ジャニーズ・タレントのテレビ出演が減少中です

ジャニーズ事務所の会見 NHKより

2023年9月7日のジャニーズ事務所の会見以来、大手企業が広告の契約打ち切りを次々と表明する中、ジャニーズ・タレントの活動状況はどうなっているでしょうか。

このエントリーでは、ジャニーズ・タレントの主たる活躍の場であるテレビ番組の出演回数の時系列変化を分析してみたいと思います。

まず、次の図は、ジャニーズ公式web の[Johnny’s net]の過去ログから所属タレントの1日当たりのテレビ番組出演回数(週平均)の推移を調べてプロットしたものです。

図を見ればわかるように、事務所が会見するまで、ジャニーズ事務所のテレビ事業は順風満帆、不祥事などどこ吹く風で、日平均20~25番組に所属タレントが出演していました。たとえ、過去の所属タレントが性加害を告発しようが、BBCが告発番組を制作しようが、ジャニーズ事務所社長が謝罪動画を発表しようが、国連人権委員会WGが問題を指摘しようが、第三者委員会が性加害を認定しようが、まったく変化はありませんでした。

ところが、2023年9月7日の会見で、ジャニーズ事務所が性加害の存在を認めると、事態は大きく変化します。ジャニーズ事務所と広告契約を結んでいた広告主の大企業が次々と契約解除を発表したのです。この経済界の動きは、ジャニーズ・タレントのテレビ出演に少なからず影響を与えたようです。

次の図は、事務所の会見の翌日からのジャニーズ・タレントのテレビ出演番組数を示したものです。出演番組は1週間先まで発表されるので、その分だけ先行して傾向を知ることができます。また、出演番組数は曜日に依存する傾向があるので、前方7日間移動平均(その日を含めた将来7日間の平均)も同時に赤のラインで示しています。

図を見ると、ジャニーズ・タレントの出演番組は週末に多く、驚くことに9月9日土曜日にはなんと37番組にのぼります。しかし、この数もこの2週間で陰りが見えてきました。平日の出演番組数はそれほど変化がないものの、週末の出演番組数が目で見てもわかるように大きく減少しています。金土日の出演番組数は2週間で合計21番組(1日平均で7番組)も減少しました。

もう少しわかりやすい図で見てみましょう。次の図は縦軸のスケールを変えて、同じように前方7日間移動平均の推移を示したものです。

9月7日のジャニーズ事務所の会見の直後、広告主の数社がジャニーズ事務所との広告契約の打ち切りを発表しました。東山新社長の番組降板などもあり、会見直後にジャニーズ・タレントの出演番組数は少しだけ減少しました。しかしながら、モスバーガーが広告継続を宣言すると再び、出演番組数は元のレベルに一旦戻りました。経済同友会の新浪剛史代表幹事の[会見]はそんな中で行われたのです。

新浪氏は「ジャニーズ事務所のタレントを起用することは、【child abuse児童虐待】を企業が認めることであり、国際的には非常に非難のもとになる。日本企業は断固として(ジャニーズ事務所に対し、児童虐待を許さないという)毅然たる態度を示さなければならない」と主張しました。この発言後、ジャニーズ・タレントの出演番組数は減少傾向をたどり、週平均で20番組/日を下回っています。

先述したように、たとえ国連人権委員会WGがジャニーズ事務所の人権蹂躙を指摘してもTBSテレビ、フジテレビ、日本テレビ、テレビ朝日は「ジャニーズ・タレントに罪はない」「ジャニーズ・タレントの起用に変化はない」という宣言によって、ジャニーズ・タレントの出演番組数には変化が生じませんでした。しかしながら、テレビ局の収入源である広告主の企業が次々と広告契約を解除すると、ジャニーズ・タレントの出演番組数は明確な減少傾向に転じたのです。

このことが何を意味しているかと言えば、テレビ局は、テレビで情報操作すれば「何もなかった」ことにできる国連人権委員会WGの指摘とは違って、情報操作が通用しない広告主の企業の意向に対しては、テレビ局はすぐに忖度し、ジャニーズ・タレントを排除し始めたということです。ジャニーズ・タレントの出演番組数を変えることは、番組の編成権・制作権・編集権を持つ唯一の存在であるテレビ局にしかできません。

