仕事から得られる「お金以外」の3つのメリット

黒坂岳央です。

「仕事=生活費を稼ぐため」これは昔、筆者が持っていた思考である。確かにこれは事実かもしれない。過去記事、3億円もらっても今の仕事は続ける?でも触れたが実際多くの人にとっては「仕事は生きるために仕方がなくするもの」という位置づけになっている。

だが、最近よく感じることとして、仕事は明らかにお金以外のメリットも複数あるし、それらは仕事以外からは決して得ることができないものだということだ。筆者の視点で思うところを取り上げたい。

maroke/iStock

承認欲求

人間の欲求はあの有名なマズローの欲求段階説で表すことができる。これは非常に面白く、本当に子供から老人まで老若男女あらゆる人に通じる話だ。

人とコミュニケーションを取っていると、相手の悩みはどの階層に位置するものか?が透けて見える。人の価値観は多様だが欲求は極めてシンプルであり、ほぼすべての悩みはマズローで説明が可能だ。

仕事をすることによるメリットの1つ目は承認欲求を満たすことができる点である。相手から「ありがとう」「助かりました」と自分の仕事を通じて感謝の言葉をもらうことができれば、自己愛が満たされる。

SNSでは金持ち自慢や実績自慢をする人をよく見るが、これはあまり健全とはいえない承認欲求の満たし方に思える。自慢をすると相手は笑顔で聞いても、内心では要らぬ嫉妬を生むし同じ相手に過去にした自慢はもう通じないからいずれ必ず枯渇するためだ。

だが仕事を通じた承認欲求は嫉妬の代わりに感謝を生むし、報酬も得られる。Win-Winの関係で健全かつ持続可能性でもある。

自己実現欲求

次は自己実現欲求だ。人生でやりたいことに挑戦する。自分の可能性を試すといった欲求がこれである。正直、ほとんどの人はこの段階に至ることは難しいと思っている。なぜならその一つ下の階層である承認欲求を乗り越えるのは至難の業だからだ。

これは過去記事でもよく取り上げている事例の一つだが、地元の高齢経営者は年収4000万円くらいあるのに、ずっと承認欲求で躓き続けている印象を受ける。高級外車を乗り回し、夜のお店で羽振り良く後輩経営者に奢り続けているが、裏では自慢がウザいよねと陰口を叩かれている。一生懸命やっているのに気の毒に思う。

だが、承認欲求を満たすことができれば、人は自然と次の自己実現欲求に歩を進めることになる。この段階に来れば仕事は楽しくなる。人生で本当にやりたいこととか、楽しいことで毎日を過ごすからだ。その中で少しでも技術や知識の上達を目指したりする。こうなるともはやゲーム感覚だ。

筆者の親戚の工学博士号を取得した人物は、趣味が論文を読んで勉強することだという。仕事でもプライベートでもとにかく研究し続けている。これ以外の娯楽は知らないという。理想的な人生だろう。

自発的な勉強

そして仕事を頑張っていると自然に勉強をすることになる。逆に仕事なしでは自発的な勉強はかなり難しいと言わざるをえない。

「必要は発明の母」という言葉がアメリカにはあるが、「仕事は勉強の母」という言葉に置き換えることができるだろう。仕事で新たな知識や技術の必要性に迫られれば、必然的に勉強せざるをえない。そうなればビジネスマンとしてもレベルアップができるし、何より勉強自体とても楽しい行為だ。

もちろん、実利的なメリットを追求するだけでなく、リターンを気にせず好きなことを勉強するというのもありだ。ここからは本筋と離れてしまうが、具体例を取り上げる。

筆者は最近、料理教室に申し込みをした。手前味噌でおこがましい限りだが、筆者は料理の腕にはかなりの自信がある。しかし、日常生活を送る上ではどうしても似たようなメニューになるし、味より健康を重視したものに偏りがちだ。だから技術を学びたいというより、無理にでもレパートリーを広げる環境に身を置きその過程を楽しもうという算段である。

おそらく作りより買った方が安いが、自分はパンやケーキを焼けるようになりたい。過程そのものが楽しいからだ。こういう勉強も存在する。

以上の3点である。いずれも仕事以外で満たすことはかなり難しいだろう。仕事の価値は綺麗事抜きでお金を稼ぐだけではないのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。