なぜ日銀総裁になりたいと思わないのか?

日銀の次期総裁に元東京大学教授の上田和男氏(写真)が就任する見通しとなっています。

植田和男氏NHKより

本命と言われていた現在の副総裁の雨宮氏は総裁就任を打診されたものの、本人が固辞したとされています

これは想定外の出来事です。

サラリーマンの仕事のモチベーションは、収入とポジション、そしてやりがいです。日銀に入行する人たちは年収以上に、やりがいを求めて仕事をしていると思います。そしてポジションが高くなれば、よりやりがいのある仕事ができると思うのではないでしょうか。

日本銀行に新卒で入行し、順調にエリートコースを進んできた雨宮氏。当然のことながら、サラリーマン生活の最終目標は、日銀総裁就任にあったはずです。

それを打診されたにもかかわらず、断ってしまう。その裏にはどんな理由があるのでしょうか。

文春砲のようなプライベートなスキャンダルもあるようには見えません。また、本人やご家族の健康にも特に問題があったという報道はされていません。

となると、やはり黒田日銀総裁が10年間にわたって行った異次元緩和の金融政策の後始末をしたくないということでしょうか。あえて火中の栗を拾うことを避けたかったのかもしれません。

今回総裁就任を断れば、同じチャンスが訪れる事はもうないでしょう。

それほどまでにやりたくなかったということでしょうか。

今回の日銀総裁人事は順当にいけば、財務省ではなく日銀出身者が総裁に就任する順番です。しかし、雨宮氏以外の総裁候補と言われた日銀出身の中曾元副総裁、山口元副総裁も就任する事はありませんでした。

日銀内部の人が、そのような行動をすればするほど、日銀の経営に関する隠された重大な問題点があるのではないかと穿った見方をしてしまいます

今回のサプライズ人事はこれから想定外の金融マーケットの混乱が起こる予兆のような気がして心配です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。