銀座の高級腕時計強盗事件で見えた「ロレックスの貨幣化」

犯行現場のようす NHKより

8日の夕方、銀座の高級腕時計ロレックスの専門店に強盗が入り、1億円相当の時計が盗まれる事件が発生しました。

SNS上には、犯行現場の周辺にいた人が撮影したと思われる携帯動画がアップされています。白い仮面をかぶった犯行グループがショーケースのガラスを割って時計を奪い、車で逃げていく様子は、まるで映画のワンシーンのような状況でした。

また、かなり乱暴に店内を荒らしているにも様子でしたが、通りを歩いている人たちが誰も騒ぎもしない。日本人の平和ボケの象徴のような風景でした。

治安が良いとされてきた日本でも今後このような事件が頻発することが予想されます。セキュリティー問題がよりクローズアップされるものと思われます。

以前はこの手の犯罪は現金強奪が当たり前だったのが、キャッシュレス社会になって、現金を狙った犯罪は難しくなりました。それに伴い、高級腕時計のようなモノが狙われます。

高級腕時計はコンパクトで高価格ですから持ち運びしやすい資産です。また、世界各地で資産価値が認められており、換金可能です(シリアル番号がありますから盗品の交換は簡単ではありませんが・・・)。また将来の価値が劣化しにくい点も評価されています。

今回の事件が示しているのは「ロレックスの貨幣化」ではないかと思います。ロレックスというブランドが、法定通貨と同様の色褪せない価値を持っていることが示されたのです。

私はアンティークロレックスを資産として集めていますが、トレーディングカードやアンティークコインなどの実物資産も、ロレックスと良く似ています。これらの資産も法定通貨に代替するポテンシャルを持っています。

インフレによってドル、ユーロ、円といった法定通貨の価値が低下すればするほど、これらの実物資産の価値が相対的に高く評価されることになります。

法定通貨よりも実物資産の方が資産としての信頼が高くなっていく。

今回の事件は単なる強盗事件というだけではなく、法定通貨の「終わりのはじまり」を暗示する出来事と捉えています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。