安倍元首相「自衛隊明記」憲法9条改正提言
安倍晋三元首相は、在職中の2017年に「自衛隊明記」の憲法9条改正を提言した。すなわち、憲法9条1項2項を残し、これに加えて、3項として自衛隊の存在を憲法上明記する憲法9条改正案である。
その理由は、自衛隊の存在を憲法上明記することによって、「自衛隊違憲論争」に終止符を打ち、名実ともに自衛隊の憲法上の地位を確立することにあるとされた。安倍元首相は「自衛隊は違憲かもしれないが、何かあれば命を張って国と国民を守ってくれというのは余りにも身勝手で無責任だ」と述べていた。
確かに、憲法9条1項2項の条文のみを文字通り読めば、自衛隊は「戦力」であり憲法違反とも解釈できよう。現に、日本の少なくない憲法学者は今も自衛隊は憲法違反と解釈している。共産党など一部の野党も同じ主張をしている。
このような解釈や主張がされるのは、憲法9条2項で「戦力不保持」と「交戦権否認」を明記しているからである。しかし、1946年に米軍の占領下で制定された現行憲法には、国の存立と国民の生命、身体、財産を守る安全保障の重要性が欠落している。その象徴が憲法9条であると言えよう。
そのため、現行憲法には国の自衛権と自衛隊に関する規定がなく、国の安全保障を否定するかのごとき憲法9条を、今後も解釈改憲だけで運用することには無理があり限界がある。
これまで、如何なる世論調査でも、党派を超えて全国民の圧倒的多数が、日本の防衛と災害救助活動など、その役割を高く評価している自衛隊について、憲法上明確に規定し、憲法解釈上の疑義をなくし、自衛隊の憲法上の地位を確立することは重要である。
筆者の「日本国を守る憲法9条改正試案」
筆者は、「日本国を守る憲法9条改正試案」として下記条項を提案する。
憲法9条3項の1:前項の規定に拘わらず、日本国民は、日本国の主権と独立を防衛し、日本国民の安全を確保するために、内閣総理大臣が指揮監督する実力組織である日本国自衛隊を保持する。
憲法9条3項の2:日本国自衛隊は、自衛のために必要な防衛力を保持し、急迫不正の主権侵害に対し、国際法上の個別的又は集団的自衛権の行使を妨げられない。
憲法9条3項の3:日本国自衛隊は、国際社会の平和と安全を維持するために、国際平和協力活動を行う。
憲法9条3項の4:日本国自衛隊の組織、運用、国際平和協力活動等に関する事項は法律で定める。
日本国を守る憲法9条改正は日本の重要課題
このように、自衛隊を憲法上明記することは、憲法解釈上の疑義をなくし、自衛隊に憲法上の国家機関としての正統性を付与し、自衛のための防衛力の保持を憲法上根拠づけ、自衛官としての誇りと、日本国民の自主防衛意識の醸成など、日本国の安全保障上きわめて重要である。
2022年2月から長期化する核保有国ロシアによる国際法違反のウクライナ侵略、東シナ海、南シナ海における核保有国中国の力による現状変更の試み、核保有国北朝鮮による核開発や弾道ミサイル発射などの脅威に対応するためにも、日本国を守る「自衛隊明記」の憲法9条改正は、安全保障上の日本の重要課題と言えよう。