ひろの2023年、10大予想:不景気の上に人間関係がギスギスする社会

年末に「2023年、先が読めない10の問題」をお届けしました。それはどちらかと言えば比較的ピンポイントの着目点が多かったのですが、今年で11回目を迎えた恒例の年初の10大予想はもう少し、グローバルな観点から捉えています。一部、「先が読めない10の問題」と項目が被るものもありますが、その点はご容赦を。

2022年の予想はまずまずの正答率でした。「コロナは消滅する」は消滅こそしていませんが、状況は大きく改善しました。「戦争が起きる」はズバリでこれを当てた人はほとんどいないと思います。「脱炭素のコスト」で物価高も予想しました。「株価の予想は困難」も専門家すら悩ましい状況だったのは御承知の通りです。「日本のプレゼンス」で岸田政権は案外長期政権になるとしましたが、これも今のところは外していません。全然だめだったのが「カナダの不動産は記録的上昇」や「仮想通貨元年」「アメリカ中間選挙、民主党は散々」。オリジナルはカナダの雑誌向けに11月に作成したものですが、一部内容の差し替えをして改良版としてお届けしたいと思います。

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1 混とんとする社会

不景気の上に人間関係がギスギスする。理由は過度のSNS依存が人間同士のリアルのコミュニケーションと連携を妨げたからだ。人々は不満を言い、ごく一部の自分と価値観を共にできる人としか信頼関係を築けない。これは国家間でも同じ現象が起きる。まさに人類の危機ともいえる。

2 ウクライナ戦争は停戦に

複数の国の代表者が仲介役となり、ウクライナとロシアは停戦合意する。戦後処理を巡り社会的圧力に屈し、プーチン氏は退陣する。またウクライナでもゼレンスキー氏が一連の責任をとり大統領を辞任する。新しいウクライナを築くために世界は知恵を絞り、一種の信託統治方式を受け入れることになろう。

3 物価高は春には収まるがコロナ以前には戻らない

今回の物価高の最大の引き金は戦争ではない、物流や原油価格でもない、実はコロナにある。人々の働き方が変わり、労働生産性が落ちたにもかかわらず、賃金だけが上昇したからだ。働き方が変わったというより人々が以前の働き方に戻れなくなっただけだ。賃金は下げられない。唯一の方法は解雇による労働力削減だ。ここには誰もが簡単に踏み込めるわけではない。よって今の物価より下がることはなかろう。

4 2022年の逆流となるマネーマーケット

22年、ドル円は一時150円を突破した。だが、アメリカの利上げ頭打ち感で逆流が始まる。日銀の黒田総裁の退任で更に拍車がかかり、23年には一時120円を切る円高もありうる。日本の株価は円高を嫌うため日経平均はやや弱気の27000円程度が中心レンジとなるか?北米の株価は景気後退に押されるが、その後はある程度回復基調となろう。

5 中国は習近平体制に黄色信号

習氏は22年の共産党大会で盤石の体制を生み出したように見える。が、実は布陣が悪い。多くの取り巻きは能力に勝るというより応援団だ。企業でもそうだが、常に内政に緊張感がなければ国政は失敗する。つまり、習氏は自らの人事政策で自らを窮地に追い込むことになるが未だ気づいていない。中国は監視社会を作り出したが、個人情報の支配が14億の民の真の一体化につながるわけではない。

6 アメリカは脱トランプながらも柱が見当たらず

国内を二分したトランプ派と反対派の攻防はアメリカ国民の遅すぎた「気づき」でようやく落ち着く。24年に迫る大統領選に向け、国民は一旦腰を据えて自国を見直すことになろう。国民的英雄やリーダー不在のまま方向感を探る1年となりそうだ。バイデン氏が立候補宣言をするということは民主党体制の貧弱さを物語るものだ。共和党も大統領候補となる人物の擁立に割と苦戦すると予想する。

7 2023年もずっと岸田氏が首相だ

就任1年目あたりから急速に不人気となり、統一教問題に閣僚の相次ぐ辞任で批判の矢面となっている岸田氏だが、実は経済では23年予想の日米欧経済成長率ではトップ、コロナ対策も落ち着き、外国人の入国でビジネスも活性化した。諸外国首脳とのやり取りもこなし、広島サミットも控える。他に適任がいないというより自民党の派閥組織の自壊といった方がよい。よって岸田氏を引きずりおろす明白な理由はなく、支持率も若干回復する。

8 日本の少子化人口減は危機的状況に

22年の出生者数は77万人台と驚愕の減少数をみる。死亡者数は150万人となり、差し引き73万人もの人口減となるだろう。これは徳島県の総人口より多い。我々は今後、毎年都道府県が一つずつなくなるような人口減を経験するはずだ。理由は分母となる女子が減っているからで出生率が多少改善したところで絶対数の減少に歯止めがかかるわけではない。統計の読み間違えだ。

9 北米不動産は強烈な逆風も根強い人気、日本の不動産は取捨選択時代に

不動産ローンの上昇が不動産価格を直ちに引き下げるわけではない。私に言わせれば表層雪崩であって不動産の真の価値は需要と供給が全てで北米では新築件数は異様に少ない。コメンテーターはここが理解できていない。不動産は株のように短期所有ではないのだから10-15%の変動は下落ではなく価格調整だ。一方、日本は不動産が生み出す将来価値が見いだせなくなってきた。オフィス需要は縮小気味、買い物はネットや専門店、新規住宅着工件数は生まれてくる子供の数より多いなんて正気の沙汰ではない。

10 Web3が変える社会

Web1がインターネットの記事を読む社会、Web2がSNSの社会、それに対してWeb3は分散型自立組織とされる。つまり大手が提供するビックデータに支配される社会からより限られたセキュアな世界を生み出す可能性が出てきたわけだ。アマゾンやグーグルはさようなら、になりかねない。Web3はブロックチェーンの技術が根底にある。そしてそれは国境をも超えるだろう。我々が想像もしたこともない社会が生まれ、アバターと仮想現実の二層構造の社会の実現が一歩、また近づくだろう。

2010年代と20年代はコロナが生み出した断絶期間を含め、恐ろしく連続性がない社会が生み出されたというのが大局観です。皆様には断絶のない素晴らしい2023年となればと祈っております。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年1月2日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。