「週刊アサヒ芸能」(9月21日号)に、作家の百田尚樹氏らが立ち上げた「日本保守党」に関する記事(「百田尚樹新党」誕生「安倍を継承」の衝撃舞台裏)が掲載されていた。その中に、政治アナリスト・伊藤惇夫氏の新党に関する次のようなコメントが載っている。
いわゆる保守政党を作りたいのでしょう。印税で儲けて、お金はあるでしょうから。ただ位置付けとしては、例えば参政党のような最近流行りのミニ政党の1つにしかならない。一部の著名人やネトウヨには人気があるんでしょうが、ただネトウヨは選挙に行かないので、おのずと限界はある。合流候補ですか? 現職ではまず出てこない。確かに次の選挙では比例名簿から外される可能性がある杉田氏などは合流の可能性はあるが、それでも1~2人がせいぜいでしょう。
筆者は、この伊藤氏の主張に違和感を持った。1つは「ネトウヨは選挙に行かない」という部分である。ちなみに、「ネトウヨ」とは「ネット右翼」(ネット上で右翼的な言動を展開する人々)の略称だ。つまり、伊藤氏は、ネット右翼は選挙に行かないと規定しているのだが、これは、果たして、本当であろうか。
2014年の東京都知事選挙に、第29代航空幕僚長を務めた田母神俊雄氏が立候補した(リベラル派から見れば、田母神氏の支持者は「ネトウヨ」であろう)。
この時の選挙で、田母神氏は落選したのだが、約61万票もの票を集めている(16人中4位の得票数)。もちろん、この61万の人々が全て「ネトウヨ」などという積もりは毛頭ないが、田母神氏の政策等に心を寄せていた人であることは確かであろう(田母神氏が61万票もの支持を集めたことが、当時、ネット右翼の伸長として話題になっていた)。
そうしたことを踏まえると「ネット右翼は選挙に行かない」との論評は、余りにも断定的そして一面的なものではなかろうか。
伊藤氏の「いわゆる保守政党を作りたいのでしょう。(筆者註=百田氏は)印税で儲けて、お金はあるでしょうから」とのコメントにも筆者は違和感を持った。
百田氏は、今年67歳。あと3年で70歳である。同氏のYouTubeを拝見しても、老後は悠々自適にと考えておられたことが分かる。しかし、そういった時に、日本の未来を憂えて、私財も投げうつ覚悟で、新党を創設されたのである。これは、誰でもができることではあるまい。「印税で儲けて」とか「お金があるから」という伊藤氏の言葉は、百田氏の「大志」を矮小化させるものであろう。