「2回転営業」の高級飲食店が失った顧客満足度

今週18時に一斉スタートの飲食店に出かける機会が、東京と京都で2回ありました。どちらもカウンターでいただく和食のお店で、予約困難な有名高級店です。

2つのお店の違いは、2回目の営業の有無です。東京のお店は、20時半からも別のお客様の予約がある「2回転営業」でした。

次の予約が後ろに入っているせいか、こちらのお店は、スタート時間が厳格で、少し遅れてきた人を待つまでもなく、見切りスタートしました。

同じグループの同伴者が遅れている客に対して、親方が「あまり遅れると、お料理が途中からになりますよ」と不機嫌そうな強い口調で伝えていました。

これで来店客全体が、何だかカチンと凍りついたような雰囲気になり、テンションが下がりました。

もう1つの京都のお店は、18時からの営業だけで、後の時間の制約のないお店でした。

こちらも、渋滞で20分近く遅れてくるカップルがいました。既に定時に来ている他の客に事情を説明して、スタート時間をズラしました。

待っている他の顧客が不機嫌にならないよう、スタッフが会話で盛り上げ、カウンター席に不思議な一体感が生まれました。巧みな対応に、場が盛り上がります。

どちらもお料理は最高で、言うことない素晴らしさです。しかし、お店を後にする時の満足度は、後者の京都のお店が圧倒的に高く感じました。

京都のお店は、また次回も予約することにしましたが、東京の2回転のこちらのお店は、次回の予約はしませんでした。

一斉スタートのお店に遅刻してくるのは、明らかにマナー違反です。私は必ず時間までに到着できるように出かけるようにしています。

しかし、電車の事故や渋滞、あるいは個人の事情による不可抗力で、遅刻してしまう可能性はゼロではありません。

そんな顧客の都合に柔軟に対応できる懐の深いお店は安心できます。しかし、後ろの時間の制約から、顧客に緊張感を強いるお店は、気分が良くありません。

「2回転営業」で時間の制約がキツくなるのは、致し方無いとは思います。

でも、超高級店であれば、遅れてきた客に対しせめて精神的な負荷を与えるような対応は避けて欲しい。

少なくとも私は、飲食店に美味しいものを食べて飲みたいだけではなく、その場の良い気分を味わいたくて通っているからです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。