AIを上手に使うコツは「質問力」にある

黒坂岳央です。

何かと世間を騒がせているChatGPTはじめとした生成系AI。自分は完全に仕事にどっぷり活用しており、もうAIなしの仕事には戻ることができない生活を送っている。その一方、使いこなせない人もいる。先日、親族に頼まれて使い方を教えたが「世間が騒ぐほど全然役に立たないと感じる。もう使わない」といったフィードバックを受けた。

ChatGPTを上手に使える人、使いこなせない人の差は「質問力」にあると思っている。まるで呪文のようなコマンド、プロンプトを極めている人と、愚問愚答になっている人とでは埋めることができない大きな結果の差となって現れる。

そもそも、ChatGPT(以下AI)抜きで考えても、高度に情報化された現代において「質問力」は問題解決能力、人間関係、ひいては人生そのものでも差をつけてしまうほど大きな要素である。

metamorworks/iStock

優秀なAIでも下手な質問には対応できない

愚問愚答、Garbage In, Garbage Outという言葉がある。どういう意味かというと「下手な質問や質の低いインプットをすれば、回答やアウトプットも質が低くなる」ということである。つまり、AIから出力される回答の質が低い、AIは役に立たないと感じる人が疑うべきはAIの才能ではなく、自分自身が出している問いの方である。どれだけ優秀なAIでも下手な質問に優れた回答を出すことはできないのだ。

これは人間相手への質問に対しても全く同じである。たとえば「英語を上達する方法を教えて」とか「人生を幸せに生きるには?」といった質問をもらっても、優れた回答を出すことは不可能に近い。せいぜい、「力のつく方法論で努力を長期的に積み重ねましょう」とか「感謝を忘れずにいきましょう」といった表面的であまり具体性のない回答しか出すことはできない。

これでは回答をもらった側も次に何をすればいいかアクションに困ってしまい、何の解決にもならない。目先の課題を解決するには、より具体的で何に困っているかを明確に言語化する力が求められる。

件の親族についていえば配偶者とミスコミュニケーションが頻発していることに悩んでいたらしく、「夫とのコミュニケーションのすれ違いはどうしたら解決する?」という趣旨の質問をしたところ、色々と一般論が返ってきたが、何も具体性がないと感じたようだ。

回答に具体性がないのは、質問が具体的でないからだ。この場合、質問するべきは具体的にどういったミスコミュニケーションが発生していて、自分はこういう想定をしていたが、実際にはその想定とどうズレていたか?ということまで書いて質問をすれば、より具体的なソリューションを得られたかもしれない。

つまり、ChatGPTを使って気に入らない回答が返ってきた場合は、自分自身の質問に問題があると認識して改善を測る絶好のフィードバックとして活用できるということでもある。自分自身はそうしている。何度か質問を変えてみたことで、最終的にしっかり求めていた回答が得られた経験が何度もあった。今ではAIへの質問のコツをかなり掴んだと思っている。そしてこれは人間関係におけるコミュニケーションアップにもつながる。

優秀な人は質問力が違う

正直その人の実力は質問を見ればたちどころに分かってしまうと思っている。これまで数多くの人とやり取りしてきて感じること、それは優秀な人は共通して質問力が高いのである。これはそのままAIへの質問力につながる。いくつか取り上げたい。

まず自分自身で問題を正確に認識できているということだ。本来は疑問や悩みは、自分自身が一番良くわかっているはずである。問題はそれを他人に伝える言語化力やコミュニケーション能力だ。優秀な人は具体的に自分がどういう課題を抱えていて、どう解決したいか?ということをわかりやすく質問できる。質問された側にもしっかり疑問が伝わるから回答もしやすく、相手の求める答えを出すことができる。結果、無事解決に結びつくということである。

そして自分なりの仮説を持っている。たとえば「とにかく何もわかりません!」と両手をあげられるより、「自分はこうなると思っていたのに、実際はこのような展開になりました。なぜかわからないので教えてください」と聞かれる方が明確で役に立つ答えを出しやすい。

「おそらくこの部分を思い違いをされているのですが、それについてはこの情報が役に立つと思います。そして問題はこれで解決します」といった具合に仮説の誤りを訂正してもらえる上、問題も解決できるので答えを受けた側も満足できるはずだ。

最後に質問者への配慮である。自分だけでなく、教える側の立場というのはなんとかして相手の悩みや問題を解決したいと必死に知恵を絞るものである。相手の悩みが解消されて喜ぶ姿をみれば誰だって嬉しいのが自然だ。できるだけ質問がわかりやすく伝わるように、と配慮が感じられる質問を受け取るとやっぱり聞かれた側も嬉しくなるし、その配慮がより具体的で問題解決につながる回答を作る上でのヒントになることも少なくない。

結果、質問者が配慮することで、一番得をするのは質問者なのである。これを理解しているので自分自身、誰かに質問をする時は必死に相手の立場で考え、できるだけ相手が回答しやすい配慮のある質問をするよう心がけている。

AIはすべてを解決するような雰囲気が漂うが、それはあくまで質問力が高い人に限った話なのである。どれだけ優秀な人間でもAIでも、エスパーではないので言語化できない質問に答えることは難しい。想像力を総動員して知恵を絞って回答する努力をしても、やはり必要な情報がなければストレートな回答は難しくなる。以上を踏まえて考えると、AIを使いこなすための最大のコツは「質問力」にあると思うのだ。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。