英国王の戴冠式については、これまでもアゴラにいろんな記事を書いているし、他の所でも書いている。最近公開されたものとしては、『英国王戴冠式と頭痛のタネ「ヘンリー・メーガン夫妻」』というのは、ヘンリー&メーガンの騒動の総括である。
このなかでは、ダイアナ、カミラ、キャサリン、メーガンといった女性たちについて論じているが、これについては、別に回を改めて論じたい。
もうひとつは、『日本の皇室と英国の王室、あえて優劣を論じると?…「世界2大君主」が称賛を集めている理由』である。その一部は『英国王室と日本人: 華麗なるロイヤルファミリーの物語』(小学館 八幡和郎・篠塚隆)に書いてあることだが、ここではそれを、さらに掘り下げている。
皇室のことをよそと優劣を論じたりすると、嫌がる人もいるが、よその王室と比べて良いところは伸ばし、良くないところは学んでこそ、向上していくわけであるし、それは、皇室の方で自覚して成長することもあろうが、国民から声が上がってこそ、良い方向に向かうのだと思うというのは、個人の成長の一般論と同じだ。
詳しくは、この元原稿を読んでもらいたいが、ここではそのハイライトと、反響を受けて私が追加的に言いたいことを書き加えたい。
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現在、世界には30人の君主がいるが、そのなかで英国と日本の王室・皇室は抜きんでて格が高いものとされている。
① チャールズ国王が英連邦諸国のうち、カナダやオーストラリア、ニュージーランド、ジャマイカなど15の国の元首を兼ねている。それに対して、日本の人口1億2600万人が英国の6700万人をしのぐ。相互訪問のときなどは、この人口や経済の規模で比較するべきだろうし、君主である15カ国の合計が1億5000万人であることも無視できない。
② 日本の天皇はエンペラーと呼称され、格上で儀礼上も上位に置かれるとかいう人がいるが、公式序列は即位の順だけによる。ただ、英国のビクトリア女王は、親戚であるロシアやドイツの皇帝の肩書をうらやましがり、ディズレーリ首相がインド帝国を創設して女王を皇帝とした。
③ 歴史の長さでは日本の皇室がずばぬけている。紀元前660年2月11日に奈良県橿原市で日本建国があったというのは、少し割り引く必要があるが、畿内発祥の王朝が四世紀に日本を統一して以来、万世一系で継続しているという大筋を否定すべき明白な理由はない。
しかも、男系男子継承という厳しい条件をクリアしている
イングランド王国は、829年にアングロサクソン七王国が統一されたのに始まり、1066年にフランスのノルマンディー公(ウィリアム1世)によって征服され、その子孫が現在の英王家だ。ただ、それ以前の王朝、とくにエドワード懺悔王のつながりも重視しているのは、日本の国譲り神話に似た発想だ。
④ 日本の皇室が尊敬されているのは、ストイックさだ。贅沢せず、勤勉で、平和を愛好し、文化や科学を重んじ、よい家庭人というイメージは、平成の両陛下において頂点に達したし、謙虚さもそれに加わった。
英王族は戦前の日本と同じように軍人として戦場に向かうし、女王だって軍服に身を固めて兵士たちを鼓舞した。また、エリザベス女王は、毅然と国家としての誇りを背負って格上であることを見せつけ、侮辱されたとみるや、しっかり報復する。
⑤ 英国王室は、世論の批判に試行錯誤を繰り返しながら対応して進化してきた。SNSを活用した情報発信でも先行している。エリザベス女王は、批判に直接は答えないことを方針とする一方、敏感かつ迅速に反応されたし、チャールズ国王も同様だ。
日本では、マスコミによる皇室批判はなおタブーであるが、突然爆発して「みんなで渡れば怖くない」状態になるし、皇室の対応もスマートさに欠ける。また、両陛下への批判はタブーに近いが、英国では女王・国王も厳しい世論の批判にさらされる。
この点は英国が正しいと思う。国のあり方、皇室のあり方において両陛下こそ国民の声を聞かれるべき立場におられるからだ。
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