日経平均が4万円を超える日は来るのだろうか?:2020年代は激変期

「記録は破るためにある」とするならば1989年の日経平均38915円を超えない日はない、と思うのですが、33年以上経ってもその背中は見えてきません。株価はある程度、物価に連動するので物価も上がらない、元気もない、企業の成長も今一つという状態が33年続いたと言いたくはないけれど、少なくとも株価はそれを映し出しています。

日経に「先細る日本の『ノーベル賞人材』 30年代に受賞者急減も」という記事があります。以前から指摘されていたのが、日本人ノーベル賞受賞者は将来、減るのではないか、という点です。様々な意見があるのは承知しています。が、1点、確実時に言えることがあるのです。それは少子化で博士号取得をしようとする研究者の絶対数が確実に減るということです。

いわゆるフェアシェアの理論に立って考えてみます。博士号取得者数は2006年をピークに漸減していますが、これは簡単に説明できます。第二次ベビーブームのピークが1973年。過程博士は29歳、論文博士が40-42歳頃になれるとされますので若干ずれはありますが、出生者数と博士号取得者数は概ね一致しています。そしてご存じの通り、その後は少子化まっしぐらですので博士号取得者も同様に下がってきています。

人口減は様々な方面にマイナスの影響があるのですが、研究開発能力も当然減退するのです。次いで、日本経済が極めて深刻なデフレ時代に陥った際はマネーの価値が下がるだけではなく、才能がある人が浮かばれなかった時代でもありました。海外の大学に招聘されて日本を去った人、研究を辞めた人、研究開発費が少なくて成果が上げられなかった人、企業の研究部門に移った人が生じた結果、真の意味での研究者の成果が減ったともいえるのです。研究者が少ない、論文が少ない、となれば当然ノーベル賞の受賞確率も下がります。(フェアシェアですから世界の研究者が同じ能力で同じチャンスがあると仮定しています。)

ノーベル賞の例を出しましたが、人が少なければ企業家のチカラを含め、経済のパワーはどうしても落ちてしまうのは避けられないとみています。例えば3か月ごとの発表される需給ギャップは10-12月期はコロナでマイナスに落ち込んで以降、ようやくプラス転換の期待がかかります。22年7-9月がマイナス0.06%でしたので国も開いたしプラス転換はあり得るし、仮に不達成でも1-3月では確実にプラスになるはずです。ただ、やはり、その回復力は国内需給より訪日外国人によるところが大きいし、肝心の設備投資が心持てない状況にあるとされます。自動車産業などが半導体不足で足踏みをしているのではないか、というものです。

日本経済を語ると必ずぶち当たるのがプラス部分とマイナス部分の相殺状況でマイナスインパクトが大きくなる局面が増えている点です。

日経平均が4万円を超えるためには何が必要でしょうか?切り口はいくつかあると思いますが、ごく単純に考えれば日経平均採用銘柄225社の利益が上昇し、一株当たり利益(PER)を増やし、株を理論的に買いやすくし、株価がぐんぐん上昇することです。ではそれは可能でしょうか?

ここに植田新日銀総裁のポジションが絡んできます。黒田総裁時代に異次元の緩和を継続し、やり過ぎて弊害が出た一面にETFとJ-REITの購入があります。日銀がETFを通じて間接的に購入した企業の株式数は突出しており、ごく一例としてファーストリテイリングは20%、アドバンテストは25%、TDKも20%もの株式を握っています。これらの企業はもちろん、日経225採用会社です。

植田氏はこの日銀が抱え込みすぎたETFをどう解消するかがもっとも難しい問題だと言っています。しかし、いつかはやらねばならない時が来ます。通常、そのタイミングは日本経済に陽が昇るころでようやく盛り上がった頃に冷やし玉のようにして市場で売却していくのが一般的なシナリオです。とすれば日経平均を4万円に上げる前哨戦がこの日銀との攻防ということになります。これはたやすくありません。

東京証券取引所 Wikipediaより

日銀も金融政策の正常化に時間を要すと思いますが、少子化も待ったなしで時間経過は日本経済にとってボディブローのように不利な面が見えやすくなるのです。

では日本がリーディングセクターとなれる産業群がどれぐらいあるでしょうか?半導体装置産業が強いのは知っています。ではその次は、と言えばなかなか思いつかないのです。個人的にはプラントや海外建設(いわゆる総合エンジニアリング)は地味ですが強い引き合いがあると思います。また商社機能とされる専門的ノウハウ+規模の取引量+資金調達能力を商社に限らず、一般企業もチャレンジしてみたら面白い成長が期待できるかもしれません。日本企業は一般的にお金を貯め込み過ぎで海外株主からも強い批判があります。それを投資に回すという動きが出れば少子化における日本でも企業ベースでは成長が期待できるでしょう。

もう一つは円安=株高というイメージを変えられるかだと思います。基本的に自国通貨を安くするのは新興国によくある算段ですが、世界のリーディングカントリーである日本がそんな情けないことを言うようではリーダー失格です。個人的にはざっくり100-110円程度が日本の為替の実力ではないかと思います。その点では現在の水準は2割円安だと思います。これを乗り越える体力と経営力をつけてくればいつかは4万円は通過点になるのでしょう。

2020年代はある意味、激変期ですので大きな変革の中で日本がうまく脱皮できればよいと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年3月7日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。