もう少し丁寧に説明すれば、日本国民は、日本のテレビ局の「放送の自由」を保障するため、テレビ局に対して、番組の編成権・制作権・編集権を与えています。このため、たとえどんなに権力を持った政治家であっても、どんなに金を持った広告主であっても、どんなに大きな声をもった小西議員であっても(笑)、「放送番組の改変」はできないのです。各テレビ局は「ジャニーズ・タレントの起用に変化はない」と宣言しているわけなので、本来各テレビ局は万難を排してその宣言を履行して「放送の自由」を守る義務があります。

ところが、今回、テレビ局は、国民から保障された「放送の自由」をかなぐり捨てて、広告主の企業の意向に忖度した制作権を発動し、週末の番組からジャニーズ・タレントを排除した可能性があります。というより、その可能性を排除すれば、合理的な解は見つかりません。何しろ、ここまで何があっても全く不変だったジャニーズ・タレントの出演番組数が、経済同友会の会見を境に減少に転じたのです。これは、テレビ局の忖度による「放送の自由」の危機であるといえます。

例えば、TBSテレビは、ジャニーズ事務所の広告主の花王がCMを速やかに中止[TBS報道]すると、ジャニーズのタレントである中島健人さんの番組収録を延期[産経新聞記事]しました。花王は圧力を否定しているので、TBSテレビが忖度したことになります。

もちろん、経済同友会の「ジャニーズ事務所との新たな契約を結ばない」という児童への性加害を許さない毅然とした宣言は至極倫理的であり、テレビ局の「ジャニーズ・タレントに罪はない」ので「ジャニーズ事務所のタレントの起用に変化はない」とする宣言は児童への性加害を許容する倫理にもとるものです。数百人の少年に対する性加害なのでこの事案は軽視されていますが、もし数百人の少女に性加害を与えていたとしたら即刻事務所は営業できなくなるはずです。

私自身も、経済同友会のスタンスを強く支持し、テレビ局のスタンスを強く不支持します。しかしながら、テレビは「起用に変化はない」を宣言した以上、宣言を履行しないと、国民から与えられた「放送の自由」を踏みにじる行為となるのです。

ちなみに、テレビ局は、ジャニーズ事務所と契約を解除する広告主の企業に対する批判をテレビ放送で展開しています。TBSテレビ『サンデーモーニング』は、広告契約を打ち切る広告主の企業に対して「見て見ぬフリをした」「皆で叩く」「一斉に雪崩を打つ」などと非難を浴びせました。テレビ・タレントのGACKT氏も広告主の企業に対して「手のひら返し」「不気味」「タレントに罪はない」などとして悪魔化しました。

ただ、考えて見ましょう。そもそも外部の存在であってジャニーズ事務所の内部事情を知りえない広告主の企業は、性加害に対してはジャニーズ・タレント以上に罪がありません。広告主の企業は、性加害の隠蔽を行ったジャニーズ事務所とテレビ局に不本意にも広告料を支払い、なおかつ企業イメージを傷つけられた完全なる被害者です。その被害者が、広告契約を打ち切ることで、さらにテレビのコメンテーターやテレビのタレントから、ジャニーズ・タレントを虐める極悪人に認定されているのです。まさに地獄です。

ジャニーズ事務所とテレビ局への広告料が加算された商品を消費している日本国民も他人事ではありません。TBSテレビ『サンデーモーニング』は、世界から後れと取った「人権後進国」である日本国民の人権意識の低さがジャニー喜多川氏の性加害の背景にあると日本国民を断罪しています。まさに地獄です。

このような日本のテレビ局に対して、日本国民ができることは、テレビを観ないことです。「報道の自由」を自ら捨てて、国民を長期間にわたって騙しただけでなく、さらに隠蔽の罪を国民に着せるような組織に協力するのはもうやめましょう。[テレビ視聴率低下の加速]の実態を見れば、この組織が滅びるのも時間の問題です。