仕事の悩み1位の「給与が低い」を解決する方法

黒坂岳央です。

株式会社ネクストレベル運営の「ミライのお仕事」にて、2023年8月に実施した調査がSNSで大きな反響を呼んでいる。「仕事の悩みランキング」において、すべての世代で1位になったものが「給与が低い」なのだ。

これに対し、Xでは経営者やフリーランスが「起業なり転職すればいいだけだ」という反応が寄せられ、それに対して「会社員は簡単に転職ができない」との反論が見られた。

このランキングを見て感じたことを取り上げたい。

miya227/iStock

会社員が抱える「仕事の悩み」

同調査によると、4位・やる気がでない、3位・会社の将来性や安定性、2位・職場の人間関係とあり、大差を付けて1位が給与が低いというものだった。

20代から50代まで、悩みのランキングは違う。たとえば20代、40代の2位が人間関係を上げているのに対し、30代では人間関係より会社の将来性に悩んでいる。家庭をもったり中堅社員として活躍する上で見えてきた問題点だろう。

また、50代では2位がやる気がでないことに悩む人が多い。これは会社由来というより感情や意欲を司る前頭葉の萎縮による、生理学的理由に基づく可能性は否定できない。また、シンプルに年数を重ねた飽きもあるだろう。

給与が低いという悩みについて、「上司は10年給与が変わらなかった」「勤続20年で昇給がない」「安月給で旅行にもいけない」といった声が見られた。

安月給になる理由

この調査内容やSNSでの反応を見て感じることがある。それは給与が低い原因を正しく理解することの重要性である。

「経営者がケチで利益を社員に還元しない」という声がとても多いのだが、これは本当だろうか?

日本の雇用は正社員を強固に守る法体系になっており、会社は利益を上げない社員でも簡単には解雇ができない。さらに月給は極めて硬直性が強く、上げた給与を業績不振であっさり下げるなら、社員の士気が下がることになる。不景気で社員のやる気が低く、解雇もできなければ企業は生き残れない。

そのため、よほど付加価値が高く恒久的に利益を出してくれる見込みのある成果に対してでなければ、給与を上げることは難しいのだ。解雇するハードルがあまりに高すぎることで、昇給のハードルも上がり、結果として能力に対して正当な評価を出しにくくなってしまう構造があるのではないだろうか。

尚、米国ITテックにおいては、好調な時は高収入、高待遇を出すが、不調時は不採算の部署丸ごと切り落とされることもある。実際に2023年ではメガテックを中心に解雇があった。だが、元々労働市場の流動性が高く、スキルや経験があれば、次の職探しは流動性が低い日本ほど困ることはない。

このように労働市場の流動性の低さが、日本における昇給を難しくしている原因があるだろう。そして給与が低く留まっている代わりに、安定的な雇用が保証されているメリットは間違いなくある。あらゆる物事は常にトレードオフなのだ。

安月給の解決方法

ここまでの背景を理解すると、取るべき選択肢がいくつか見えてくる。まず現状の勤務先からの大きな昇給を期待することは諦めた方が良いということだ。全社員の給与が安い傾向にあるなら、その企業の収益力が低いことが原因である可能性が高い。無い袖は振れない、期待して我慢するだけ時間のムダである。

「頑張る、努力する」という行動が実を結ぶのは、その頑張りが粗利を生み出すビジネス構造になっている場合に限る話だ。特に労働集約型産業では、努力してもなかなか昇給の実を結びにくい。これは誰かを責めて解決する問題ではなく、仕組み上の問題だ。

安月給なら起業や副業をすればいい、という声がある。だが起業は稼げるまでに時間がかかるのが普通だ。挑戦している間も家賃や食費で生活がある。「安月給だから起業して稼ぐ」と飛び出しても、安月給はゼロになっては元も子もない。副業も自分で事業をして稼げるには時間がかかり、稼げても休日にコンビニバイトをした方がマシなことも多い。

自分自身、会社員をしながら2年くらい週末起業でビジネスを育てるのに時間がかかっている。これは単に自分が不器用だったという理由もあるが、普通の人は収入がゼロの状態が続けばとても精神的に耐えられなくなるので「起業すればすぐに月収100万円!」みたいな夢ではなく現実的に考えて時間をかけて挑戦をするべきだろう。

だが多くの場合、この時間をかけた挑戦に耐えられる人は多くない。「稼げないなら起業や副業すれば?」は正論ではあるが、多くの人にとってはあまり現実的な提案とは言えないと感じる。

現実的には転職がいい

総合的に考えると、やはり高値がつく技術経験を磨いて転職するのが一番現実的なプランといえる。年収200万円台の会社でどれだけ頑張って役職がついても、600万、800万と稼ぐのは難しい。だが、新卒から500万円、600万円もらえる会社は探せばあるし、そこでリーダー、マネージャー、スペシャリストを目指せば1000万円以上も視野に入ってくる。

実際、筆者自身も転職時に200万円年収アップの経験がある。妻の弟はITエンジニア職で20代で1000万円を超えた。安月給の課題は、高い給与を払える会社への転職が一番早い。シンプルに高給を払っても耐えられるだけの粗利を稼いでいるからだ。労働市場をリサーチし、どの技術や仕事内容に対してどのくらいの値がつくか?を理解して行動するのみである。

自分自身が昔、派遣社員の単純労働をしていた時期があったが、努力しても時給が10円とか20円くらいしか変わらなかった経験がある。「これはハイスキルがなければ、頑張っても高給は望めない」と体感して、英語力や米国会計スキルを身に着ける努力をした。勤務先に期待するのではなく、期待値の高いスキルや経験を理解し、それを身につけることに努力をするべきだろう。

安月給問題は会社や経営者の怠慢とか、上司の人事力がどうとかではなく、シンプルに企業の稼ぐ力の話になってしまうことがほとんどだ。高給を払える収益力のある会社にいくのが一番現実的だろう。そのためにやることは高値がつく技術、経験を身につけることだ。つまり、自己研鑽とマーケット感覚を身につけることである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。