ガーシー氏に優しい日経新聞:編集委員の記事としてそれはないだろう

ガーシー参議院議員に対して懲罰委員会で「陳謝」の処分が下されました。想定通りであり、この陳謝の要求もスルーされる可能性が高く、その場合には除名が次に待ち構えるとされます。

今回の処分については懲罰委員会のみならず、その背後の議員や各党の思惑を含め、慎重な対応だったと思います。処分の内容については様々な意見があります。その中で特に慎重に考慮されたのが「選ばれた人」という視点です。

では「選ばれた人」がその期待に反し、何もしない場合、それでも有権者(選んだ人)の意思をどこまで尊重するのか、その対応がそれほど難しい扱いなのか、私にはやや解せないのです。選ばれた人はその期待を背負い、そこで責務を行い、その対価として報酬を得る、この一連のギブアンドテイクを選挙を通じて承認し、期待しているわけです。単に議員を選んだわけではないのです。有権者の代理人なのです。ところが報酬だけ得て、国会に出席せず、その責務を果たさなければ給与泥棒なのであります。これは子供でも分かる話です。

日経の編集委員記事に「ガーシー氏、除名以外の手はないのか 歳費凍結も選択肢」とあります。この編集委員は「『職場放棄』は大いに問題だが、議会制民主主義の観点からいえば、有権者が選んだ国会議員の議席を剝奪するのは相当に重い」とし、歳費凍結などの代案もあるのではないか、と主張しています。ではこの編集委員に伺います。「記事における『選んだ』という行為の定義は?」「重い判断はなぜダメなのか?」です。過去の事例があろうがなかろうが、関係ないのです。前例主義的発想を持ち出す必要はないのです。

私はこの編集委員の考え方は極めて折衷、打算的発想だとみています。もちろん、考え方として様々な方法論を論じるのは重要です。ですが、数ある方法論を一通り見た上で最終的に妥当な判断はどうだろうか、と結論づけるにあたり、歳費凍結という帰着は賛同しにくく、大手新聞社の編集委員の記事としてそれはないだろう、と思うのです。少なくとも私には百害あって一利なしだと考えています。

仮に歳費凍結とします。すると議員の身分は何でしょうか?「議員(休職中)」とでもなるのでしょうか?その場合、政党補助金はどう算出しますか?勢力図はどうでしょうか?将来、何もしない議員を作る公然たる理由にならないでしょうか?それこそ、悪い前例を作るのです。私には何をどうひっくり返しても税金泥棒以外に思いつかないのです。

日経新聞はガーシー氏に優しい?

もちろん、ガーシー氏もああ言えばこう言う方なので「もっとひどい泥棒は他にもいる」ぐらい反発するでしょう。しかし、国会には規律があります。例えば国会審議や委員会などに遅刻は厳罰で大目玉を食らうのがこの国会のしきたりです。つまり、独特の世界と独自の縛りの中で議員はルールに基づき、活動をすることを承諾し、政党政治の枠組みを支えることで一定額の報酬を頂けるのです。政党間のバランス、意見調整、委員会など議会のことのほか、有権者とのコミュニケーションも必要です。選んでくれた人へのフィードバックですね。にもかかわらず、当選してから一度も登院しない、外国にいたまま帰国すらしないのでは話にならないのです。

ところでガーシー氏が除名になった場合、彼はどうするのだろうか、という疑問があります。私が想像するのはいつかはパスポートが切れるのでその時までが精いっぱいのあがき、だとみています。除名になった時点で警察が動き、起訴される公算はあるでしょう。それを事由にパスポートの更新が出来なくなり、いつかは不法滞在となります。あとは外務省とアラブ首長国連邦の話し合いになると思います。

私はガーシー氏に触れたくもないし、彼の言動にびた一文の価値もないと思っています。「裏側を暴く」ことが格好良い、目立つ、高い関心を持たれるという風潮は「文春砲」が作った悪い社会風習だと思います。それを暴露系ユーチューバーが真似をしたという点で品格を極めて損ねていると言わざるを得ません。また、受け手の方も基本的にのぞき見の悪趣味そのものです。「家政婦は見た」そのものなのです。どっちもどっちとも言えますが、こういうレベルのお話は私の本望ではないのですが、日経の記事があまりにも癪に障ったので一意見を述べさせて頂きました。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月22日の記事より転載させていただきました。