね。これで岸田首相の「首相地位の防衛能力」はアメリカが守ってくれるので格段に高まったかもしれません。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

クリスマスギフトをくれなかったパウエルさん

FOMC直後の記者会見。確かに手抜かりなくインフレ潰しを徹底し、2023年も利上げするとは言いました。しかし、記者会見では今後0.50%のような利上げ幅ではなく状況に合わせた形にすると述べています。ここを市場はスルーしたのです。パウエル氏はいわゆる利上げのキャッチアップは終わったのであとは市場の動向を見ながら調整すると述べています。

ところが市場は金利の頂上がまた上がった、だけど景気指標はどんどん悪いものが出てくるとみて、「こりゃ、当面ダメだな」という売りが売りを呼ぶそんな状況になりました。東京市場も同様でチャートは日米とも崩れました。年末で税対策のため「損出し」調整もあるし、16日のアメリカ市場でのオプション決済は550兆円ほど積みあがっています。ただ、売り飽きている様子も見えます。いずれにせよ、本格稼働するのは今日まででこれから新年までは惰性の動きになります。

パウエルさんがアメリカ労働市場が引き続き強いことを利上げの一つの理由にしています。彼は記者会見で「テックセクターは雇用調整があるけれど製造業などは引き続き旺盛な人材確保の動きがあり、今はクビにすると二度と戻ってこないから企業が人材を抱きかかえている」と述べています。統計の結果の分析としては優れているのですが、ハイテックが悪くて製造業が良いというという理由は一般的ではないのです。ゴールドマンサックスも4000人斬りを検討し始めています。来年春、雇用がガクッと来るような気がしてならないのです。私はビジネスの肌感覚を通じてそんなに強気になれるパウエルさんがわからないです。

値上げしたらそっぽを向かれるビジネス

日本は長く「安いことはいいことだ!」を貫いてきました。しかし、この1年、仕入価格の値上げラッシュでやむを得ずメニューの価格改定をした大手飲食店も多かったのですが、そっぽを向かれました。回転ずしのスシローは脱100円寿司がボディーブローとなり、ココイチのカレーは今年2度の値上げもあり、客足が戻りません。一方、先日お伝えしたようにラーメン屋は1000円が当たり前でも客足はコンスタントですし、値上げしない宣言をしているサイゼリアも好調のようです。この違いは何でしょうか?

サイゼリアとカレーハウスCoCo壱番屋(両社HPより)

ズバリ「お得感 VS 100円余計に払っても食べたいもの」。この違いでしょう。私は日本で回転ずしチェーンにはもう行きたくないのです。理由はふぐ刺しと見間違えるほどの包丁さばきで、回転ずしならぬ「回転『寿司シャリ』トッピング付き」はもう勘弁なのです。ココイチのカレーも別に普通のカレーです。どうしてもそこに行きたいカレーではなく、普段使いの腹をみたす為の日本人が大好きなカレー、その程度です。

何年も前にこのブログで外食の危機を述べたことがあります。総菜を買う中食ブームとオンラインレシピによる内食での腕の向上が期待できたからです。私がバンクーバーでグルメっぽいことをしていないのは何処に入っても似たり寄ったりだからです。レストランは社交場、それ以上でもそれ以下でもないのです。サラリーマンランチは安くて工夫をしている個店の方が受けます。主婦は入りやすさでチェーンを選びますが、基本は社交場的意味合いであって回転ずしやカレーでは会話は弾まないのです。インスタ映えというトレンドもチェーン店には逆効果のような気がします。

池袋の街づくり、好かれないヨドバシ出店計画

セブンアイがそごう西武をフォートレスに売却発表した際、池袋西武にヨドバシが出店するとした点について私は厳しく批判しました。最近、豊島区長も苦言を呈したようですし、本件は一筋縄ではないようです。雇用など関係者内部問題を解決すればヨドバシが出店することは可能かもしれません。が、私は池袋を新宿のような雑踏にしたくないのです。ある意味、大きく手を入れられるターミナル駅は池袋しか残っていないのです。

豊島区長はなかなかユニークで文化を街の中に導入することに精力を注ぎこみました。私も「トキワ荘」関連で豊島区と長年、協業しています。池袋は西口が大改革されるところですっかり様相が変わります。一方、東口はビジネスの顔が強く、サンシャインへの導線もあります。その中で「池袋の万里の長城」である西武百貨店は作り替えた方がいいのですが、どうもそんな気はさらさらないようです。ならば一流ブランドだけが入れるラスベガスのホテルのようなプロムナードを建物の中の街として再現するのが良いと思っています。品格とアッパーなイメージです。

池袋は西に立教の大学生、北は日本最大の中国人街、サンシャインは中高生のメッカで東口はサラリーマンとかなりばらつきがある街です。その中で西武池袋にどこの街にもあるルイヴィトンやシャネルの店舗ではなく、圧倒するセンスと気品を持たせたショップ街が欲しいのです。ただ、既存の池袋西武は天井が低すぎます。今、北米のハイセンスな店はダブルシーリングなど天井高をうまく表現させます。2階との吹き抜けといった感じで既存の発想を変えるぐらいのセンスが欲しいですよね、ねぇ、日本のデベロッパーさん。

後記
日本ではクリスマス後の最後の一週間が年の瀬であわただしくなりますが、欧米はクリスマス前の1週間までの今日までが最後のバタバタ劇。来週になるとぐっと静まり返り、街中の車も激減します。クリスチャンではない私にはクリスマスは通過点でしかなく、日本にいない私には年末年始も通過点でしかありません。ちなみにカナダに来てから年末年始は31年間、一度も日本に行っていないです。理由は日本に行っても仕事にならないから。お前も仕事人間だな、といわれるけれどあと10年もすればいやでもゆっくりできるので気になりません。笑

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月17日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。