詐欺被害に合わないための「思考法」

黒坂岳央です。

近年、詐欺の手口は非常に巧妙化している。かつては「こんなの誰が引っかかるんだ?」と思うような稚拙でバカバカしい手口を大量に送信することで、コンマ数%のあたりを引くようなものが多かった。

しかし、最近の詐欺は非常に高度になっており、それなりにリテラシーの高い人でも引っかかってしまうものがある。たとえば宅配業者や金融機関を装ってショートメッセージにURLを送り、そこからフィッシング詐欺などである。

筆者が個人的に心がけていることを取り上げたい。

takasuu/iStock

1. 世の中に「割の良い話」はない

昨今、闇バイトが大きな話題となっているが、そこで頻繁に話題に上がるのが「受け子」というキーワードである。受け子とはオレオレ詐欺などで現金を受け取る仕事だ。多くは生活に困窮した若者であるが、中には60代が受け子をやって、同年代の相手からお金を受け取るということも起こっている。

だが冷静に考えれば受け子の仕事はまったく割に合わない。捕まれば当然、懲役刑となり実名報道で一生消えないデジタルタトゥーが刻まれてしまう。受け子の仕事は「日給○万円!」と景気のいい数字が取り上げられ、自分で考える力のない人は「なんて割の良い話だ!」と飛びついてしまいがちだ。

だが割の良い話を、不特定多数に発信する人は世の中に存在しないという理解をすることである。現金配りもほとんどがフィッシング詐欺や高額情報商材への販売へ繋げられる。あまりにいい話を聞いたら、常に疑うくらいの慎重さが求められるだろう。

2. いい人すぎる相手に注意

あまりにもいい人すぎる人には気をつけた方がいい。脳科学者の中野信子さんは「サイコパスの特徴として、あまりにも魅力的でいい人すぎる相手」と言われている。この話はすごくよく理解できるのだ。筆者にも経験がある。

特定を防ぐために詳しくは書けないのだが、筆者はまだビジネスのことをよく分かっていない駆け出しの時期に、人からの誘いであるビジネスセミナーに参加した。その主催者はとても雄弁に大きな夢を語り、「ここにいるみんなで経済的事由を手に入れよう」といい、食事会の際にマンツーマンで話をしたがものすごくいい人だった。

常に笑顔で余裕の態度、超然たる雰囲気は常人離れしていると感じた。だが、どこか普通ではない。あまりにも完璧すぎ、あまりにもいい人すぎるのだ。「この人はなぜ、まったく自分の得にならないようなことを不特定多数に提供するのだろう?」という違和感があった。

色々と経験を積んだ今ならすぐわかるが、当時は第6感のような感覚的に「この人は…なんか”怖い”」と感じて彼の提供する商品サービスの購入を控えた。時は流れて数年後、ひょんなことから彼の名前を調べてみると詐欺で集団訴訟を起こされていた。「やはり」と思った。

「どんな人でも自分の得にならないことは、絶対にやらない」くらいに穿った見方をする方がいい。筆者もビジネスは自分のためにやっている。結果として顧客や取引先、社会の役に立っているという話に過ぎずすべては自分のためだ。話を戻すが「この人はなんでこんなことまでするのか?」を感じさせる、「異常すぎるほどいい人」には気を付けたほうがいい。相手はあなたから何かを取ろうとしている可能性がある。

3.流されない

詐欺師はコミュニケーションの達人である。相手の不安、安心感を心理学的観点からも熟知しており、組織的にビジネス的に詐欺を働くことが多い。過去に詐欺組織の監視カメラが公開されて話題を呼んだが、彼らの内部犯行やコミュニケーションを聞いて思ったのは「まるでできるビジネスマンが働く大企業みたい」という印象である。極めて組織的だ。

そんなコミュニケーションの達人に迫られれば、自分の頭で考える力がない者はどうしても流されそうになるだろう。相手はプロだ。しかし、自分をコントロールしようとする相手に流されてはいけない。おかしな点があればすぐに調べれば事前に被害を回避できる。何かしらオファーをもらっても、煽られても、その場では即決せず持ち帰って後日回答するという冷静さは持っておくべきだろう。

4.送られてくる情報を信用しない

宅配業者を装って「荷物の再配達依頼URLを送ります」や、銀行を装って「パスワード設定をしてください」といったEメールやショートメッセージが来ても信用しないことである。

基本的に相手側から送ってくるお知らせは信用せず、パスワードリセットをしてくださいとあるなら、ブックマーク機能やグーグル検索経由でオフィシャルサイト上で真偽を確かめる。また、件名タイトルでグーグル検索をして確認するのもいい。詐欺師は大規模に一斉送信をしているので、誰かが報告を上げていることが多い。面倒だがこのくらい慎重でなければ、いつか引っかかってしまうだろう。

「今はこういう詐欺が流行っているから気をつけましょう」という呼びかけだけでは、新種の手口に対応できなくなってきている。それだけ詐欺の手口は高度かつ変化も速い。そんな中、「詐欺に合わない思考法」そのものを持っておくことで、被害にあう確率を減らすことができる。手口は違えど、詐欺の本質はいつの時代も変わらないためだ。参考になれば幸いである。

■最新刊絶賛発売中!

■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

YouTube動画で英語学習ノウハウを配信中!

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。