改革の無い日本の政治

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政治家の不甲斐なさ

岸田首相が第2次改造内閣を誕生させた。日本政府の頻繁に代わる閣僚。それでは国を良くするための政治は出来ないと筆者は思うのであるが、どうであろう。だから尚更官僚主導の政治になってしまうのである。そして派閥で割り振りされた大半の大臣は官僚からの教えを仰ぐことになる。大臣が官僚を動かさねばならないのに、日本は大臣が閣僚に動かされているという事態になっている。

多くの優秀な閣僚を批判するのではない。政治家がその役目を果たしていないということなのである。一般に官僚は前例を踏襲して仕事をこなす傾向があり、前例のない新しいことに取り組むことが苦手であるから改革は進まない。

本来あるべき政治は、政治家が官僚をリードして時代の変化に即した新しい改革に取り組んで行かねばならないはず。ところが、日本の政治家の出来が余りにも悪く官僚依存症であるから堂々巡りを繰り返しているだけである。

(参照:100年後の未来、どう予測?100年前の人たちが想像した「今の日本の社会」とは

日本を離れて50年後の変貌

筆者が日本を離れてスペインでの生活も50年近くになるが、筆者が日本を離れた頃は日本にはまだ活気があった。ところが、バブル崩壊以後の日本は少しづつ衰退の方向に向かっている印象を受ける。商用で頻繁に帰国していた頃、バブル景気で潤っていた時の夜の繁華街でタクシーを拾うのは容易ではなかった。ところが、バブル崩壊以後の日本は衰退の一途だけを辿っているという印象を受ける。

日本は30年以上次のような現象が続いている。GDPに伸びがない。平均賃金が上昇しいない。インフレでもないデフレでもないディスインフレーションの状態が長く続いて物価の上昇率が低い。

アベノミクスでの金融緩和での成果はGDPで平均して実質0.9%しかない。にも拘らず、今も金融緩和を継続している。その影響を受けて円安が続き、その恩恵を受けているのは輸出業者だけ。この円安の継続で実質的には1ドルが200円程度になっている。その一方で税金は上がり、輸入品は円安の影響で値上がりしているから賃金上昇の無い国民にとって生活がますます苦しくなっている。それに対して何も対策をしない政治家。

その一方で、この30年の低迷期に17人の首相が入れ替わっている。それでは国の成長の為に一環した政策を実行して行くことは不可能である。しかも、その大半は自民党の政権である。

日本の国民はおとなし過ぎる

筆者がいつも理解に苦しむのはこのように国民が苦しい生活を余儀なくさせられているのに国民から国の政権を揺るがすほどの抗議運動が起きないという不思議さである。他の国であれば自民党が野党に下って政権交代があって当然である。

例えば、5年続いた安倍政権での成長率が実質0.9%しかなかったのに、彼に代わる政権が野党から誕生しないという不思議である。そして金融緩和が功を奏していないと分かっていてもそれを今も継続している愚鈍さ。

金融緩和で低金利はもう景気の回復には有効ではない。なぜなら先行き不安な未来であるだけに低金利であっても企業は敢えて投資はせず現状維持を守ろうとする。低金利は景気を刺激することに貢献しなくなっているのである。

国民も先行き不安であるからできるだけ貯金しようと心がけて無駄づかいをしようとしない。それに味方するかのように、日本はインフレが低い国だから物価の上昇も他国と比較して低い。しかも企業間では出来るけ安くて良いものを市場に提供しようという姿勢が今も継続しているから企業は利益率を下げても安価に提供しようとする。そのしわ寄せがまた社員の昇給を妨げる要因にもなっている。日本人はますます貧困になっているのである。

日本の行く先はアジアの孤島

現状の日本をこの先も継続させれば、日本はアジアで未来の無い孤島になってしまうのは必至である。筆者が改革の必要性を強調するのは、今の子供たちが大人になった時に現状のまま改革の無い日本であれば非常に悲惨な生活を余儀なくさせられるからである。しかも、そのような悲惨な社会にしてしまうのは彼らの責任ではなく、今の大人たちの責任である。特に、政治家の責任である。その責任を今の子供たちが将来背負うことになるのは是非とも避けねばならない。

今の政治家からは将来の為に国を良くしようという意欲も情熱も感じられない。また無能である。現在の社会システムの中で動かされているだけである。特権階級に甘んじている彼らの方から自らの政治生命を賭けてそれを変えようとはしない。一人の議員を維持するのに国民は1億円相当を負担しているというのを国民は知っているのであろうか。

そのようなことを考慮すると、新しい政党の誕生が絶対に必要である。財政緊縮、精神と教育改革、デジタル化の早急なる推進、独自の外交、諜報機関の創設、貧困への取り組み、IT産業を推進すべく頭脳集団の外国からの積極的な受け入れ、移民対策、衆議院と参議院の定員削減、社会保障制度の改正などなど。早急に取り組み改革して行かねばならない課題は山積みしている。

先ずはその新しい政党に過半数の議席を獲得させ、必要な改革を断行して行く。そうすることによって、初めて国民は日本の未来に期待が持てるようになるのである。時は待ってはくれない。今も日本の衰退は毎日発生しているのである。自民党は既に消滅した恐竜でしかない。今の野党は政権を取れるような体制になっていない。