新NISAの対象投信を「2000本に絞り込む」センス

日本経済新聞が新しいNISAについて報道しています。2024年から既存制度よりも非課税枠が大きく、非課税期間を無期限にした新しいNISAが始まり、年間でつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の360万円が投資可能になります。累計で1800万円まで積み上げることが可能です(図表も同紙から)。

今回、投資信託協会が成長投資枠を対象とした約1000本の投信を発表しました。日本の公募投信は約6000本あると言われ、初心者が選びやすくするために「絞り込んだ」とのことです。

確かに値動きの大きくなる株価指数などに連動するレバレッジ型投信、毎月分配型投信、設定時に決められた期間が20年未満の投信などが対象から外されているようですが、信託報酬の高いアクティブファンドは大半が対象として残っています。

更に1000本を追加して、最終的には2000本程度になるそうですが、6000本を2000本に絞り込む意味はあるのでしょうか?

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2000本の中から自分でファンドを選べと言われても、初心者はどれを買ったらいいかは、分かりません。

結局、間違った投資信託を選択してしまう人や、「専門家」へのアドバイスで買ってはいけない投資信託に誘導されてしまう人が出てくることでしょう。

私は以前から申し上げているように、低コストのインデックスファンドを積み立てる。これが、多くの個人投資家にとってベストな方法だと思っています。投資初心者であれば、なおさらです。

特定の運用会社の投資信託だけを対象銘柄として指定するのが、各社の利害関係もあり、公正な競争と言う点からも難しいのはよくわかります。

しかし、その結果として本当に活用すべき投資信託だけではなく、不必要な「ノイズ」が入り込んでしまえば、混乱する人が増え、投資のハードルを上げてしまうだけです。

もし、2000本に絞り込むことで、投資信託の中から投資未経験者が正しいファンドを選べるようになると本気で考えているとしたら、そのセンスはかなりずれています。投資初心者のための絞り込みというのであれば、2000本ではなく思い切って20本くらいにして欲しいものです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。