「金持ち喧嘩せず」になる理由を説明したい

黒坂岳央です。

「金持ちけんかせず」という言葉がある。一部の例外はあれど、概ねその傾向は明らかである。所得水準や学歴、社会的ステータスと攻撃性は確実に負の相関関係にあると言っていいだろう。そうなる理由は様々あるが端的に言えば「余計なことにエネルギーを使わない」というのが本質的なものと思っている。

その理由を論理的に考察したい。

Diamond Dogs/iStock

ケンカは損しかない

人がケンカをする理由は様々だ。ビジネスで不誠実な対応を受けたり、シンプルに難癖や中傷されたりする時にケンカは起こり得る。特に著名人においては、相手からやられっぱなしにすべきではなく、ひどい中傷に対して訴訟という形での反撃で「一罰百戒」の効果を期待するケースも有ることから、「すべてのケンカはムダ」とまでは言わない。

だが、これらは例外的であり、ほとんどの人にとってケンカはシンプルに損でしかない。相手と対応する時間や、時間外にモチベーションを落とすことも含めてムダになる。ケンカに買って得られるものは「一瞬のスカッとした気分」くらいである。こんなものはケンカで被ったダメージの前では、ほとんどその存在を確認できないほど矮小である。

特に社会的に実績がある人ほど、時間あたりの価値は非常に高いため、リターンのないケンカに労力や時間を取られてムダなエネルギーは使いたくない。「嫌われてもいいが、恨まれたくない」という思考で行動することで、相手から恨みを買うようなケンカは最初から買わないし売らない。

期待値が低い

そして社会的に実績を得た人ほど、人生経験は豊富だったり知識が深い事が多い。世の中は多様であり、同じ日本人でも外国人以上に考え方が離れた人も存在する。

金持ちになれるような知識や経験が豊富な人にとっては、たとえば「店員さんの態度が悪い」などは「どうでもいい」という感覚だ。これは自分自身も同じ感覚がある(筆者は大富豪などではないが…)。今でも牛丼屋を利用することがあるが、牛丼屋に求めるサービスは「提供が早い・場所が便利・そこそこうまい」、これ以外には何もない。だから店員さんの態度や、他の利用客の言動がぶっきらぼうでもなんでも気になったことはない。もしも、VIPサービスや店の雰囲気を期待したい局面なら、最初から相応の店を選んでいるしそれでうまくいっている。

激安チェーン店の店員さんの態度に気分を悪くする人は、フルコース店並みに期待値が高いと思うのだ。

付き合う人を慎重に選ぶ

そして一番大きいのは「付き合う人を慎重に選ぶ」ということである。

自分はガラの悪い学校出身だったので、小さい頃は周囲に好戦的な人が多かったように思う。こういう環境では自分もつい、相手の攻撃性に飲まれてしまい売られたケンカを買ってしまうという事が起こりえる。しかし、最初からトラブルの芽をつんでしまえばいい。すなわち、そうした環境を避け、いざトラブルになってしまった時にでも、冷静に話し合いができるような相手以外とは付き合わなければいいのだ。

「そんなことが可能なのか?」と思われるかもしれないが簡単な方法がある。人間関係の構築初期段階で話が噛み合わない相手を避ければいいだけである。話が噛み合わない事が多いということは、

・価値観がズレている。

・言語コミュニケーションのレベルに齟齬がある。

・理解共通性が少ない。

ということなので、「噛み合わない」と感じた時点で、表現上にこやかにやり取りしてそこで関係を終わりにすればいい。最初に会話がうまくいかない人といざトラブルになれば、冷静な話し合いなど望むべくもない。

様々述べたが、社会的地位に関わらずケンカはしないにこしたことはない。

上述した通り、ケンカにメリットはない。時間も労力も取られ、精神は疲弊する。個人的な印象として、自分の人生に不満を抱える人ほど付加価値の小さい、本当にどうでもいいような小さなことに真剣に怒っている印象がある。これは本当にもったいないと思う。ケンカという行為が肯定されるレアケースがあるとすれば、ケンカをネタに注目を浴びることで、時間と労力を上回るメリットを確実に享受できる立場の人物か、残りの人生で建設的なことをする気力がなくなってしまった人くらいではないだろうか。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。