「子どもの日の社説」は子どもに読んでもらう工夫が必要

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旧態依然とした社説のスタイルを破ろう

私は「子どもの日」(5月5日)を取り上げる社説を書くのなら、子どもが読める工夫をして欲しいと願ってきました。やさしい文章で、子どもが音読できるように、ふり仮名もふってくれるといいと、思ってきました。

新聞の発行部数がどんどん減り、若い世代ほど新聞を読まなくなりました。新聞社は「民主主義を守る社会の公器」と自称しても、残念ながら1日当たりの購読時間は10-20分の読者が半分近いのです。「社会の公器」はデジタル化媒体に移りつつあります。

中高年が新聞の主な読者のようで、大学生を含め、若い読者はほどんど読みません。せめて「子どもの日」がテーマの日くらいは、漢字も減らし、身近なエピソードを交えて書いてみる工夫が必要です。

早速、今日の新聞をチェックしてみましたら、毎日新聞と産経新聞が合格点でした。学校の授業でも使えそうです。日経、読売は「こどもの日」をテーマにしていたのに、そうした工夫をしていません。朝日に至っては、見向きもしていません。

日経は大人が読む新聞ですから、まあいいでしょう。朝日新聞は「中国反スパイ法」、「首相の解散権」をテーマにしていました。お子さんがおられる記者も多いでしょうに、工夫をしてみる気になぜならなかったか。

毎日新聞の見出しは「こども基本法元年/小さな声に耳を傾けたい」で、「きょうは『子どもの日』です。すべての子どもが自分らしく、幸せになることを願う日です」と、明らかに子どもに語りかける書き出しです。

「この願いを実現するための『子ども基本法』が先月、施行(しこう)されました。こども本位の政策を作るよう定めています」と、難しい漢字にはふり仮名をふっています。家庭での虐待に触れた箇所でも(ぎゃくたい)とふっています。

産経新聞の見出しは「子どもの日/楽しい気持ちを大切に/相談する『勇気』を持とう」です。「国立成育研究センターが行った『コロナ禍における親子の生活と健康の実態調査』」を紹介した箇所では(こくりつ・せいいく・けんきゅう)とのふり仮名がついています。

「何か変だな、不安だなと感じたら、勇気を出して誰かに話をしてみましょう。きっと助けてくれる人がいます。それはあなた自身が大切な存在だからです。そのことだけはずっと、忘れないでほしいと思います」と、結んでいます。子ども向けにという記者の気持ちが伝わってきます。

読売新聞は「読売KoDoMo新聞」という小学生向けの新聞を発行しているのに、工夫が足りません。「こどもの日/スマホをしまって外に出よう」という見出しです。

「デジタル空間から離れ、実際に体を動かしたり、自然は文化に直接触れたりして、豊かな感性を育んでほしい」、「ネット利用をやめたくてもやめられないといった依存の疑いのある子どもが増えている」。こうした指摘をするのなら、子どもに呼びかけるような表現を考えてほしい。

読売新聞は、教科書のデジタル化批判、chatGPT批判、スマホ批判など、紙離れにつながりそうな技術革新にはいつも、度肝を抜くような大キャンペーンを張ります。「新しいルール作りが必要」といいつつ、そうした流れに対する反対、抵抗が本心でしょう。

紙中心からデジタル中心へという時代の流れは変えられません。若いうちから、どのように使いこなしていくかが必要だと思います。

日経は「子どもの声を聞ける社会に」のタイトルで、「こども家庭庁にとっても、子どもの意見を聞き政策に反映させることは大きな柱だ」と、主張しています。子ども向けではなく、政府に向けて言っている。

日経の場合は、それはいいにしても、「『こどもまんなか社会』の真価が問われている」とか「放課後の子どもの居場所づくりも急務だ」とか、いかにも昔ながらの社説の表現です。「真価が問われる」「急務だ」「試金石となる」など、旧態依然としたスタイルから抜けだしていません。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。