政治家たちは「戦場へ行く世代」ともっと議論をすべきだ

田原総一朗です。

日本の岸田首相が、ウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。そして、日本がウクライナを支援することをアピールした。その目的はいったい何か。

もし岸田首相が、本気で「停戦」への調停を考えるのなら、ゼレンスキー大統領だけでなく、プーチン大統領とも会うべきだろう。ましてや土産に、「必勝」しゃもじを持っていくなど論外だ。

3月24日の「朝まで生テレビ!」は、国際情勢について議論した。戦争が続けば被害者は増えるばかりである。この戦争を停めるために、日本にいったい何ができるのか。一方、「台湾有事」は必ず防がねばならない。

政治家、ジャーナリスト、専門家が揃って活発な議論となった。もちろんみんな真剣に、「平和」を考えているからこそだ。そんな中、評論家の小沢遼子さんの発言に、僕は心を揺さぶられた。

小沢さんは僕より3歳下の1937年生まれ、7歳で東京大空襲を体験している。この日の出演者の中で、あの戦争を知っているのは、小沢さんと僕だけだ。

「戦争が起きたら、(島国の)日本人は隣国に逃げることができない。戦争がやれる国とやれない国があって、日本はやれない国だと思います。今日議論をずっと聞いていると、緊張感がない気がする」と小沢さんは言った。

そして、毎日鳴る空襲警報や、防空壕を掘った体験を話してくれた。僕には小沢さんの気持ちがよくわかった。小沢さんが言う「緊張感」とは、「リアリティ」と言い換えてもよいと思う。

議論をするのはもちろん大事だが、武器や戦法の話に「リアリティ」がなくなるのは、とても恐ろしいことだと思う。死への恐怖がない、ゲーム感覚になってしまうからだ。

対して出演者の中で最年少の1987年生まれ、起業家の安部敏樹さんの言葉にも、納得させられた。「有事のとき戦場に行くのは、基本的に若い人だ。それなのに実際決めているのは高齢者世代だ。こういう議論にもっと若い世代が入るべき」安部さんはこう主張した。

僕は安部さんの言う通りだと思った。これからの日本で生きていく世代、いざ有事となったら戦場へ行く世代に、きちんとした説明もなく、上の世代によって、日本の未来に関わる重要事項が決められてしまう。

経済学者の成田悠輔さんが、「高齢者は集団自決を」と発言して物議を醸した。不穏な表現はどうかと思うが、彼ら世代の苛立ちはよくわかる。

だが、番組終盤に、キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之さんはこう語った。「今までは国の代表が、国際会議でルールを決めて世界を動かしてきた。しかし、若者がネット上で国境を超えて集まり、国を動かす例が出てきている。インターネットで世界が一つにつながっている時代、国も動かせる時代になってきている」ほんとうにその通りだと思う。

人間は戦争をやめられない愚かな存在なのかと絶望するときもある。しかし、今の時代は国境を超えて、自由につながることができる。安部さんのような若い世代が、国を超えて連携すれば、戦争もしようがなくなるではないか。

そんな未来を想像し、明るい気持ちになって番組を終えた。やはり人と話をすることは、僕の最大の栄養源なのだ。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2023年3月31日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。