日本の高速道路は無料化すべきか?:割と経営が厳しくなる道路網

日本の高速道路の無料化の議論について考えてみたいと思います。異論は多いと思いますが、個人的には無料化すると言い続けながら全くできない政府の方針に騙されたぐらいに思ったほうが良いのかと思っています。つまり、いつまでたっても無料化できないし、する必要もないかもしれないと思っています。

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高速道路の話の前に海外の一般道路の話をしたいと思います。私がカナダで車を運転する時、あまりよくないとは思いますが、街中など低速で走るエリアでは車線からなるべくはみ出さない範囲で割とジグザク運転をすることがあります。それは道路に穴ぼこや段差、割れ目などが至る所にあるため、クルマがパンクしやすいからです。特に当地では道路にあるマンホールが道路面と高さが合っていないところが散見されます。(マンホールの方が低いです。)そんなところに車を入れてしまえば衝撃音と共に「あちゃー」と思わず声が出てしまいます。

例えば私の家のすぐそばの幹線道路で3年ぐらい前に道路を掘り起こして水道管工事をして、その埋め戻しをしたのですが、へたくそでアスファルトをしてからわずかの間に沈下してしまいました。それにも関わらず、その穴を均す工事をやる気配は全くありません。クルマを見ているとそこを通る時、すべての車がガクンと大きく揺れます。

こんな話は実は欧米どこでも当たり前です。かつてメキシコで長距離バスに乗った際にはバスがやはり、道路の穴ぼこを避けて走るため、右へ左へ実に乗り心地の悪い思いをしました。英国でも道路の補修は税収が足りなくて放置されているところだらけでパンクの苦情は非常に多いとされます。

さすが、高速道路になるとカナダでもアメリカでも危険ですので舗装が乱れていることはあまりないのですが、アメリカでは高速道路の橋が落ちたことも何度かありました。その点、道路のきれいさでは日本は世界一と称しても過言ではないのです。そして、年度末の3月頃になるとあちらこちらで道路の工事を行ったりします。ある意味、やり過ぎだろうというぐらいのレベルであります。

そのようなハイクオリティつまりはハイメンテナンスのお国柄である日本に於いて欧米の道路事情と比較するのはおこがましいのですが、石ころ一つ飛ばしてフロントガラスに傷が入っただけでクレームする日本に於いて高速道路は恒久的に有料化するほうが良いのではないかと思うのです。(当地では石飛びによるフロントガラスのひび割れは珍しくなく、強いひび割れでなければガラスの穴埋め修復を保険会社指定の修理工場で無料で直してくれます。)

日本政府は現在の2065年までの高速道路の有料期限を2115年まで50年延長しました。今生きているほとんどの人はこの無料になるかもしれない恩恵にはあずかれないということです。しかし、本当に無料にすべきか、と言えば考え方一つでどうにでもなると思うのです。

例えば我々が電車で旅行に行く時、普通列車で運賃だけ払って時間をかけていくのか、特急料金を払って急いでいくのか、と同じ意味だとしたらどうでしょうか?信号のない道をひた走れる高速道路は料金を払っても価値があるとすれば皆さん、当然、お支払いになります。

もう一つはやはり、料金を払ってでもメンテがしっかりしているところを走りたいと思うのではないでしょうか?無料は無料のレベルの質であり、当局のどこかの部門でそれなりの歳出を捻出せざるを得ないのです。では、政府のお金が今後も安泰に道路補修のために予算を確保すると見通せるか、と言えばその確約は出来ないでしょう。少子化で税収が減れば日本の道路も欧米と同じようにボコボコになるかもしれないのです。それを考えると受益者負担である高速料金はあってもよいのかな、と思うのです。

三つ目に今後、自動運転自動車が当たり前になった場合の社会変化対応です。仮に近い将来、ほぼすべての車が自動運転になったとしましょう。その時、クルマは個人所有するのか、シェアするのか私には見通せないのです。仮に日本の人口が今後もどんどん減り続けるとなれば自家用車もトラック輸送も減るでしょう。配達にはドローンも一般化しそうです。その時、日本の道路は割とガラガラになるのではないか、そして信号システムも交通量によるAI自動制御が導入されれば移動時間の大きな短縮につながるでしょう。

こう考えると先々、日本の高速道路網は割と経営が厳しくなると思うのです。故にそれに追い打ちするように無料化すれば誰がどうやってメンテをするのか、新しい技術や安全性をどう担保するのか、という疑問は出てくるでしょう。

もちろん、欧米が無料でなんで日本は有料のままかというご意見はあると思います。私は逆で欧米はなんで無料なんだろう、という見方があってもおかしくないと思うのです。カナダでは新しい橋を架けた際に「有料橋」にしたことがあります。超不評で当時、多くの人はわざわざ遠回りをして無料の橋を渡っていました。現政権になって無料化にしてしまった経緯がありますが、こちらではそもそも料金を払う意識がなく、道路は無料という既得権に近いものがあるのです。一方で大都市、例えばNYでも香港でも一部のトンネルなどでは料金を払うのが当たり前だと人々は必要な費用だと受け止めると思います。

私は無料にする計画そのものが机上の論理と現在の社会や交通量が続く前提の上の計画であり、今後の自動車社会の変化次第では全く想像ができない事態が生じるのだと思います。ならば、今から2115年までは有料化するというアナウンスではなく、社会の諸事情の変化を見ながら2065年を目途に柔軟に考えるとすべきではなかったかな、と思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年2月23日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。