こだわりはいいが、執着はやめなさい

黒坂岳央です。

筆者が昔、あるビジネスマンから言われてずっと忘れられない言葉がある。それが本稿のタイトルに有る「こだわってもいいが、執着はやめなさい」というものである。この2つの言葉は似ているようで全然違う。こだわりは人生を豊かにする一方、執着は人生をムダに消耗させる。

辞書的な正確な意味合いはさておき、本稿では2つの言葉の違いは次の通りとしたい。

・こだわり:自分に向いている。
・執着:自分以外の他人や社会に向いている。

思うところを話したい。

nzphotonz/iStock

こだわりは人生を豊かにする

こだわり、を別の言葉でいえば「創意工夫」である。

勉強家やビジネスマンは、現状のやり方に満足してしまうのではなく常に創意工夫を巡らせてより良い最善手を追求し続ける。たとえばラーメン屋の店長はよりおいしいラーメンの味を追求し、よりお客さんにとって利便性の良いサービスを考え続けるというイメージである。

そしてYouTube動画や記事執筆の発信活動においては、より良い発信にこだわる気持ちを持ち続けることが重要である。発信する情報や知識のアップデートはもちろん、思わずクリックをしたくなるようなタイトルやタムネイル、デザインや色合いなどあらゆる要素にこだわることで内容は洗練されていく。

実際、筆者は過去数年前に作成したものを見ると、噴飯もののコンテンツばかりだと感じる。今見ると恥ずかしくなるようなクオリティで出してしまっていたと感じる。しかし、これは逆を言えば今そのように差を感じる分だけこだわって改善を意識してきた結果とも取れる。

こだわりは自分の世界だけで完結する。だから自分の仕事や勉強、より良い人生論については徹底的にこだわり、そしてそれを継続する意識を持つことで年齢を重ねるほどに人生は豊かになるのではないだろうか。

執着は停滞の始まり

その一方で他人や社会への執着はできるだけ早く捨てるべきだと考える。ここからその具体的な根拠を述べたい。

執着の1つに「過去に囚われる」というものがある。どんな人でも長く生きる上でたくさんの失敗をするものである。問題は失敗することでなく、失敗したことをいつまでも悔やみ続けることで過去の失敗を現在まで継続させてしまうことである。

筆者は英語を教えているのだが、「もう一度フレッシュな気持ちで挑戦したいけど、過去に失敗してきたから不安」と言われることがある。これは過去の失敗に執着することで心が囚われており、現状に悪い影響を及ぼす実例である。過去の失敗と現状頑張って良い結果を出すことには何ら関係がない。もとい、過去の失敗を踏襲しないよう注意することで、昔より成功率は高まると言えるだろう。

執着の形はこれだけではない。他人や社会に執着する人もすごく多い。「あの人のせいで人生台無しだ」などと言う人はかなり多いが、これも考えを改めた方が人生は豊かになると思っている。

たとえば「親や兄弟がだらしないから人生で苦労した」と50代、60代になって家族を恨み続ける人がいるが、よほどショッキングなトラウマを植え付けられたケースを除けば、実家からの独立後の行動の結果は自分に責任があるのではないだろうか(読者の中に筆者の預かり知れない苦労をお持ちの方がいたら大変申し訳ないのだが…)。筆者も経済的にはかなり苦労したし、父親はアルコール依存症で暴力をふるっていたが、逆にこの経験で得た人生観やハングリー精神は今の自分を作ってくれたと感謝するように途中で切り替えた。

変えられるのは自分と未来だけ

世の中、変えられないものに執着することは徹底的にムダである。過去や他人はその最たるものである。相手の性格にイライラして文句を言いにいっても、本質的に他人は絶対に変えることができないと最初から割り切ってしまい、限られたリソースは自分自身を高めたり、人生を豊かにしたり、これからの未来を創ることにアロケーションする方がいいだろう。そうでなければ、今度は変えようがないことに執着して使ったエネルギーや時間の消耗について未来で嘆くことになる。

今すぐ執着を捨てれば少なくともそのような未来は回避できるだろう。

変えられるのは自分と未来だけである。自分の人生にこだわり、他人や過去への執着を捨てる。そこから真の人生がスタートするだろう。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。