人はなぜ、お金を貯めたがるのか?

「人はなぜ、お金を貯めたがるのか?」。これ永遠のテーマだと思います。ほぼ全ての方はお金を貯めたいと思っているし、貯めるお金がないと嘆く方も「お金があれば自分も貯める」のが前提でしょう。

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私の叔母は長く独り身、子供なしで質素な生活でした。喫茶店でコーヒーを飲むのももったいないという人で何が人生の楽しみなのか、理解に苦しむこともありましたが、ある時、「私、もうすぐ金融資産が1億円になるの」と言われた時はおったまげました。結局、最後いくらだったのか知りませんが、相当の資産を残してお亡くなりになりました。

叔母とは血が多少、繋がっているからでしょうか?私も質素と言えば質素。他人にはばら撒いているのですが、自分にはしょぼいかもしれません。なぜ、お金を使わないのか考えたことがあるのですが、結論は物欲が低いこと、食事は外食しても日本のようにおいしいところは少ないのでビールとつまみを楽しむぐらい。旅行には行きたいのですが、時間の制約があまりにも厳しいです。生活と趣味に必要なものは全部持っています。

飛行機でビジネスクラスに乗りたいか、といえば即座に「興味なし」と答えます。理由は8-9時間のフライトの間、食事の時以外、書籍から目が離れることがなく、目の前のモニターも音楽にも触ることはないのです。酒は血圧が低いので機内では飲めないし、フライトのミールは飛行機のケータリングビジネスを昔やっていたので実情を知っているので遠慮させて頂きます。私的意見では、ビジネスクラスのミールならランチタイムに2000円払って食べる定食の方がうまいと思います。

先日、部材を集めて組み上げたモーター付きのゴムボートをゲットしました。自社のマリーナに浮かべてあるのですが、一度も乗っていません。そもそも忙しくて歩いて3分のマリーナに既に10日も行っていません。このゴムボート、いつ乗るのかな、と考えればお金を使ってもこんな具合だということです。

多くの方がお金を貯める理由は老後のため、と思います。長生きを期待しつつも何年生きるかわからないという経済的不安、病気のこと、冠婚葬祭を考えれば「貯金はいくらあっても邪魔じゃない」という発想になるのでしょう。一方で、歳を取れば食べる量も飲む量も減ります。洋服やアクセサリーをバンバン購入することもないでしょう。大体、出歩くことが億劫になります。つまり、必然的に金はかからないようになるのですが、貯めたいという意欲は反比例するように増えるのです。

そこで私は壮大なる実験を何年もしています。それは自分に必要な最低限の給与だけでどこまで生活可能か、です。逆に言えばいくらあれば生活できるのか、です。阿呆な実験なのですが、家計簿をつけて入りと出を管理し続けています。結論的に言えば私はひと月30万円あれば相当余裕がある、です。この30万円には集合住宅の管理費の月10万円や固定資産税、各種保険、自動車の維持管理費、光熱費、ネット接続費から食費などぜーんぶ入れて、です。逆算すると食費と娯楽、服飾費の出費は月10万円で有り余るのです。医療費は無料だし、普段は車に乗らず、バスと電車かなるべく健康のために徒歩です。確かに外食はしますが、多くは会社関係ですから自分の身銭ではありません。ちなみに昼は株式市場が動いているので外食しませんし、誘いも受けません。

この実験を通じて一つの達観をしました。自分にいくら資産があっても叔母のようになるだけだ、と。なので貯金もないけれどその必要もないと悟ったのです。だから何年たっても同じ報酬額が続きます。必要になれば会社からボーナスをもらいます。笑 ちなみに私の日本法人からは設立以来十数年、報酬は1円すらもらったことはありません。必要ないからです。確かに会社の株式は私が持っているけれど株式は私が死んでも誰かが持ち続けることになるので会社の価値を極大化する路線をもちろん追求します。しかし、税金を考えて自分の資産額を現時点の価値で税務上確定させる特殊な税務対策を行う予定です。引き続き、会社の代表ですが、今後増える会社の価値は私の指定する方々が享受する、ということです。

お金は見栄で使うことも多いでしょう。日本に行くと皆さん、着ている服が素敵だと思います。西海岸はTシャツにジーンズの文化ですからスーツ着ている人はむしろ異様な感じがすらしますが、お気楽すぎでしょうね。一方、昨日、顧客になった方は豪華なプレジャーボートにご夫婦の車がリビアンとマスタングEモデル。ほう、と思います。正直マスタングEモデルは乗ってみたいです。でもGTR、かわいいんですよねぇ、と言っているうちに結局買わなくなるのです。

お金は使うためだけ稼ぐのか、余生の保険を買っているのか、見栄を貫くためなのか、はたまた子供や孫に相続して餅まきをしたいのか、せいぜいこの程度の選択肢です。ならば、必要以上の保険はいらないし、見栄もいらない、子供に金は配らないと決めてしまえば肩の荷が下りるんじゃないでしょうか。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年7月16日の記事より転載させていただきました。