第2の故郷を探し始めた中国人富裕層

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中共に愛想をつかした中国人富裕層

パンデミックでの中共による強制的なロックダウンを経験し、ある日突然、自由が取り上げられ一歩も外に出られなくなるということに危機感を覚えた中国人富裕層たちが、第2の故郷としてシンガポールやオーストラリア、そしてタイの不動産を買い始めたという。

また、財政難に陥っている中国政府が富裕層の資金を取り上げようとしているという危機感からも、海外の不動産に資産分散を図ろうとしているという。

パンデミック前の中国人バイヤー

さて、タイの不動産調査会社であるAREA(Agency for Real Estate Affairs)のレポートによれば、2022年に外国人が購入したバンコクのコンドミニアム総数の内、46%が中国人バイヤーによるものであり、数字の上ではナンバー1の位置を占めた。

しかし、ユニット単価を比べてみると、中国人以外の外国人が購入したコンドミニアムの平均価格が579万バーツ(2,300万円)であったのに対し、中国人のそれは374万バーツ(1,500万円)とかなり低い。

つまり、昨年までの中国人バイヤーの大半は30㎡前後の1ベッドルームを中心に、単なる投資目的でバンコクの不動産を買っていたといえるし、これは2016年から始まった中国人のバンコクの不動産投資ブーム以降続いていたトレンドでもある。

もっとも、2017年の頃に中国人投資家の間でバカ売れしていたラチャダーエリア(第2のチャイナタウンと呼ばれる)の300万バーツ(1,200万円)前後の狭い1ベッドルームは既に供給過剰であり、本当に儲かっている中国人投資家は実は少ないのではないかと筆者は思っているのだが…。

パンデミック後の中国人バイヤー

しかし、今年に入って潮の流れが変わってきた。先に書いたように、中国政府に嫌気がさした富裕層が、自由のある第2の故郷を求めてタイでの不動産購入を始めたのである。

その目的はリタイア後の第2の人生を過ごす、優秀なインターナショナルスクールでの子供の教育、または世界トップクラスの医療とそれぞれだが、共通しているのは、中国と違ってタイには自由な社会や生活があるということだ。

従って、タイの仲介業者によれば、今の中国人バイヤーの多くは200万元(4,000万円)以上の予算を持ち、投資のための狭小住宅ではなく自己居住するための優良物件を探しているという。

実際、バンコクにあるシンガポールのインターナショナルスクールでは、コロナ前には全体の6%だった中国人生徒の数が、今は13%へと倍増したそうだ。

タイの不動産は底値状態

不動産バブルの崩壊で価格が暴落し、大変なことになっているはずの中国だが、それでも中国人富裕層にとってバンコクの不動産には割安感があり、中国の大都市ではとても買えないような高級物件がバンコクでは買えるから魅力的だという。

確かに、今のバンコクの不動産市場はパンデミックで値下がりしやっと底を打ったところではあるが、まだまだ回復からはほど遠く、彼らにしてみれば底値買いという最高のタイミングにあるタイに人気が集まるのもわかる。

もっとも、人民元がタイバーツに対して弱くなっていないのに対し、残念ながら日本円は円安バーツ高でボロボロ状態ということもあり、バンコクの不動産がたとえ底値といえど、日本人投資家にとってはとても買える水準ではないのだが…。

海浜リゾートでも中国人バイヤーが

ちなみに、TAT(タイ政府観光局)の直近予想によれば、このまま中国人観光客が増えていけば10月には100万人/月に達するということで、もしそうなれば、いよいよパンデミック前のペースを超えてくることになる。

パタヤやプーケットといった世界的に有名なリゾート地でも中国人バイヤーが集まってきているが、さらにウクライナ戦争から逃げてきたロシア人バイヤーの需要も相まって、これらの海浜リゾートでは不動産市場が急回復している。

それに伴い、現地の業者にはパタヤのリゾート市場は2~3年後には価格も3割から4割上昇すると随分強気なことをいうところも出てきているが、第2の故郷を求める中国人でも特にリタイアリー層が買い始めているのだろうと思う。