今度はお涙ちょうだいのインボイス騒動

アゴラ編集部

今年10月から消費税のインボイス(適格請求書)制度が導入されます。これは既定方針だったのを延期して10月から段階的に実施し、経過措置が終わるのはなんと2029年ですが、税金をごまかしたい人々はそれもいやだそうです。

今は免税業者の声優がギャラに消費税を10%乗せて請求する益税が横行しています。それをインボイスで請求すると、消費税を税務署に払わないといけなくなるというのです。でも普通の事業者は、今でも消費税を払っています。

この声優がなぜ泣いているのかよくわからないが、インボイスを発行しないと適格事業者になれず、発注元が消費税を控除できないので、契約を切られる可能性があります。

これは声優や漫画家の問題ではなく、そのギャラをピンハネしている課税事業者の問題です。今は消費税を転嫁していない免税業者への支払いからも税額控除できるからです。

インボイスがないために税収が減っているのは間違いないのですが、その税収をフリーランスが全部ポケットに入れているわけではありません。消費税分の安値発注で下請けいじめをしているケースも多い。

税務署に払っていない消費税を請求するのはおかしいが、業者に払っていない消費税を控除するのもおかしい。インボイスがないため、丼勘定の帳簿式になり、多段階の付加価値税という消費税の透明性が失われているのです。

1989年にできた消費税は本来、インボイスで金の流れを正確に把握するためにできたもの。それが2029年まで40年も延期される背景には、こういう不透明な取引慣行から利益を得ている人がいるのです。