「衰退論」にハマる人たち

黒坂岳央です。

世の中には様々な衰退論がある。中国や韓国経済の衰退論、最近ではドル衰退論も活況である。そして何より我が国、日本の衰退論で盛り上がる人達が一部に存在する。

そしてそのような衰退論は、複数の専門家によって何十年も前から言われ続けているにも関わらず予測を外し続けているものもある。全部を1つずつ検証することはできないが、明確に外しているものがあるのは事実だ。つまりこのことから「100%の精度で先のことは誰にも当てることはできない」ということだけは確実だとわかる。

衰退の予兆が経済データで示されれば、誰しもが不安を覚えるのは共通するも、この一派の特徴はなぜか衰退を自分の人生の成功のように喜んでいるように見える。これはどういう心理状態なのだろうか?

先日、個人ブログでこの現象を「衰退ポルノ」として取り上げ、端的にその心理を箇条書きにした記事が話題を読んだ。

「衰退ポルノ」って言葉発明した人、天才すぎだろ
飲み会やイベントなどに参加すると、10~20%くらいの確率で40代~60代のはげたおっさんや厚化粧の鬼ババみたいな人が熱く政治を語り出すことがあ…

記事を読んでみたが正直よく理解できる。今回はこの記事の分析も借りつつ、独断と偏見だけで持論を展開したい。

yamasan/iStock

自分の敗因を国や社会に押し付けたい?

衰退論をなぜか喜ぶ人たちは日本に限ったものではない。SNSを見ればドル離れについて「我々の覇権時代は終わったのだ」と熱心に議論をするアメリカ人もいるし、サムスン電子の業績不振に韓国人も自国の終焉を声高に叫ぶ投稿が見られる。どこの国でも衰退論は一つの人気ジャンルの様相を呈しているように感じられる。

紹介したブログによると、衰退論が支持を得る理由の一つに「自分が終わってるのは国が終わっているせいと責任を押し付けられるから」とある。なるほど、たしかにそう感じる節は確かにある。

エコノミストやYouTuberなど発信ビジネスを除く衰退論者の主張には大抵の場合、「自分たち国民をないがしろにしてきたツケを払っているのだ」といった怨嗟の声が添えられているからだ。

日本の衰退論についていえば、「氷河期世代を切り捨てたから」とか「国や企業は潤沢に持っている資産を国民や従業員に還元しないからこうなった」といった恨み節が聞こえてくる。仮に衰退論に対してフラットな目線で分析するなら、「さて、この先の未来はどうすればいい?」といった冷静かつ前向きな建設的改善案を議論する方がより生産的な気がするがどうだろうか。

批判すること自体が趣味になっている

これは筆者の持論だが、衰退論を嬉々として語りたがる人たちの一部(全員ではない)の過激派の中にはもう趣味の域に入っている人もいると思う。

世の中には批判することに夢中になる属性が存在する。彼らは常にダメ出しをする。「あの映画はダメだ。監督は年を取って感性が落ちた」とか「うちの会社は経営者のこういう保守的な決断が良くない」とか「あの選手は私生活の乱れが、試合の不調に出ている」みたいに、悪い点を見つけ出すことについては常人離れした才能を見せる。

イジワル姑が嫁に窓のサッシのホコリを見つけ出すイメージで、批判が趣味な者同士なら酒の席で盛り上がるかもしれないが、翌朝起きて冷静になればどれだけ批判に時間とエネルギーをかけても自分たちの置かれた状況は1ミリも変化していないことに気づくだろう。それを紛らわせるため、また批判をすることで溜飲を下げ現実を忘れるのだ。

「お前も衰退論者を批判しているではないか」という反論は当然に想定されるが、自分の場合は本稿に限らず持論の主張が仕事なのでゴシップとして消費する目的を持たない点で属性が異なると考える。

衰退論に振り回されてはいけない

国の衰退論についていえば、仮に現在のデータがそうであっても未来がどうなるかは本当に誰にもわからない。事実、あらゆる衰退論が外れているが、年月が経過すると人々がそんな予想があったことを忘れてしまう。

だからどこの誰かもわからない人の予想を真に受け、右往左往することは人生戦略上、余計なリスクを高めるだけでしかないと思っている。

筆者の知っている人の中には、円安が始まったタイミングで一斉に流れた「日本衰退で賃金は安い。海外は高い」というメディアの報道や、SNS投稿を信じて海外でアルバイトを始めるも、現地の生活費負けする上、高給職につけず大きく損を出してしまった。表面化されていないだけでこういう話は探せば出てくる。

アメリカでも全員がインフレ負けしないだけの高給職についているわけではないし、日本でも市場平均を大きく上回る高給職についている人も。結局、どこへいっても重要なのは「自分の力」だと思うのだ。

無責任で信用におけない衰退論に大事な人生の意思決定を預けてしまうのではなく、社会が今より発展しようが衰退しようが、どっちにどう転んでも自分の人生と自分の大事な人を守るだけの力を付けることが最重要ではないだろうか。

 

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