イギリスのチャールズ国王の戴冠式(来月6日)に、秋篠宮ご夫妻が参列されることが閣議で正式に決まった。ロンドンに2泊の4日間で、来月4日午前に政府専用機で出発し、現地時間5日午後にバッキンガム宮殿で国王主催のレセプションに出席し、6日にウエストミンスター寺院で行われる戴冠式に参列される。
これに対して、両陛下が招待されたのだから、皇嗣殿下を派遣するのは失礼だとか、愛子様に行ってもらえばいいとか、非常識な意見がネットでは出ているのは、残念なことだ。
チャールズ国王の戴冠式については、別の機会に論じた記事もある。
また、来週には『英国王室と日本人: 華麗なるロイヤルファミリーの物語』(小学館)という本を宮内庁元式部官の篠塚隆氏とも出して詳しく紹介している。
一言でいうと、今回の戴冠式に両陛下が参列されるというのは、相手国の日本の皇室に対する扱いとのレシプロシティ(reciprocity、互恵性)とか、他の国への対応とのバランスも考慮すればあり得ないと思う。
まず、平成の陛下の即位礼には、チャールズ皇太子とダイアナ妃が参列した。また、今上陛下の即位の大礼にはチャールズ皇太子が単独で参列している(カミラ妃は飛行機が苦手なので弾丸外遊は苦手らしい)。また、昭和天皇の大喪の時はフィリップ殿下だった。
外交上の レシプロシティは、個人に帰属するのでなく、地位が問題だ。だから、皇太子が来たら皇嗣殿下でなくてはならない。
これまで、日本の皇室がイギリス王室の戴冠式にどう対応してきたかというと、1902年のエドワード7世の時は小松宮彰仁親王が、1911年のジョージ5世の時には、東伏見宮依仁親王が出席している。いずれもフランス留学組で、王侯貴族の集まりにふさわしい人選だった。
エリザベス女王の父親であるジョージ6世の戴冠式が1937年に挙行されたときは、昭和天皇の弟である秩父宮殿下ご夫妻が出席された。妃殿下はロンドン生まれ・米国育ちの帰国子女だからうってつけだった。
そのときの、駐英大使は吉田茂で、彼が頑張ったお陰かどうかは知らないが、戴冠式ではすべての王侯の中で第一位の席を与えられていたのである。
終戦後、1953年に行われたエリザベス女王の戴冠式には、当時19歳だった皇太子殿下(現上皇陛下)が出席された。戦時中は敵対関係にあった、英国をはじめとする欧州王室との関係を修復したいということだけでなく、皇太子の国際化教育の一環でもあった。
それから、また、改めて論じたいが、戦後の日本と英国の王室の交流では、レシプロシティの観点から言えば、非常にアンバランスになっている。
1970年に昭和天皇が訪英されて、1971年にエリザベス女王が訪日されたが、平成年間には、日本から三回、訪英しているのにエリザベス女王はついに訪日されなかった。
さらに、令和になって女王の葬儀に両陛下が参列されたから、四回連続、日本から出向いていることになる。
エリザベス女王は、カナダ23回とか英連邦は別にして、ドイツに7回、フランスや米国に7回、タイやネパールに2回も訪問されているのと比較しても少ない。
また、英国を訪問したときも、とくに厚遇ではなかった。女王の在位60周年のときは、食事の時に女王の隣ということが強調されたりするが、最上位の右側はスウェーデン国王で、左の席だから2位だった。
この悪循環を解消するには、まずチャールズ・カミラ両陛下に訪日して頂いて、大歓迎し、両陛下が訪英されるときには同等の扱いを要求して、互いに尊重する好循環をつくりだすくらいの知恵は出したいものだ。