日中の「処理水対立」に関する朝日記事に賛同する

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23日付け朝日デジタルに「日中、勝者なき「外交戦」 処理水対立の先に、日本に求められること」という北京駐在斎藤徳彦記者のコラムが載っている。

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この問題について僕が感じていることを二つ挙げると、

1.中国の強い反発には「官製」成分以上に「草の根」成分が多く含まれている印象がある。

事態を科学的に理解しているエリート層の間でも、予定していた訪日を取りやめる動きがかなりある。「こんなムードの中で日本に行けば、感情的になっている周囲や世間から後ろ指を指される」のを嫌がってのことだ。電凸動画だって、世間が無関心ならPVは稼げない。お上が煽ったから世論に火が点いたのか、世論のガス圧の高まりを見てお上が迎合しているのかは、鶏と卵みたいな話で、どちらとも確言できない気がする。

2.もう一つは、問題解決のために欠けているのは、双方のトップリーダーのコミットメントとリーダーシップだということだ。

この問題をめぐり、日本の外交側は「中国が科学的な対話に応じようとしない」と批判してきた。中国側にも言い分がある。「韓国のように、福島で日本の案内通りに視察をして終わり、というわけにはいかない。『科学的』を簡単に使いすぎていないか」(中国外交筋)

対話にせよ現地視察にせよ、中国で担当するのは原子力安全を司る役所であり役人だろうが、彼らは原子力安全の常識と反発する国民感情の板挟みになることが避けられない。「なんでこんな損な役回りをしないといけない訳?まっぴらごめんだわ」ってなもんだ。

嫌がる彼らを舞台にあげるには、トップの「行け」「やれ」の指示が必要だ。習近平にそう指示させるには、中国の面子が立つように相応のお膳立てをする必要がある。対話にせよ視察にせよ、「既にIAEAベースの場が用意してある」では済まない。

「中国にそこまでしてやる必要はない」という意見もあるだろうが、外交的観点だけでなく、ただでさえ不振の続く漁業者が困っている問題を解決するために汗をかくことも政治の役割だ。この記者も同じ考えではないか。


編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2023年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。